目次

  1. 1. 遺言書の付言事項とは
    1. 1-1. 法定遺言事項と付言事項の違い
    2. 1-2. 付言事項を書くメリット
  2. 2. 遺言書の付言事項の書き方
    1. 2-1. 付言事項の文例
  3. 3. 付言事項を書くときの注意点
    1. 3-1. 否定的なことはなるべく書かない
    2. 3-2. 付言事項が多くなりすぎないよう注意
  4. 4. まとめ:弁護士などの助けを借りた付言事項がおすすめ

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遺言書において法的効力を与えることを直接の目的としない記載事項を付言事項といいます。たとえば、家族へのメッセージや葬儀・納骨に関する希望などです。伝えたいことをしっかり理解してもらうため、付言事項を書くときには遺言書の内容が曖昧にならないよう注意しましょう。

遺言書に記載することで法的効力が与えられる事項は法律で定められており、これを「法定遺言事項」といいます。たとえば、相続分の指定や遺産分割方法の指定、特別受益の持ち戻しの免除、推定相続人の廃除、遺贈、子の認知、遺言の内容を実行する遺言執行者の指定、祖先の祭祀を主宰する祭祀承継者の指定などです。これらは、遺言書に記載することで法的効力が認められます。

一方、法的効力が認められない事項は「付言事項」になります。

このように、同じ遺言書に記載する事項であっても、法的効力の有無という点で、法定遺言事項と付言事項は異なります。法定遺言事項は法的効力に関わってくるため、表現に不備がないように慎重に作成する必要がありますが、付言事項は自由に作成しても良いことになっています。

付言事項は、自由に文章を作成できることから、遺言者自身のストレートな想いを関係者に伝えることができます。そのため、家族に対して感謝の気持ちを伝えることができる、死後の葬儀や納骨の方法などを希望どおりにしてもらいやすくなる、相続トラブルを防げることができるなどのメリットがあります。

たとえば、遺言書を書く場合、介護に従事してくれた長男に他のきょうだいよりも多めの遺産を渡したいなど、相続人間で不平等な内容にしたいこともあるでしょう。その場合、取り分が少ない相続人には不満が生じやすくなります。しかし、そのような内容の遺言を作成した経緯を付言事項に書くことで、相続人の不満が解消されることも少なくありません。また、葬儀や納骨の方法に関しても、遺言書に書いておくことで本人の希望が明確になり、相続人がその希望を尊重して進めやすくなります。

付言事項を書く位置や分量についていうと、遺言書の最後に書くことが通常で、法定遺言事項を書き終えた後に付け足すイメージです。法定遺言事項がメインですので、付言事項の分量は少なく簡潔に留めておくことが望ましいです。たくさん書きたい場合は手紙などを併せて活用しましょう。

実際に付言事項をどのように書いたら良いか、典型的な事例を基に、いくつか文例を紹介します。

長男に多めの遺産を渡す場合

長男の一郎は、大学を卒業した後、長年にわたって私とともに家業に従事し、その発展に大きく貢献してくれました。そのおかげで、私自身、経済的にゆとりもでき、安心して老後を過ごすことができました。そこで、私自身の財産形成に寄与してくれた長男に多めの遺産を渡すことにしました。他の兄弟も一郎の頑張りは十分に知っていると思うので、このような遺言を残すことを理解してほしいです。私が亡くなっても、兄弟みんなで仲良く暮らしていってください。

家族に感謝の気持ちを伝えたい場合

私は、素晴らしい妻と子どもたちに恵まれ、温かい家庭を築くことができました。私が妻と老人ホームに入った後も、子どもたちが定期的に会いに来てくれて本当にうれしかったです。とても幸せな人生でした。私が亡くなった後も、家族で互いに助け合ってどうか幸せな人生を送ってください。

遺留分を請求しないで欲しい場合

妻には自宅不動産と預金の半分を相続してもらうことにしました。私が亡くなった後も、住まいやお金の心配をせずに、安心して老後を過ごしてもらいたいためです。子どもたちの取り分はだいぶ少なくなってしまいますが、お母さんが安心して暮らせるように、遺留分の請求はしないようお願いします。お母さんのことをどうかよろしく頼みます。

葬儀の方法を指定したい場合

私の葬儀は、家族だけでささやかに済ませてください。葬式や告別式などは行わずに直葬で構いません。これまで子どもたちにはたくさんの苦労をかけてきました。私が亡くなった後に葬儀のことで気苦労をかけることは避けたいですし、私自身も家族だけで静かにやってくれるほうがうれしいです。よろしくお願いします。

介護してくれた長男の嫁に遺贈する場合

長男の嫁である花子さんは、私自身の介護に懸命に従事してくれました。老人ホームに入ることなく、住み慣れた自宅に住み続けることができたのも、花子さんが炊事洗濯などをすべてやってくれていたおかげです。そこで、花子さんにも、感謝の気持ちとして、遺産の一部を渡すことにしました。次男や三男も花子さんの頑張りは十分に知っていると思いますので、この判断を尊重してくれると信じています。相続のことで揉めることがないように切に願っています。

付言事項の効力の一つに、トラブル防止が挙げられます。「争族」を避けるための注意点を紹介します。

ほとんど顔も見せなかった子どもがいる場合などに愚痴を書きたくなることもあるでしょう。

もっとも、特定の相続人に対して否定的なことを書き連ねると、かえって争族を引き起こす可能性があります。そのため、否定的なことは書くのはできるだけ避け、感謝の気持ちなど肯定的なことを書くほうが良いでしょう。

付言事項が多くなりすぎると遺言書の趣旨が曖昧になってしまいます。たくさん書きたい場合は、別途手紙やエンディングノートを利用すると良いでしょう。また、録音や録画等のデータを残しておくことも選択肢の一つです。書面と動画では与える印象が大きく異なりますので、遺言書の内容に不満を持つ相続人を説得する材料にもなります。

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弁護士という仕事柄、遺言書を拝見する機会は少なからずありますが、付言事項が書かれているケースは多くありません。

しかし、これまで解説してきたとおり、付言事項には相続人間のトラブル防止に役立つなどのメリットがありますので、トラブルが想定される場合などには書くことをおすすめします。付言事項があるのとないのとでは、相続人の納得感が異なるためです。

遺言書を作成した経緯が書いてあることで、遺言書の内容に不満がある相続人であっても「親がそのような想いで遺言を作成したのであれば、その想いを尊重しよう」と納得することもあります。

ただし、何らの配慮もなく書いてしまうと、かえってトラブルを招きかねません。そのため、遺言書作成時には、弁護士などの第三者に内容をチェックしてもらうと安心でしょう。

(記事は2021年4月1日時点の情報に基づいています)

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