目次

  1. 1. 自分で相続手続きができる条件
  2. 2. 相続手続きの全体の流れ
  3. 3.  相続手続きを自分でする:やるべきこととその方法
    1. 3-1. 相続人調査
    2. 3-2. 相続財産調査
    3. 3-3. 遺産分割協議
    4. 3-4. 遺産分割協議書作成
    5. 3-5. 不動産登記
    6. 3-6. 預貯金払い戻し
    7. 3-7. 株式名義変更
    8. 2-8. 自動車名義変更
    9. 3-9. 相続税申告納税
  4. 4. 自分で相続手続きをすると起こりうるリスク
    1. 4-1. 間違いが生じやすい、スムーズに進まない
    2. 4-2. トラブルが起こる可能性がある
    3. 4-3. 相続税を払いすぎるリスク
    4. 4-4. 本来の権利が実現されないリスク
  5. 5. 相続手続きを専門家に依頼すべきケース
    1. 5-1. 相続人が多い
    2. 5-2. 相続人の仲が悪い
    3. 5-3. 連絡を取りにくい相続人がいる
    4. 5-4. 借金その他の負債がある
    5. 5-5. 不公平な遺言書がある
    6. 5-6. 熱心に介護した相続人がいる
    7. 5-7. 相続税がかかる
    8. 5-8. 手間や時間をかけたくない
  6. 6. 相続手続きの相談先
    1. 6-1. 遺産分割について
    2. 6-2. 相続登記について
    3. 6-3. 揉め事が発生しそう、トラブルになった場合
    4. 6-4. 車の名義変更、許認可について
    5. 6-5. 相続税関係について
  7. 7. 遺産整理業務とは
  8. 8. まとめ

相続手続きはとても煩雑なため、専門家に相談して力を借りた方が負担が少なくてすみますが、以下のすべての条件を満たすなら、自分で手続きをしてもあまり問題は発生しにくいでしょう。

  • 相続人が少なくて円満
  • 相続財産が少なくてもめごとも起こらない
  • 不動産が含まれていない
  • 手間と時間をかけても良い

相続がいったん始まると、期限までに終わらせなければいけない手続きが多岐にわたります。まずは相続手続きの流れ全体を把握しておきましょう。

一般的な相続手続きの流れを期限とともに表した一覧です。

【関連記事】相続手続きの流れ スケジュールに沿っていつまでに、何をするべきか解説

次に、相続手続きを自分でするときにやらねばならないことを解説します。。個別の状況にもよりますが、だいたい以下のような対応が必要となるケースが多数です。

  1. 相続人調査
  2. 相続財産調査
  3. 遺産分割協議
  4. 遺産分割協議書作成
  5. 不動産登記
  6. 預貯金払い戻し
  7. 株式名義変更
  8. 自動車名義変更
  9. 相続税申告納税

相続人調査は、被相続人にどういった相続人がいるかを確定するための調査です。
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類を集めなければなりません。
戸籍謄本類は、本籍地のある役場へ申請して取得します。

【関連記事】相続人調査の方法 戸籍の収集法と読み解き方を司法書士が解説

相続財産調査は、どういった遺産があるかを確定する作業です。下記のような方法で調査を進め、評価も行いましょう。

  • 預金…金融機関へ照会
  • 不動産…法務局で不動産全部事項証明書を取得、役所で名寄帳の写しを取得
  • 株式…証券会社へ照会

【関連記事】親が亡くなってまずやるべきは「相続財産調査」 遺産の調査方法と専門家の選び方を解説

相続人と相続財産が明らかになったら、相続人が全員参加して遺産分割協議を行います。誰がどの遺産を取得するのか、あるいは売却して現金で分けるのかなどを決めましょう。

なお遺言書がある場合は、基本的に遺言書通りに分けることになるので、遺産分割協議も、下記の遺産分割協議書の作成も不要になります。

協議が整ったら遺産分割協議書を作成します。誰がどの財産を相続するかということを、細かく記載します。書き方に法的な決まりはありませんが、正しい方法で作成しないと無効になり、相続手続きにも使えなくなる恐れがあるので注意が必要です。

【関連記事】自分で作成できる! 遺産分割協議書の書き方 ひな型・文例と一緒に解説 注意点や活用方法も紹介

不動産を相続したら、法務局で相続登記をしなければなりません。申請書を作成して必要書類を用意し、管轄の法務局へ提出しましょう。

【関連記事】相続登記を自分でする場合の必要書類や費用 司法書士に依頼すべきケースを紹介

預貯金を相続したら、金融機関へ払い戻しの手続きを行います。
本人確認書類や通帳、キャッシュカードなどを用意し、解約請求書などの書類を提出しましょう。

株式を相続したら、証券会社で名義変更を行います。現在証券口座を持っていない方は、まず自分名義の口座を用意しなければなりません。必要書類を提出して株式の名義変更と移管を行いましょう。

