目次

  1. 1. 死後10年以上経って見つかった「タンス株」に相続税はかかる?
  2. 2. 株の相続の流れを確認しよう
    1. 2-1. 遺言書の捜索、相続人の調査、相続財産の調査を行う
    2. 2-2. 遺産分割協議の開始
    3. 2-3. 相続手続き及び相続税の申告・納税
  3. 3. 相続税の時効はどうなっている?
    1. 3-1. 相続税の時効成立は5年か7年
    2. 3-2. 相続税の時効成立で納税逃れは難しい
    3. 3-3. 「タンス株」は相続税の時効が成立
  4. 4. 「タンス株」の権利を引き継ぐためには名義変更が必須
    1. 4-1. 電子化前の株券は「特別口座」で管理
    2. 4-2. 「タンス株」の名義変更の流れ
  5. 5. 「タンス株」の未受領配当金には時効があるので早めの手続きを
  6. 6. まとめ|株式の相続は早めに税理士に相談を

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思いがけず発見した亡き父の「タンス株」。死後10年以上経っているけれど、相続税が発生するかわからない……株の相続に関する疑問に直面する方は少なくありません。

本来、株の相続は次の手順で行います。

相続では遺言が優先されます。そのため、故人が相続に関して何らかの意思を示していたかを確認しなくてはなりません。また、戸籍をすべて調べて相続人を探し出したり、相続財産を漏れなく拾い出したりしないと遺産分割協議に入れません。

遺言書の有無や中身を確認したら、遺産分割協議を行います。これは遺言による指定のない財産をどう分けるかを相続人同士で話し合うもので、相続人だけが参加します。協議が成立したら話し合いの結果を「遺産分割協議書」に記し、相続人全員の実印を押さなくてはなりません。

「誰がどの財産を引き継ぐか」が決まったら、財産ごとに相続手続きを行います。株の名義変更は証券会社で手続きをします。細かい名義変更の手続きは記事の後半でお伝えします。

これらの手順とほぼ並行して相続税の申告・納税も行います。相続税の申告期限は相続開始を知った日から10カ月以内です。

冒頭で示したように「10年以上も前の株が父のタンスから見つかった」となれば、焦る方も多いでしょう。特に気になるのが株の相続税の時効です。相続税は追加で納めないといけないのでしょうか。

相続税の申告の時効は通常5年で成立します。起算日は相続税の法定申告期限である「相続開始を知った日の翌日から10カ月を経過する日」です。ただし、「相続税を申告・納付しないといけない」と知りつつ、わざと納付から逃れようとしていると時効は7年になります。

まとめると、「相続税の申告・納税の義務がある」ことを知らなかったら財産の持ち主の死亡日から5年10カ月、知っていて脱税するつもりだったのなら7年10カ月で相続税の申告の時効が成立するわけです。また、納税そのものの時効は5年で成立します。申告・納税の義務があることをまったく知らずに5~6年が過ぎれば相続税の申告も納税もしなくてすむわけです。

ただ、現実はそう簡単ではありません。

実際には税務署は人の死亡や財産状況を把握しており、相続開始から6~8カ月頃、「相続税の申告に関するお尋ね」を相続人に郵送しています。それでも申告がなければ税務調査が行われます。

また、納税に関して督促状が送られていれば、時効はリセットされます。督促状に記載された納期限の翌日から再び時効のカウントが始まるのです。さらに、無申告だったり、申告した税額が少なすぎたりすれば、無申告加算税や過少申告加算税、延滞税などが別途かかります。

冒頭のケースのように、相続税の申告が終了して10年経過した後に株券が見つかったのなら、相続税の申告や納税義務は時効で消滅していると考えてよいでしょう。

10年超もの間、株を放置していても権利はなくなりません。株主名簿に記録されているからです。ただし、「株式の電子化」で効力を失っているかもしれません。株式電子化の概要については金融庁のホームページで確認することができます。

次に、株式の相続に関して知っておきたい注意点をいくつか紹介します。

平成21年1月5日以降、紙に印刷されたすべての上場株券が無効となり、株式の権利を証券保管振替機構(通称「ほふり」)と証券会社などの金融機関の口座で電子的に管理することになりました。これが株式の電子化です。

ただし、この電子化の時に「ほふり」に移行されなかった株券は、「特別口座」で管理されています。特別口座とは、発行会社が指定した指定金融機関に株主名で開設している口座のこと。株主としての権利はありますが、売買はできません。

株の権利を引き継ぐには、相続の手続きが必要です。電子化前の株券なら、発行会社に問い合わせてどの金融機関に特別口座を開設しているのかを確認します。

大まかな名義変更の流れは次のとおりです。実際には、特別口座を管理している金融機関の指示に従います。

  1. 残高証明書の発行
  2. タンス株に関して遺産分割協議を行う
  3. 名義変更

【残高証明書の発行】

被相続人の株の保有残高や保有銘柄を確認すべく、特別口座を管理している金融機関に残高証明書を発行してもらいます。残高証明書には死亡日時点で被相続人が保有していた株式の銘柄名や数量、時価が記載されています。

【タンス株に関して遺産分割協議を行う】

相続人が複数いるなら、新たに見つかった株に関して遺産分割協議を行います。もし未受領配当金もありそうなら、この配当金の受け取りについても話し合いましょう。協議がまとまったら遺産分割協議書を作成し、相続人全員に実印を押してもらいます。

なお、相続人が1人だけなら遺産分割協議は省略できます。

【名義変更】

遺産分割が終わったら、株の引き継ぎである名義変更を行います。ここで金融機関に必要書類を提出します。今回のタンス株のようなケースで、主に必要となる書類は次のとおりです。より具体的な部分については、金融機関の指示に従いましょう。

  • 証券会社指定の相続手続きの依頼書または同意書
  • 特別口座の口座振替申請書
  • 遺産分割協議書(原本)
  • 被相続人の出生から死亡まで確認できる戸籍謄本等
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 株券

この他、相続人が証券口座を保有していないのなら、別途、証券口座を新たに開設する必要があります。

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株の未受領配当金には時効があります。民法では10年とされていますが、発行会社の定款によっては10年より短く定めていることもあります。タンス株が見つかったら、こちらもなるべく早く時効を確認し、しかるべき手続きをしましょう。

未受領配当金は、株主名簿管理人である金融機関が管理しています。この株主名簿管理人となっている金融機関は信託銀行となっていることが多いです。そのため、この信託銀行に対しても相続手続きを行う必要があります。

手続きは、今回のタンス株の名義変更とほとんど同じです。ただし、すでに述べた必要書類に加え、「配当金受領証」または「配当金送金依頼書」が求められます。詳しい手続きは、配当金を管理している信託銀行の指示に従いましょう。

株式の相続は、普段から株の取引に慣れていない人にとってはハードルが高く感じるかもしれません。まして、故人の死後、何年も経ってから予期せず発見された株券であれば、戸惑うでしょう。そんな場合は、早めに税理士など専門家に相談することをおすすめします。

(記事は2022年2月1日時点の情報に基づいています)

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