狭い土地の活用方法12選 メリットから成功事例、注意点までプロが解説
相続した狭い土地の使い道がないことに困っていませんか? 確かに活用しづらい面もありますが、工夫次第では 狭い土地でも収入を得られる可能性もあります。狭い土地でもできる有効活用の種類や注意点について、土地活用に詳しく、自らも不動産投資に取り組むファイナンシャル・プランナーが解説します。
相続した狭い土地の使い道がないことに困っていませんか? 確かに活用しづらい面もありますが、工夫次第では 狭い土地でも収入を得られる可能性もあります。狭い土地でもできる有効活用の種類や注意点について、土地活用に詳しく、自らも不動産投資に取り組むファイナンシャル・プランナーが解説します。
目次
狭い土地のことを「狭小地」といいますが、実は狭小地には「〇〇坪以下の土地」というような定義はありません。
かつて住宅金融公庫(住宅金融支援機構の前身)は、原則として100平方メートル(約30坪)未満の土地には融資をしませんでした。30坪未満では狭すぎて住環境や安全面から住宅用地として好ましくないと考えていたからです。その観点に立つと30坪未満が狭小地といえるでしょう。
ただし、近年は都市部を中心に、15坪程度の土地に3階建ての建物をのせた建売住宅が人気を集めています。そのため15坪の土地を狭小地と考えることもできます。一方、郊外に行くと、50坪あっても狭い土地と言う人もいます。
このように、狭小地の基準もさまざまですが、本記事では、狭い土地が共通して持っている「建築しづらい」「活用しづらい」というイメージを念頭に置いて、おおむね30坪に満たない土地を狭小地として話を進めます。
狭い土地は、ただでさえ法的な制限によってさまざまな制約を受ける上に、三角形や、細い路地を通った先にある奥まった旗竿地(はたざおち)のような不整形地も多く、ますます活用しづらいものです。
しかし、街を歩いていると、自動車1台分の小さな駐車場などを見かけます。また、わずかな土地に自動販売機が置いてあったり、看板が立っていたりします。狭い土地でも工夫次第で、上手に活用することができるのです。
狭い土地を活用するメリットについて説明します。
狭い土地を空き地のままにしておけば、固定資産税や都市計画税を払い続けることとなってしまいます。一方、地域のニーズに即した土地活用ができれば、支払う税金以上の収益を得ることが可能となるでしょう。
狭い土地でアパートのような収益物件を始めれば、相続税評価額について、土地は貸家建付地による評価減、建物は借家権割合による評価減が適用されるため、相続税を抑えることができます。また、貸付事業用宅地として、小規模宅地等の評価減の特例の適用が受けられる場合もあります。
狭い土地を遊休地として放置しておけば、草や木の枝が伸びてしまったり、不法投棄されたりなどして近隣に迷惑をかけ、景観を壊してしまう恐れがあります。土地活用をすれば、こうしたトラブルの芽を摘み、治安の向上にもつながります。また、たとえば駐車場が足りない地域で駐車場経営を始めれば、地域貢献につながるでしょう。
狭い土地の活用を検討しているものの、どこに相談すればいいのかと悩んでいる方は以下の記事を参考にして下さい。
【関連】土地活用の相談はどこにすればいい? 業者や専門家の選び方、注意点を解説
22坪の狭い土地に小規模アパートを建築した事例を紹介します。
Aさん(50代男性・会社員)は埼玉県の郊外にある実家を相続しましたが、建物の老朽化が進み、土地も22坪と狭いため、10年近く空き家のまま保有していました。しかし、Aさんは毎年かかり続ける固定資産税や維持費を負担に感じ、狭い土地でも活用ができないか検討した結果、2階建ての小規模アパートに建て替えることにしました。
Aさんが建築したアパートの概要は次の通りです。
【建物】
2階建てアパート(間取1DK×2世帯)+太陽光設備
【事業予算】
1800万円(解体費・諸費用含む)
【資金計画】
自己資金100万円 アパートローン1700万円(30年返済・10年固定・金利1.0%)
【収支計画】
収入:家賃12万円(2戸)+太陽光売電1.2万円(月平均)=13.2万円
支出:管理費0.7万円+固定資産税等(月割)0.8万円+修繕引当金0.7万円+ローン元利返済5.5万円=7.7万円
毎月収支:収入13.2万円-支出7.7万円=5.5万円
年間収支:4.6万円×12ヵ月=60万円
小規模アパートに建て替えたことにより、Aさんは年間約60万円の収入を得ることができるようになりました。なお、初期投資した100万円も2年弱で回収することができました。
決して大きな収入とは言えませんが、若干の副収入にもなった上に、毎年の負担や維持管理がなくなり、Aさんご夫婦は喜んでいます。
狭い土地は活用しづらいと言っても、立地によっては有効活用ができ収益を上げることも可能です。それぞれの特徴を表にまとめたので、参考にして下さい。
