前回は故人の「デジタルのお金」の調べ方について総合的に解説しました。今回編集部にいただいた質問は、より深刻で具体的です。

いつも『相続会議』を愛読しているという、都内にお住まいの60代女性からのご相談です。

「最近、夫に先立たれました。夫はよくスマホで電子決済したり証券を運用したりしていましたが、私には詳細は分からず、どの金融機関にいくら残っているのか分かりません。スマホが開けず、離れて暮らす息子と娘に相談してもお手上げと言われてしまいました。何かよい手はないでしょうか? よろしくお願いいたします」

タイミングは不明ながら、おそらく遺産分割協議の前段階でしょう。スマホもものによっては何か打つ手があるかもしれませんが、型番が不明なので、スマホに頼らないかたちで資産を把握する方法を模索していきたいと思います。

通帳からメール履歴まで、お金の流れの”可視化”を

最初にやるべきは、見えているお金の流れを徹底的に調べて、見えていない領域を探ることです。前回の内容とも多少重なりますが、基礎的なところは得てして共通するものです。

紙の預金通帳やクレジットカードの明細、証券会社から届いた封筒、財布や定期券入れに入れているカードなど、資産に直結するアイテムはすべて拾い上げましょう。

故人のパソコンが残っている場合、几帳面な人であれば資産管理ファイルが見つかることもあります。スマホメインで資産運用していた場合も、共通のメールアドレスを受信していることが多く、受信ボックスを調べることで、売買や振り込みなどの情報が得られることも少なくありません。

個人の同僚や友人にも聞く

また、直近まで親しくされていた友人や同僚の方に、普段どうやってお金のやりくりをしていたか聞いてみるのも有効です。パソコンやスマホの操作に不慣れでしたら、お子さんを含めた信頼できる人達にも協力を要請しましょう。

とにかくアナログもデジタルも関係なく、「見えているお金の流れ」を具体的に把握することです。そして、見えないお金の輪郭を見つけていく。探偵になって推理小説を進めていく感覚に近いでしょうか。

「3ヶ月に1回、紙の預金通帳に年金や給料以外のまとまった入金がある。この振り込み先は何だろう?」

「同僚の人が言っていたから、電子メールの受信箱を『FX』で検索してみよう」

「○月○日に月額1000円の定額サービスに契約したというメールが届いているけど、メインバンクにもクレジットカードにも支払いの痕跡がないぞ?」

・・・などなど。様々なところに糸口は残っているものです。そこに気づくには丹念な情報収集と情熱が必要です。大変な作業ですが、なるべく苦手意識を持たないようにして探偵をやり遂げましょう。

とり漏らしがあっても問題ありません。というより、本人が残したヒントがない状態では100%把握するのはかなり高難度です。ですから、「メイン銀行やメイン証券の口座が見つかればOK」「あとは見つかればラッキー」くらいの心持ちで挑むのが精神衛生上良いと思います。

もし知らない間に損失が出ていても、連絡は来る

ちなみに、FXのような証拠金取引は相場によっては負債化することもあります。しかし、故人の負債が遺族に請求される例は国内で年に数件あるかないかというレアケースですし、額も20~30万円ということが大半です。そして、負債化した場合は金融機関側からその時点で連絡が来ますから、いつまでの潜在化している不安は考えなくてよいでしょう。

金融機関への問い合わせは速やかに

調査していくなかで、口座のある可能性がある金融機関が見つかったら、その時点で問い合わせることをお勧めします。

ネット銀行であれ、ネット証券であれ、基本的な遺族対応は従来の金融機関と変わりません。遺族によって口座の持ち主の死去が伝えられれば一旦凍結し、遺産分割協議の後に内容に従って分配されます。

ただし、店舗窓口を設けていないことが多いので、尋ねる先はその金融機関のサイトになるでしょう。トップページには必ず、サポート電話やサポートQ&Aページへのリンクが用意されているので、そこから連絡します。

ネットに詳しい子世代が頼りに

この作業もネットに不慣れでしたら、お子さんを頼るのが良いです。申請者が相続人だと話がスムーズに進むので、ご友人に任せるのは避けましょう。

あとは、通常の金融機関でのやりとりと変わりません。ただし、証券を相続する際は、同じ金融機関に相続人が口座を作る必要があるので、作業が繁雑です。そのあたりも不安があれば、お子さんを頼るのがよいかもしれません。

(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)