目次

  1. 1. 「生前贈与で非課税枠2500万円」相続時精算課税とは
    1. 1-1. 相続時の争いが防止できる
    2. 1-2. 値上がりが確実な財産の場合は相続税の節税になる
    3. 1-3. 収益性のある財産であれば収益の分だけ相続税の節税ができる
  2. 2. こんな生前贈与だと非課税効果が高くなる
    1. 2-1. 住宅取得等資金の贈与の特例と組み合わせると節税効果が高くなる
    2. 2-2. その他の非課税措置も視野に
  3. 3. 相続時精算課税で贈与するときの注意点
    1. 3-1. 届出書の提出を忘れてしまうと贈与は暦年課税に
    2. 3-2. 一度選択すると暦年課税に戻れない
    3. 3-3. 年間110万円以内の贈与でも申告が必要に
    4. 3-4. 贈与税の節税にはなるが相続税の節税効果は薄い
  4. 4. まとめ

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生前贈与は年110万円以内であれば、贈与税の申告は必要ありません。贈与税の基礎控除については、以下の記事をお読みください。
年110万円までの生前贈与は税金がかからない 早く始めて長く続けると効果的

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母や祖父母(贈与者)から18歳以上(※1)の子や孫(受贈者)に対して、財産を贈与した場合において選択できる贈与の制度です。

この制度は、相続時精算課税選択届出書を税務署へ提出した贈与者と受贈者間の贈与財産が累計2500万円になるまでは贈与税がかかりませんが、累計が2500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。
(※1)2022(令和4)年3月31日以前の贈与により財産を取得した場合は20歳以上

1月から12月までの暦年課税による贈与は、贈与税の非課税枠が年間110万円のため、一度に多額の財産を贈与すると多額の贈与税が課税されてしまいます。しかし、相続時精算課税による贈与を活用することにより、若い世代へスムーズに財産を移転することができます。そのため、この制度を活用することで以下のようなメリットがあります。

生前に財産を贈与しておけば、贈与者が亡くなったときに遺産分割協議の対象から除外することができます。特に相続時精算課税による贈与の場合、多額の贈与をしても贈与税は少額に抑えることができる可能性があるため、特定の子や孫に渡したい不動産や株式などがある場合、相続時精算課税による贈与は有効な手段になる可能性があります。

相続時精算課税により贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産に加算しなければなりません。ただし、この加算する金額は贈与時の時価になります。そのため、贈与後に、その贈与した財産に値上がりが生じた場合でも、贈与時の時価で相続税を計算することができます。不動産や株式など時価の変動が生じるような財産の場合は、今後値上がりが確実であれば相続税の節税につながる可能性があります。

賃貸不動産や配当の利回りがよい株式など収益性がある財産の場合、早期に贈与することにより、父母や祖父母が健在の間から、不動産や株式から得られる賃料や配当金を子や孫が得ることができます。そのため、贈与者は不動産や株式から得られる現預金の増加を抑制することができます。現預金も贈与者が亡くなったときには相続財産になるため、収益の分だけ相続税の節税をすることができます。

子や孫が住宅用家屋を新築、取得または増改築など(以下「新築など」)のために父母や祖父母から資金援助してもらうケースがあります。そのようなとき、相続時精算課税と住宅取得等資金の贈与の特例を組み合わせることにより、最大3500万円(相続時精算課税の特別控除2500万円+住宅取得等資金の贈与の非課税1000万円)まで贈与税が課税されないようにすることができます。

なお、住宅取得等資金の贈与の特例とは、父母や祖父母などから住宅用家屋の新築などのために資金を贈与した場合、一定の要件を満たしたときは、一定額まで贈与税がかからない制度です。この一定額とは、一定の耐震性、省エネルギー性またはバリアフリー性などを有する良質な住宅用家屋は1000万円、それ以外は500万円まで贈与税がかかりません。

暦年課税による贈与の場合は、最大1110万円(基礎控除110万円+住宅取得等資金の贈与の非課税1000万円)までしか贈与税が課税されないようにできませんが、相続時精算課税と住宅取得等資金の贈与の特例を活用することにより、贈与税を抑えて多額の資金援助をすることができます。

贈与税の非課税には、教育資金の一括贈与の非課税や、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税などがあります。このような非課税も活用することで贈与税を抑えることができますので、教育資金や結婚・子育て資金の援助をしてもらいたい場合は、このような規定を検討してもよいでしょう。

・教育資金の一括贈与の非課税措置の概要

父母や祖父母から教育資金の一括贈与を受け、原則として受贈者が30歳に達するまでに教育資金として支払った金額は、1500万円を限度に贈与税がかかりません。この制度は令和3年度の税制改正で一部要件が変わりましたが、適用時期は令和5年3月31日まで2年間延長されました。

・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の概要

18歳以上(※1)50歳未満の子や孫への父母や祖父母から結婚・子育て資金の一括贈与を受け、受贈者が50歳に達するまでの間に結婚・子育て資金として支払った金額は、1000万円を限度に贈与税がかかりません。この制度も令和3年度の税制改正で一部要件は変わりましたが、適用時期は令和5年3月31日まで2年間延長されました。

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相続時精算課税制度を選択する場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書と一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出しなければなりません。そのため、最初に贈与を受けたときにこの届出書の提出を忘れてしまった場合、贈与は暦年課税となってしまいます。たとえば、2000万円の贈与を行った際に、相続時精算課税選択届出書を提出していれば贈与税は0円になりますが、提出を忘れてしまうと、585.5万円の贈与税(特例贈与の場合)が課税されてしまいます。

相続時精算課税制度を一度選択すると、その年以降のその選択に係る贈与者からの贈与は相続時精算課税制度が適用され、暦年課税による贈与に戻ることができません。そのため、前年以前にすでに2500万円の相続時精算課税の贈与を受けている場合、100万円の贈与を受けても常に20%の贈与税が課税されます。

相続時精算課税制度を選択している場合、年間110万円以内の贈与であっても贈与税の申告が必要になります。

相続時精算課税制度の贈与者が亡くなった時の相続税の計算は、贈与者の相続財産にこの制度を使って贈与した財産を加算して計算することになります。そのため贈与税の節税にはなりますが、相続税の節税効果は薄くなります。

相続時精算課税について、贈与税は暦年課税と比較して大きな節税になりますが、相続税は暦年課税と比較して節税効果は薄くなります。父母や祖父母から子や孫へ財産を移転するには、主に暦年課税による贈与、相続時精算課税による贈与、あるいは亡くなったときに相続による移転、または売買による移転の方法があります。それぞれには税率の違いなどのメリット・デメリットがあり、選択肢を間違えるとかえって多額の税金を払うことにもなりかねません。そのため、どの手法を選ぶべきか迷うときには、相続に強い税理士などの専門家に早めに相談をすることをお勧めします。

(記事は2022年8月1日時点の情報に基づいています)