大人になっても「毒親」との関に悩む子ども

血のつながった親子であっても、うまくいくとは限りません。
以前、『毒になる親 一生苦しむ子供』という書籍がヒットし、近年は「毒親」という言葉の認知度が高まっています。毒親とは、簡単に言うと、子どもを自分の都合で支配し、自分のいいように扱って悪影響を与える親を指します。
そのような親であっても、子どもは親の愛情を自然に求めるため、簡単に離れられません。葛藤に苦しみ、生涯にわたって苦しむケースも珍しくありません。

私は、仕事やそれ以外で、親からの愛情不足を原因に苦しむ人にたくさん会ってきました。共通しているのは、親との関係性が薄くなる社会人になっても、少しのきっかけで過去の記憶がフラッシュバックし、心にダメージを受けていることでした。

親子関係の悩みは他人にはなかなか相談できないものです。
家庭環境は人それぞれで、どちらがよいと比較するものでもありません。
日本では家庭の事情は外に出すべきではない、という考え方が強いように感じています。
公認心理士や臨床心理士に相談することで心理的負担を軽減できる可能性はありますが、病院を受診することと同様に、心理相談が一般的に普及しているとは言えません。

私の経験則ではありますが、親子関係に悩む人は、誰にも言えずに1人で苦しんでいるケースが多いのではないでしょうか。私はそのような人を救う手助けをしたいと考えて、大学に入り直し、心理学を勉強しています。
法律やお金に関する問題解決だけでなく、悩む人の心を支えられる存在になりたいです。

20年ぶりに父からの連絡に「一切の関わりを拒否します」

以前、自分を「毒親」だと自覚する人からの相談がありました。
守秘義務に反しないよう、実際の事例を大幅に改変し、脚色しています。

男性は60代後半。建築関係の職人として働いており、独り暮らしです。
20代前半で見合い結婚し、一人娘が生まれました。
早々に一軒家を建て、家族三人で暮らしていたものの、景気がよく仕事が忙しかったこともあり、しだいに家庭を顧みなくなったといいます。

運動会や学芸会など、娘の学校行事に参加したことはありません。
夜の街へは毎日のように足を運び、妻と口論が絶えませんでした。
泣いて止める娘を振り払い、妻に暴力をふるうこともあったそうです。

当然のように家族の会話はなくなり、仕事が減って収入が減少すると、妻と娘は男性を置いて家を後にしました。離婚した後は住んでいる場所も知らないといいます。
20年以上連絡を取っていません。

突然自分が死んだときのために娘の意思を確認したい、というのが相談の趣旨でした。ひどい親であることを自覚しているため、財産を受け取ってもらえるか心配だそうです。

後日、男性に戸籍謄本などを取得してもらい、娘の現住所がわかりました。
男性は謝罪と今の気持ちを手紙にまとめ、ポストに投函しました。
直接話をするのは怖い、ということで、私の電話番号と住所を連絡先に設定しました。

後日娘から私に電話がありました。
娘は「一切の関わりを拒否します。相続になったら放棄します」と言って、叩きつけるように電話を切りました。電話ごしに強い怒りが伝わってきました。

来所してもらい、男性に返答を伝えると、予想していたようで、大きい反応はありません。事情を聞くと、自分自身の両親もけんかばかりで、家族の良い思い出はなかったそうです。
どうすればいいかわからなかった、そう言い残して、男性は事務所を後にしました。

私は小学生と2歳の子どもがいるものの、親としてとても未熟だと感じています。よく言われるように、子育てを通じながら、親として成長していくのでしょう。
なるべく心の余裕を持ち、いつも子どもに十分な愛情をかけたいと思う出来事でした。

(記事は2020年5月1日現在の情報に基づきます)