なお、そもそも狭い地の活用は、総収入に限度があるため、高い収益性を求めることはむずかしいといえます。ただし、狭い地でも安定的で管理に手間がかからない手法は数多くあります。
土地面積が20坪程度以上あり、建築基準法などの法規制をクリアできれば、小規模なアパートの建築が可能で、他の活用方法よりも高い収支が見込めます。
ただし、戸数を稼ごうと無理やり小さな間取りの部屋を数多く作ってしまうと入居者が決まらないということもあるため注意が必要です。
また、狭い地に建築する場合、どうしても建築費が割高になるため、賃料が低いエリアでは収支が合わないことも多くなります。
戸建賃貸は独立性が高く、上下階や隣の住戸との騒音トラブルなどもないため、高い人気があります。1LDKや2LDKの間取りが確保できれば、カップルやファミリーの長期入居も見込めるため、安定経営が図れます。ただし、一般的に建築費がかかる割には賃料が低く設定されることが多いため、小規模アパートに比べると収益性は劣ります。
賃料の高い都心部などでは、一棟の建物に自宅部分と賃貸部分がある賃貸併用住宅も選択肢になります。賃貸住宅の賃料の一部を自宅部分のローンの返済に充てることができるため、自宅の返済負担を軽減しながら、住みたい場所に住み続けることができます。
ただし、自宅部分の広さや居住性が制限される場合があること、入居者と同じ建物に住むことにより生じるわずらわしさがあること、売却がしづらいことなど、デメリットも考慮しなければいけません。
一般的に、賃料水準の低いエリアの土地、狭すぎる土地では選択肢にならない手法です。
駐車場は狭い土地でよくある活用手法です。アパートなどの賃貸経営と比較すると初期費用も少額でローンの借入もなく、ローリスクの活用といえます。
月極駐車場は、4~5坪程度の土地から経営可能ですが、同じ広さの土地でも形状や道路幅によっては思ったほど台数が取れないケースもあります。
最近では軽自動車の割合も多いので、車種の組み合わせも考えながら、広さや形状に応じて無理のない配置計画をしましょう。
また、都市部では、1台からコインパーキングを経営している土地もあります。月極駐車場よりも高い収益が見込まれますが、立地は限定されるため、まずはコインパーキングの運営会社に相談することをおすすめします。
駅からすぐ近くにある立地であれば、駐輪場が考えられます。駐輪場には自走式と機械式があり、自走式の場合1台あたり0.6m×2mが一般的ですが、機械式の傾斜ラックの場合、幅を0.3m程度に狭めることもできます。
駐輪場もニーズについては不動産会社や時間貸し駐輪場の運営事業者に確認をしてください。
バイク置き場の確保に苦労しているバイク愛好者は少なくありません。住まいの近くだけでなく、通勤先がある都市部や商業地などでもバイク置き場のニーズは高いため、立地が良ければ高い収益も期待できます。
バイクを大切にする人は多く、ガレージ式のバイク置き場も人気があります。バイクにも大型から原付のような小型まであり、サイズもさまざまなので、バイク置き場専門の会社に相談しながら計画を立てましょう。
都市部には、小規模なコインランドリーも多く、10坪程度の広さがあれば設置が可能です。コインランドリーを利用する人はリピート率が高く、固定客になってくれる傾向があります。需要がある立地で始めれば、安定的な収入が見込まれます。
ただし都市部の人口密集地でない限りは敷地内や近くに駐車場が必要になること、他の活用方法と違い稼働率が十分に高くなるまでに時間がかかることに注意が必要です。
自動販売機は、1坪、2坪といった狭い土地でも設置が可能です。自動販売機は大きさもさまざまなので組み合わせることにより変形地にも対応しやすく、また、駐車場など他の活用との併用で経営効率を上げることにも役立ちます。
自動販売機の立地は、基本的に人が集まる場所が条件になります。また近隣の自動販売機やコンビニなどの店舗との競合があるため、飲料メーカーや代理店に見てもらう必要があります。
野立て看板も、大通り沿いなどで視認性が良ければ、狭い土地でも設置が可能です。広告主が広告運営会社に支払う広告代の中から地代が支払われます。元手もほとんどかからないためローリスクの活用ができますが、法規制で看板が禁止されている地域もあるため事前調査が必要です。
コロナ禍以降、テイクアウト店舗の出店が増加しています。客席を設ける必要がないため、10坪以下の狭小地でも可能な場合も多くあります。テイクアウトは事業者にとって初期投資が少ない業態のため、出店しやすいというメリットがあります。
ただし、配達を行なうデリバリーと異なり、テイクアウトはお客様が直接買いに来る形態のため、対象商圏は狭く、商店街、オフィス街、駅近など立地の良さが重要視されます。
所有する狭い土地が住宅地から近いのであれば、トランクルームも需要があります。トランクルームには、コンテナ型とルーム(建物)型があります。初期費用を抑えたいのであれば、コンテナ型がよいでしょう。
