相続手続きの流れ スケジュールに沿っていつまでに、何をするべきか解説

相続手続きでは、さまざまな事柄について対応しなければなりません。時期に応じた対応事項をきちんと整理して、計画的に進めることが大切です。各手続きの期限を頭に入れたうえで、適切なスケジュールを立ててご対応ください。相続手続きの流れについて、弁護士が内容や期限などをわかりやすく解説します。
相続手続きでは、さまざまな事柄について対応しなければなりません。時期に応じた対応事項をきちんと整理して、計画的に進めることが大切です。各手続きの期限を頭に入れたうえで、適切なスケジュールを立ててご対応ください。相続手続きの流れについて、弁護士が内容や期限などをわかりやすく解説します。
目次
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相続に関する手続きは、以下に挙げるように、非常に多岐にわたります。時期によって対応すべき手続きが異なるため、スケジュールに沿って計画的に対応する必要があります。
まずは、被相続人(亡くなった人)が息を引き取ってから7~14日後までに対応すべき手続きを紹介します。期限までの猶予が非常に短いので、葬儀の準備などで忙しい中ですが、時間が空き次第すぐ対応しましょう。
被相続人が亡くなった旨を銀行などの金融機関に連絡すると、口座からの入出金がストップします。
各種料金の引き落としや、相続人による無断での引き出しなどを防ぐため、できるだけ早めに金融機関へ連絡しましょう。
被相続人名義の公共料金などに関する契約については、解約する場合を除き、相続人などへ名義変更を行う必要があります。
名義変更が必要な公共料金などに関する契約の主な例
特に、被相続人の口座から利用料金が引き落とされている場合は、口座凍結により電気・ガス・水道・電話などライフラインがストップしてしまう可能性があるので、早めに名義変更を行いましょう。
被相続人の死亡届は、親族などが死亡の事実を知った日から7日以内に提出する必要があります。
届出先は市役所、区役所、町村役場で、以下のいずれかの地域から選択できます。
親族や同居者などであれば誰でも死亡届を提出できるので、手の空いた方が届出を行ってください。なお、届出の際には死亡診断書、または死体検案書の添付が必要となるため、医師に発行を請求しましょう。
被相続人が厚生年金(共済年金)の受給権者だった場合は、「受給権者死亡届(報告書)」を死亡後10日以内に提出しなければなりません。
提出先は、年金事務所または街角の年金相談センターです。提出が遅れた場合、受給権のない年金が振り込まれ続け、あとで返さなければならなくなるので注意しましょう。
なお、日本年金機構に被相続人の個人番号(マイナンバー)が収録されている場合は、原則として届出を省略できます。
被相続人の死亡後14日以内には、以下の手続きを行う必要があります。
①国民年金の受給権者死亡届(報告書)
被相続人が厚生年金(共済年金)の受給権者だった場合は、年金事務所等への届出期限は死亡後14日以内となります。
日本年金機構に被相続人の個人番号(マイナンバー)が収録されている場合は、原則として届出を省略できます。
②国民健康保険証の返却
国民健康保険は死亡によって資格喪失となり、死亡後14日以内に、保険者(市区町村など)に対して保険証を返却しなければなりません。
なお、職場の健康保険に加入している方については、事業主が資格喪失の手続きを行うため、事業主の指示に従ってください。
③介護保険の資格喪失届
介護保険も死亡によって資格喪失となり、死亡後14日以内に、資格喪失届を市区町村へ提出する必要があります。
④世帯主変更届
被相続人が世帯主だった場合は、死亡後14日以内に、同一世帯の方または代理人が、市区町村に世帯主変更届を提出しなければなりません。変更後の世帯主には、15歳以上であれば誰でもなることができます。
次に、被相続人が亡くなってから3~4カ月後までに対応すべき手続きを紹介します。
身辺整理などでバタバタしていると、あっという間に期限が来てしまうので、できるだけ早めに対応することをお勧めします。
相続が発生したら、相続人間で遺産分割を行わなければなりません。その前提となる確認と調査は、できるだけ早めに済ませておくことが大切です。
まず、遺言書の有無を確認する必要があります。遺言書があれば、原則としてそのとおりに遺産を分けることになるからです。被相続人の遺品を探すほか、公証役場の遺言検索も試みましょう。
また、遺産分割に参加する相続人を確定することも必要です。戸籍資料をたどって、相続人全員を漏れなく把握しましょう。
さらに、相続財産を調査し、把握することも大切な作業です。相続財産に漏れがあると、あとで遺産分割がやり直しになってしまう可能性があるので、慎重に調査を行ってください。
なお、遺産分割の手続きの流れをまとめると下記の図のようになります。最終的に家庭裁判所による審判分割になるケースがあることを認識しておきましょう。
相続放棄は原則として、相続の発生を知ったときから3カ月以内に行う必要があります(民法915条1項)。
相続放棄を行うべきかどうかを適切に判断するには、相続財産の調査と把握が必要不可欠です。相続財産の調査や把握には、ある程度の時間を要するでしょう。また、相続放棄の申述に必要な戸籍資料の収集にも、想定外に時間がかかるケースがあります。
相続放棄をすべき可能性がある場合には、ぜひ早い段階で検討に着手してください。相続放棄を検討する際は、下記のようなメリットとデメリットを比較考量することが大切です。
相続人と包括受遺者(相続人ではないものの、遺言書によって割合を指定して遺産を贈与された人)は、相続の発生を知った日の翌日から4カ月以内に、被相続人について所得税の準確定申告と納税を行う必要があります(所得税法125条)。
準確定申告とは、被相続人が死亡した年に、被相続人が得た所得を申告する手続きです。
