目次

  1. 1. 相続開始したらすぐに行う手続き
    1. 1-1. 遺言書の有無の確認(すぐに)
    2. 1-2. 相続人調査(すぐに)
    3. 1-3. 相続財産調査(3ヶ月以内)
    4. 1-4. 相続放棄・限定承認の申述(3ヶ月以内)
  2. 2. 遺産分割協議〜相続税申告
    1. 2-1. 遺産分割をすべき場合
    2. 2-2. 遺産分割協議の方法
    3. 2-3. 相続税申告
  3. 3. 遺産相続手続きに手間がかかるなら専門家に相談
    1. 3-1. 弁護士
    2. 3-2. 税理士
    3. 3-3. 司法書士
  4. 4. まとめ

親族が亡くなるとすぐに相続手続きが必要になります。以下では、相続開始後すぐに必要となる手続きをまとめました。

遺産相続では、亡くなった人(被相続人)が遺言を遺しているか否かが重要です。遺言書の多くは、自筆証書遺言か公正証書遺言です。自筆証書遺言は、亡くなった人の自宅に置いてあることも多いですが、親族や知人に預けられていることもあります。最近では、法務局に保管されている可能性もあるでしょう。

法務局に保管されていない自筆証書遺言があった場合、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所で検認を受ける必要があります。管轄の裁判所は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。

また、公正証書遺言については、最寄りの公証役場に問い合わせて有無を確認します。

自筆証書遺言または公正証書遺言において、遺言執行者が指定されている場合には、その人へも相続が開始したことを知らせる必要があります。

相続人が誰であるかを明らかにするため、相続開始後、すぐに戸籍謄本等を取得する必要があります。通常は、亡くなった人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本や除籍謄本を取り寄せてください。金融機関における預貯金口座の凍結解除など、相続後のさまざまな手続きで戸籍謄本等の提出を求められます。

なお、2017年5月29日から法務局において、相続手続きに利用できる法定相続情報証明制度が始まりました。この制度では、相続手続きに必要となる戸籍謄本等と相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を法務局に提出すれば、一覧図に登記官が認証文を付した写しが交付されます。認証文付きの法定相続情報一覧図があれば、さまざまな相続手続きのたびに活用できるため、戸籍謄本等を何度も用意する手間が省けます。

相続財産の調査も、できるだけ早く始めたほうがよいでしょう。亡くなった人に多額の負債があるようなケースでは、相続放棄や限定承認をすることができます。

ただし、相続放棄等をするためには、自己のために相続が発生したことを知ったときから3ヶ月以内という短い期間内に、家庭裁判所に申述手続きをする必要があります。相続放棄等をすべきか判断するため、期限に間に合うよう相続財産の調査を終わらせなければなりません。

調査すべき相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産とがあります。プラスの財産としては、不動産・預貯金・有価証券などがあります。最近ではオンラインで管理していることも多く、相続財産調査に時間がかかることも増えています。

また、マイナスの財産として金融機関等からの借入れ等があります。亡くなった人が個人事業をしていた場合には、取引先への支払債務などが残っている可能性もあるでしょう。

財産調査をしないままでいると、後になって相続人が債権者から多額の債務の請求を受けるケースもあるため、速やかに進めることをおすすめします。

相続放棄や限定承認は被相続人の住所地の家庭裁判所での手続きが必要なので、遠方の場合には、専門家に依頼したほうがよいケースが多いです。また、限定承認は準備に非常に手間がかかるため、早めに弁護士など専門家に依頼したほうが安心でしょう。

以上の手続きを踏んだあとは、遺産分割協議などの相続手続きを行います。

遺産分割が行われるのは、たいていプラスの財産が多い場合です。遺言がある場合でも相続人全員の同意があれば、遺言と異なる内容の遺産分割協議が可能です。

遺産分割協議を行うときはまず、相続人全員による協議の場を設けます。相続人が多くて話がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法もあります。

遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成して終了です。ただし、不動産については、遺産分割協議に基づいた登記が必要です。遺産分割協議が進まないからといって塩漬けにしてしまうと、その間に相続人が亡くなって2度目の相続が開始され、さらに権利関係が複雑になることもあるため、速やかに登記の手続きを進めることをおすすめします。

相続税申告が必要になるかは早めに把握しておくべきです。相続税が課税されるかの目安として「基礎控除」があります。相続財産が以下の計算式で算定される基礎控除を超える場合には、相続税申告が必要となる可能性があります。

基礎控除=3,000万円+600万円×相続人数

相続税には、配偶者の税額軽減の特例など多数の特例もありますので、積極的に適用を受けたいところです。ただし、特例等の適用要件は非常に複雑です。このため、相続税の対象になる可能性がある場合には、早めに相続税に詳しい税理士に相談しましょう。

遺産相続手続きは、上で見てきたように非常に多くの手間がかかります。仕事を持っている方にとって、期限に間に合うように手続きを完了させることは、大きな負担になるかもしれません。

また、親族間で相続争いが発生することもあるでしょう。そのため、ここでは、相続に関する不安がある際、どのような専門家に相談すべきか、費用などを解説します。

相続争いがある場合や、体調面や時間的な理由によって遺産分割協議に参加することが難しい場合には、弁護士に交渉の代理を依頼できます。

また、相続財産のすべてを相続人の一人に相続させる旨の遺言があったようなケースでは、遺言が自分の遺留分を侵害している可能性があるため、早めに弁護士に相談したほうがよいでしょう。このほか、最近では、相続人調査や相続財産調査に対応している弁護士もいます。

依頼する費用は弁護士により大きく異なりますが、遺産分割協議の代理は着手金20万円~40万円程度が多く、これとは別に報酬金が設定されています。相続人や相続財産調査は20万円〜40万円程度が相場といえるでしょう。

プラスの財産が多く、相続税申告が必要となる場合は税理士に相談しましょう。相続税申告は専門性が高いため、取扱い実績の豊富な税理士を探すことがポイントです。相続税申告の費用相場は、遺産総額の0.5%から1.0%程度です。

不動産の相続登記をしたいときは、司法書士に手続きを依頼できます。相続登記の費用相場は6万円〜9万円程度です。

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相続手続きは期限が定められているものも多く、間に合わないと思わぬ経済的損失をこうむることもあります。しかし、戸籍謄本の取得ひとつをとっても、役所ごとに手続きが異なるため、調べるだけでも大変な手間となります。

相続手続きを何回か経験していて、かつ時間的余裕があるなら自分でするのもひとつの選択ですが、仕事や家庭が忙しく時間がとれない場合や、相続財産が多く遺産分割を慎重に進めたいのであれば、専門家に依頼するほうが賢いでしょう。

(記事は2022年2月1日時点の情報に基づいています)