一般的には土地所有者が、トランクルーム事業会社からコンテナをレンタルし、集金管理を委託します。ほかにも自ら運営、土地だけ賃貸などの方法もあります。
デメリットは、周辺住民に認知してもらう必要があるため稼働率が上がり、安定的な収益を得るために時間がかかることです。また、住宅専用地域内ではトランクルームは許可されません。
狭い土地をそのまま第三者に貸すことで、安定した地代収入を得ることができます。ほかの土地活用法と比べ、もっとも手間がかからず、また建物建設などの初期費用もかからないため、ローリスクの方法と言えるでしょう。
ただし、契約期間は一般定期借地権が50年以上、事業用定期借地権が10年以上50年未満と長期にわたるため、その間に売却や自己利用を考えているケースには向きません。
狭い土地を有効活用する上で、成功するためのポイントを解説します。
所有する狭い土地を有効に活用するためには、専門家や専門業者に相談するとよいでしょう。立地に合わせた最適な方法の提案から収支計画の作成までサポートしてくれます。
ただし、一社に相談しただけで決めるのではなく、複数の業者の提案を聞いて、比較することが大切です。インターネット上の一括比較サービスを利用すると、個別に問い合わせをする手間が省けます。
ひとくちに狭い土地といっても条件はさまざまです。土地の広さや形、面している道路の広さや交通量、周辺環境や施設、人口や客層、用途地域といった建築制限などは、それぞれの土地によって異なります。
また、有効活用の種類により、事業者や市場のニーズが狭小地に求める条件も異なります。
そのなかで、ニーズと土地が最もマッチングする活用を選択するためには、先ずは所有する土地の市場調査を徹底して行なう必要があります。
ただし、市場調査は、素人ではなかなかむずかしいため、エリアに詳しく信頼できる不動産会社や不動産コンサルタントなどに依頼すると良いでしょう。
所有する狭い土地が市場ニーズにマッチしていたとしても、競合相手が多いと競争も激しくなるので、注意が必要です。見かけの利回りや手取り額だけにとらわれず、長期に渡り安定した経営が期待できる選択をすることが最も大切です。
どの土地活用を選択するにせよ、具体的で現実的な計画を立てることが大切です。たとえば、アパート経営であれば空室率や家賃下落、修繕費用、コインランドリー経営であれば機器故障に伴う修理代や買い替えなどを踏まえた収支計画にする必要があります。
業者に作成してもらった場合でも根拠を尋ね、現実的な収支計画になっているのかチェックしましょう。
土地活用をすれば、多かれ少なかれ周辺環境に影響を与えます。たとえば、アパートを建設すれば、近隣への日差しや風をさえぎってしまう恐れがあります。駐車場をつくったことで、車の出入りが生じます。
近隣の強い反対を受ければ、土地活用を成功させることはできません。周辺に住宅がある場合には、あらかじめ近隣に説明して理解を得た上で計画を進めるとよいでしょう。
狭い土地にもさまざまな活用の方法がありますが、どのような活用もできないケースもあります。また、活用はできても、そもそも狭い土地では収益性も低く期待しているほどの収入が得られないことも少なくありません。
活用したくてもできない場合、売却を検討することも必要です。と言っても、所有者が活用できないような狭い土地を他人が購入する可能性は一般的には低いでしょう。
ただし買主が隣地の所有者の場合、話は変わります。単独では活用ができない狭い土地でも、隣地の人にとっては自らの土地と合わせることにより大きなメリットが生まれます。庭として利用したり、駐車スペースができたり、より大きな建物に建て替えをしたりすることもできるでしょう。
狭い土地を売却したい場合には、まずは隣地に声をかけてみることをおすすめします。
その他に、狭い土地の買取りをする不動産会社もあるので相談してみるのも良いでしょう。
多くの場合、売却金額は相場よりも安くなります。それでも、そのまま所有し続けて負担が続くことを考えれば、安くても手放してしまったほうが気持ちも楽になります。
相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」の活用も選択肢の一つです。ただし、承認には高いハードルがあります。この制度を検討する際は、所有する土地が国に引き取ってもらえる条件を満たすかどうかを事前にしっかりとチェックすることが大切です。
狭い土地であっても、工夫をすれば有効に活用でき、収益を得ることができます。ぜひ、この記事を参考にして、狭い土地を有効活用してみて下さい。
ただし、自分ひとりでその方法を考え、実行するのはハードルが高いでしょう。専門家や専門業者に相談すれば、立地や土地の形状にあった最適な活用方法や収支計画について提案してもらえます。
インターネットの土地活用プラン一括請求サービスも便利です。狭い土地の活用法についての選択肢を増やす意味でも、複数の企業に一括で問い合わせできるサービスを利用してみてはいかがでしょうか。
(記事は2023年11月1日時点の情報に基づいています)