突然の相続2 工場を営む父が急死 遺族「借金の有無も知らない」後悔
公認会計士・税理士・司法書士として相続相談に応じている石動龍さん自身、親と何でも話せる関係ではないそうです。今回は、自営業の親が突然亡くなり、遺族は非常に困りました。家族が最も心配したのは、事業の負債があるかどうかもわからないことでした。
公認会計士・税理士・司法書士として相続相談に応じている石動龍さん自身、親と何でも話せる関係ではないそうです。今回は、自営業の親が突然亡くなり、遺族は非常に困りました。家族が最も心配したのは、事業の負債があるかどうかもわからないことでした。
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親子関係や家庭環境は人によって異なると思います。私の場合、父は公立中学校の教師、母は自宅で塾を開いていました。
大学時代に空手をしていた父は厳格そのもの。
食事や生活で目に付いたことは細かく注意され、時には叩かれることもありました。
野球部の顧問をしていて土日も出勤することが多かったため、遊んでもらった記憶はほとんどありません。
幼少期の私は、「父は怒ってばかりの存在」と位置づけ、避けていたように思います。
優しい母に支えられて育ったものの、父子関係は望ましいものとは言えなかったでしょう。
大人になった現在、特にわだかまりはありません。私も親になり、当時の父の気持ちも少しわかります。とはいえ、やはり話しやすいとは言えない関係です。
これまで私が受けた相談の経験やメディアを通じて得た情報、知人から聞いた話を統合すると、「親となんでも話せる」という人は、どちらかというと少数派であるように思います。
以前、「相続放棄をしたほうがよいかわからない」という相談がありました。守秘義務に反しないよう、実際の事例を改変し、脚色しています。
亡くなった男性は70代後半。
建設関係の自営業をしており、亡くなる前も月に何回かは仕事に出ていました。
自宅に併設した作業場があり、機械や材料はそのまま残されています。
相続人は同居していた同世代の妻と、40代の長男の2人です。資産は自宅と作業場を含む不動産と、預貯金が少々。
問題になったのは、借金があるかどうかです。
妻は男性の事業に関わっておらず、長男は後を継がずに就職しています。男性は気難しい性格で長男とあまり仲が良くありません。亡くなる前の数年はほとんど会っていませんでした。妻も男性が事業に口を出されることを嫌っていたそうで、事業のことは何もわからないといいます。
書類が整理されていないため、状況はまったくわかりません。
負債の額によっては、相続放棄や限定承認などの手続きを取ったほうが良い場合もあります。どちらの手続きも期限があるため、時間的に余裕のない状況でした。
数日後、残っていた資料の山から前年の確定申告書の控えが見つかり、届けてもらいました。内容を確認すると、借入金など多額の負債は計上されていませんでした。
残っていた通帳を見ても返済履歴は見つかりません。
ただ、申告書は手書きで、税理士の記名もありません。
事情を聴いてみると、長年にわたって自分で申告書を作成していたようでした。
正しいかどうか不安がある、ということで、クレジットカードの利用状況や金融機関からの借入などについて、取引情報の開示請求をしてもらいました。
確認できる限り調べましたが、死亡時点で借入金などはありませんでした。
また、所有不動産の登記記録を確認したところ、抵当権など他者の権利は設定されておらず、負債の存在は確認できませんでした。
他に可能な限り調べても負債につながる情報は見つかりません。
生活状況を踏まえても多額の負債はないと判断し、もしも返済通知等が来た場合には連絡してほしい旨を伝えて、相続登記の手続きをして関与は終了しました。
「大切なことは死ぬ前に聞いておくべきだった」という長男の言葉が印象に残りました。
私の両親はもうすぐ70代になります。突然亡くなる可能性も十分にある年代です。
私の場合は、資産状況や葬儀の希望など、重要なことは口げんかにならないよう配慮しつつ、顔を合わせた際に少しずつ確認しています。
雰囲気が悪くなりそうなときは、メールで内容を伝えることもあります。
聞きにくいことは多いですが、顔を合わせなくても意思を伝達できるツールは複数あります。親が携帯電話を持っていない場合は、手紙でもいいでしょう。
いつか来る相続に備えるため、少しずつ意思疎通を図ることをおすすめします。
(記事は2020年5月1日現在の情報に基づきます)
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