準確定申告を行う際には、給与明細、年金の受給記録、配当収入、不動産収入など、被相続人の所得に関するさまざまな資料を確認し、申告書を作成する必要があります。
所得調査に時間がかかる可能性があるうえ、不慣れな方にとっては大変な作業なので、税理士に相談しながら早めに準備を進めましょう。
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確定申告に強い税理士を探す次に紹介するのは、被相続人が亡くなってから10カ月~1年後までに対応すべき手続きです。ある程度時間に余裕はあるものの、油断していると期限が来てしまうので、計画的に対応することが大切です。
遺産分割に期限はありませんが、相続税申告との関係では、可能であれば被相続人が亡くなってから10カ月以内に完了しておくことが望ましいでしょう。先に遺産分割が完了していれば、相続税申告が1回で済むからです。
また、遺産分割を早期に完了することで、相続人間の共有状態を解消し、遺産を活用しやすくなるメリットもあります。「いつでもできるから」と放置せず、早めに遺産分割の話し合いを始めることをお勧めします。
相続税申告が必要な場合は、相続の発生を知った日の翌日から10カ月以内に申告と納税を行う必要があります。
相続税申告が必要となる主なケースは、以下のとおりです。所得税の準確定申告と併せて、早めに税理士に相談しておくとよいでしょう。
①相続財産等の総額が、相続税の基礎控除額※を超えている場合
※基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
②配偶者の税額の軽減の適用を受ける場合
③小規模宅地等の特例の適用を受ける場合
遺言書や生前贈与により、ご自身の遺留分を侵害されている場合は、遺留分侵害額請求によって金銭の支払いを受けられます(民法1046条1項)。
遺留分とは、相続できる遺産の最低保障額です。兄弟姉妹以外の相続人には、被相続人との続柄に応じた遺留分が認められます(民法1042条1項)。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する遺贈や贈与を知ったときから1年で時効消滅してしまいます。内容証明郵便の送付や調停の申立てなどにより、消滅時効の完成を阻止することができますので、早めに弁護士へご相談ください。
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遺留分に強い弁護士を探すなお、相続人ごとの遺留分の割合は下の図のとおりです。繰り返しになりますが、被相続人の兄弟姉妹は対象となりません。
最後に被相続人が亡くなってから2~5年後までに対応すべき手続きを紹介します。だいぶ時間に余裕はありますが、忘れないように対応してください。
被相続人が亡くなってから2年以内に行う必要があるのは、葬祭費や埋葬料と高額医療費の申請です。
葬祭費や埋葬料は、被相続人の葬儀費用を補填するものです。被相続人が国民健康保険の加入者だった場合は3~7万円の葬祭費が、協会けんぽなどの健康保険の加入者だった場合は一律5万円の埋葬料が支給されます。
高額医療費は、被相続人の医療費が、所得に応じた上限額を超過した場合に請求できます。
時間が経ってから申請すると忘れがちですので、早めに葬祭費や埋葬料と高額医療費を請求してください。
2024年4月1日以降は、相続の開始があったこと、及び不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、不動産の相続登記を行うことが義務づけられます。司法書士に直接相談するか、弁護士など依頼先の専門家に司法書士を紹介してもらうなどして対応しましょう。
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相続登記に強い司法書士を探すまた、生命保険の死亡保険金請求権は、被相続人の死亡から3年が経過すると時効消滅してしまいます(保険法95条1項)。被相続人の生命保険の受取人になっている方は、時効が完成しないうちに保険金請求を行ってください。
遺族年金と未支給年金の受給は、被相続人が亡くなってから5年以内に申請する必要があります。
①遺族年金
被相続人の遺族の生活保障を目的とした年金です。
②未支給年金
被相続人が死亡時点で受け取っていない年金です。
遺族年金と未支給年金のいずれも、被相続人によって生計を維持されていた遺族であれば、受給できる可能性があります。受給要件を確認して、該当している場合には忘れずに請求しましょう。
相続手続きについては、以下に挙げる専門家に相談できます。それぞれ業務範囲が異なるため、ご自身のお悩みや家庭の事情に応じて選択してください。
①弁護士
相続全般について相談できます。相続人同士のトラブルの解決を無制限に取り扱える点が最大の特徴です。
②司法書士
争いのない相続手続きであれば、幅広く相談できます。不動産の登記手続きを得意とする専門家です。
③税理士
所得税の準確定申告や、相続税申告などについて相談できます。
④行政書士
遺産分割協議書の作成や、各種の名義変更手続き(不動産登記を除く)などについて相談できます。
なお、各士業が相続に関して対応できる業務内容は下の図のとおりです。
相続手続きを計画的に行うには、専門家にサポートを依頼するのが安心です。相続を得意とする専門家に相談すれば、スケジュールを立てて計画的に手続きを進めてもらえます。
遺産相続に関する対応にお悩みの方は、早めに専門家へ相談しましょう。相続会議では全国の弁護士、税理士、司法書士を検索できるサービスを展開しています。ぜひ信頼できる専門家を探してみてください。
(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)
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