【関連記事】株の相続に時効はある? 相続税の納税や名義変更、配当金の手続きも解説

自動車を相続したら、陸運支局で名義変更をします(軽自動車の場合には軽自動車検査協会)。必要書類を揃えて提出しましょう。

【関連記事】自動車の所有者が亡くなった……相続や名義変更の手続きの注意点

相続税が発生するケースでは、相続税の申告と納税をしなければなりません。期限は相続開始を知ってから10カ月以内なので、遅れないようにしましょう。

家族構成とおおよその財産額を入力することで、相続税がいくら程度かかるかを把握できる「相続税計算シミュレーション」もご活用下さい。

自分で相続手続きをするにあたっては、以下のようなリスクが発生しやすいので注意が必要です。

素人対応では手続きに不備が生じやすく、スムーズに進みにくいケースが多々あります。余計な時間と手間がかかってしまうでしょう。

他の相続人と意見が合わなかったり手続きが滞ったりして、トラブルにつながるケースもあります。相続税の申告期限を過ぎてしまう人もいます。

自分で相続税の計算をすると、間違って払いすぎてしまうリスクもあります。

法律上保障される権利について知識がないため、本来の権利が実現されないリスクもあります。たとえば知らず知らずのうちに、一方的で不公平な遺産分割に応じてしまう人も少なくありません。

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以下のような状況であれば、相続手続きは専門家へ相談するようおすすめします。

相続人の数が多いと、相続人調査も大変です。連絡を取り合って遺産分割協議を進めるのも難しくなるので専門家に対応を依頼するのが得策です。

仲の悪い相続人がいると、遺産分割協議がまとまりにくくなります。揉め事が発生する前に弁護士に相談してみてください。

連絡を取りにくい相続人がいる場合、自分で対応しようとしても無視されてスムーズに進まない可能性があります。弁護士に代理で協議を進めてもらうのが良いでしょう。

借金や未払い税などの負債を相続したくないなら、自分のために相続があったことを知ってから3カ月以内に相続放棄すべきです。自己判断で対応すると期限を過ぎるなどして借金を相続してしまう可能性があるので、早めに専門家へ相談してみてください。

特定の相続人に多くの遺産を遺す不公平な内容の遺言書があると、トラブルのもとです。スムーズに相続手続きを進めるため、一度専門家に意見を聞いてみるのがよいでしょう。

熱心に介護した相続人がいると、寄与分を主張して他の相続人とトラブルになるケースが多々あります。弁護士に相談しながら遺産分割協議を進めるのがよいでしょう。

相続税が発生するなら、相続に力を入れている税理士に対応を依頼しましょう。自分で計算すると間違いが起こりやすく、期限を過ぎてしまうケースも少なくありません。

相続手続きに手間や時間をかけたくないなら、専門家へ依頼しましょう。任せてしまえば自分たちで対応する必要がなくなります。

相続手続きを依頼できる専門家にはいくつかの種類があります。

相続人調査や相続財産調査、遺産分割関係は弁護士や司法書士、行政書士に相談しましょう。

不動産の相続登記は司法書士へ依頼しましょう。

揉め事の解決は弁護士の職域です。揉め事が発生した場合はもちろんのこと、発生しそうな場合にも事前に相談してみましょう。

車の名義変更や許認可の引き継ぎは行政書士に依頼しましょう。

相続税が発生するかどうかわからない場合や税額の計算、申告などについては税理士に依頼しましょう。

【関連記事】相続の相談先はどこがいい? 弁護士、司法書士、税理士に相談できる内容と探し方

専門家に相続手続きを依頼するとき「遺産整理業務」を利用すると便利です。遺産整理業務とは、司法書士などの専門家が相続開始から手続きの終了まで、まとめて行ってくれるサービスです。任せていれば相続人本人はほとんど何もしなくても、すべての相続手続きを完了できて便利です。

司法書士や弁護士が取り扱っているケースが多いので、利用したい場合には対応している事務所を探してみましょう。税理士などの他士業と連携している専門家なら、手続きごとに専門家を探す必要がなく手間がかかりません。

なお司法書士の遺産整理業務を利用する場合、遺産分割協議でトラブルが発生すると弁護士へ依頼し直さねばならない可能性があります(弁護士と連携している司法書士なら、弁護士を紹介してもらえます)。

【関連記事】「遺産整理」を依頼するなら士業?銀行? 費用相場から「丸ごと代行」まで解説

遺産相続の手続きを自分ですべて行うと、非常に大変で時間も労力もとられてしまいます。スムーズに進めるため、専門家の力を借りて進めるとよいでしょう。

依頼したいときには司法書士や弁護士などの士業のうち、相続関係に力を入れていて、他の専門家とも連携している事務所を探してみてください。

(記事は2022年11月1日時点の情報に基づいています)