7年間生死不明、災害後1年間行方不明ときは

前回の記事で、不在者財産管理人の選任について書きました。相続人の中に不在者がいる場合、不在になってからの期間によってはもう一つの方法で遺産分割を進めることができます。その方法を「失踪宣告」といいます。不在者の生死が7年間明らかでないとき、または災害などの危機に遭遇し、その危機が去った後に生死が1年間明らかでないときは、家庭裁判所は配偶者や利害関係人などからの申立てを受けて、不在者の失踪宣告をすることができます。

失踪宣告の申し立てが認められれば、不在者は不在となってから7年が経過した日または災害などの危機が去った日をもって、法律上は死亡したものとみなされます。その場合、遺産分割協議は、不在者以外の相続人全員と不在者の相続人で行えるようになります。なお、不在者が不在になってから7年を経過している場合であっても、不在者財産管理人を選任する方法で遺産分割協議を行うことも可能です。

続いて、不在者管理人が参加する遺産分割協議について説明します。不在者財産管理人の権限については以下のように定められています。

民法第百三条 
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

民法第二十八条 
管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

保存行為とは、財産の価値を保存するための行為で、建物の修繕などが該当します。このように、不在者財産管理人の権限は財産価値を維持する行為などに限定されます。定められた権限を超える行為を不在者財産管理人が行うには、家庭裁判所から権限外行為の許可を得なければなりません。遺産分割協議に不在者財産管理人が参加することにも、権限外行為の許可が必要となります。

長期に渡る不在者財産管理人の負担を避けるための策

家庭裁判所は遺産分割協議に関する権限外行為を許可するにあたって、不在者が不利益を受けないように配慮します。原則として、許可を受けるための遺産分割協議案は、不在者の法定相続分を上回る財産を取得する内容が求められます。そのため、不在者が一定の財産を取得する内容で遺産分割手続きが進みます。取得する財産は不在者が戻るまで、不在者財産管理人が預かることになります。そうすると、長期間にわたって不在が続けば、不在者財産管理人は財産管理を続けることになり、負担が重くなります。

管理が長期間にならないよう、実務上は「帰来時弁済(きらいじべんさい)型の遺産分割」という方法がよく利用されています。これは、「他の相続人が不在者のために法定相続分以上に相当する金銭を保持し、不在者が戻った場合には代償金として支払う」ことを含んだ遺産分割協議になります。この方法が認められれば、不在者財産管理人の業務は、原則として遺産分割の終了をもって完了します。私が不在者財産管理人に就任した事例でも、帰来時弁済型の遺産分割が認められたことがあり、スムーズに相続手続きが完了しました。

不在者に不動産を取得させない内容で遺産分割協議がまとまれば、不動産を取得した相続人だけで相続登記を進めることができます。大きな問題はなく、手続きを進められる可能性が高いでしょう。

以上のように、連絡の取れない相続人がいる場合の相続手続きについては、裁判所の関与が必要になることがあるため、対応が難しそうだと感じる場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

(記事は2020年7月1日現在の情報に基づきます)