贈与と譲渡の違い 法律や税務上の扱いの違いをわかりやすく解説

贈与と譲渡は何が違うのでしょうか? 混同されることも多いのですが、実際には法律上や税務上の取り扱いが大きく異なります。相続の手続きで混乱が生じないように、正しい知識を持っておきましょう。今回は贈与と譲渡の相違点をわかりやすく解説しますので、不動産を生前に子どもや孫へ受け渡したい方はぜひ参考にしてみてください。
贈与と譲渡は何が違うのでしょうか? 混同されることも多いのですが、実際には法律上や税務上の取り扱いが大きく異なります。相続の手続きで混乱が生じないように、正しい知識を持っておきましょう。今回は贈与と譲渡の相違点をわかりやすく解説しますので、不動産を生前に子どもや孫へ受け渡したい方はぜひ参考にしてみてください。
贈与とは他人に財産を無償で「あげる」ことです。必ず無償であり、対価が払われることはありません。例えば親が子どもに不動産を「無償であげる」と贈与になります。
譲渡は他人に財産を「譲る」ことです。有償と無償の場合があり、一般には有償のケースが多数です。なお無償譲渡は贈与と同じ意味です。例えば親が子どもに不動産を売ったら「有償譲渡」になります。
贈与と譲渡の違い、一覧表
贈与の場合、対価は支払いません。譲渡の場合、無償譲渡なら対価を支払いませんが、有償譲渡なら支払います。
贈与すると「贈与を受けた側(もらった側)」に「贈与税」がかかります。有償譲渡の場合「譲渡した側(譲った側)」が利益を得たら「譲渡所得税」と「住民税」が発生します。
贈与の場合「贈与契約」を締結します。譲渡の場合、有償なら「売買契約」となり、無償なら「贈与契約」となります。
特定の相続人に高額な財産を贈与すると「特別受益」になります。「特別受益」と評価されると、遺産分割の際に贈与を受けた相続人の相続分を減らす計算(特別受益の持戻計算)を適用して、相続分の調整を行うことができます。そうなると遺産分割協議が紛糾してしまうケースが少なくありません。一方、相当な対価をもって有償譲渡された場合、特別受益になりません。持戻計算は行わず、遺産分割協議が混乱するリスクは低くなります。
相続人や第三者に高額な財産を贈与すると、相続人の「遺留分」を侵害してしまう可能性があります。そうなると侵害された相続人が侵害者(贈与を受けた人)へ遺留分侵害額請求を行い、トラブルになるリスクが発生します。一方、相当な対価をもって有償譲渡された場合、遺留分を侵害しないのでトラブル発生のリスクは下がります。
不動産を贈与すると「贈与」を原因として登記(名義変更)を行います。その際は「贈与契約書」が必要です。有償譲渡した場合には「売買」をもとに登記し、「売買契約書」が必要となります。
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不動産を次世代に受け継がせる方法として、贈与や譲渡以外に「相続」があります。
相続させる場合、贈与や譲渡と違って、生前に子どもなどの相手と契約を締結する必要はありません。もともとの所有者が死亡すると自然に「相続人」へ引き継がれます。
相続の場合、民法が定める法定相続人が財産を相続するため、先代が「誰に相続させるか」指定できません。相続人が複数いると「法定相続分」に応じた相続分のみが決まるので、誰が不動産を相続するかは相続人全員が話し合って決める必要があります。
先代が不動産の引き継ぎ人を指定したい場合には「遺言書」を作成しましょう。遺言書で特定の相続人や第三者に財産を引き継がせると書いておけば、死亡と同時にその人に財産を引き継がせられます。
相続時に発生する税金は「相続税」です。相続税には高い基礎控除が認められるので、他に高額な財産がなければ、譲渡や贈与に比べて節税できる可能性もあります。不動産を次世代に引き継がせるときには「贈与」「譲渡」「相続」のうち、もっとも有利かつトラブルにつながりにくい方法を選択しましょう。自己判断すると予想外のリスクが発生する可能性があるので、迷ったときには弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。
子どもなどの次世代の人へ不動産などの財産を贈与するときには、以下の点に注意してください。
有償であれ無償であれ、譲渡するなら必ず契約書を作成しましょう。有償なら「売買契約書」、無償なら「贈与契約書」が必要です。親族間取引の場合、契約書を作成せずに済ませてしまうケースもありますが、そうすると後に証拠が残らずトラブル要因になるので注意しましょう。
有償譲渡するなら対価の支払いを受けなければなりません。できれば振り込み送金にしましょう。その方が形に残って、後に「有償譲渡(売買)した」と証明しやすくなりますし、代金額も明らかになります。もしも現金手渡しするなら、必ず「領収証」を発行しましょう。入金の記録を残しておかないと、後に「実際には代金を払っていないから贈与である」と主張されて「特別受益」や「遺留分」のトラブルになるリスクが高まります。
不動産の売買を行ったら、早めに名義変更の登記をしましょう。親族間取引の場合、登記をせずに放置してしまうケースも少なくありません。そうなると、後に「いざ登記」しようとしたとき必要書類を揃えにくくなってトラブルになる可能性があります。自分で登記するのが負担になる方は司法書士に依頼しましょう。
有償譲渡によって譲渡人に譲渡所得税が発生する場合には、必ず翌年度2月16日から3月15日までの間に「確定申告」しましょう。3月15日までに納税も済ませなければなりません。申告しないと税金の支払い遅延状態になってしまうので要注意です。
財産を贈与するときには以下の点に注意しましょう。
贈与の場合にも必ず契約書を作成しなければなりません。親子間贈与の場合、どうしても契約書を作成せずにそのままにしてしまう傾向がありますが、そうなると、後に「贈与を証明」できなくなってしまうリスクが高まります。相続税の税務調査が入ったときに贈与が否認されて高額な相続税がかかる事例も多いので、契約書は必ず作成してください。
不動産を贈与したら、早めに贈与に基づく名義変更登記をしましょう。親族間贈与の場合、契約後も登記せずに放置してしまいがちですが、そうなると書類を揃えるのが大変になってしまうリスクが高まります。
贈与契約書を紛失して親が亡くなってしまったら、もはや贈与登記ができず不動産が遺産分割の対象になってしまう可能性もあります。面倒でも贈与契約を締結したらすぐに登記申請しましょう。
贈与を受けたら「贈与税」が発生します。相続時精算課税制度を適用して贈与税を納税しなくてよいケースも申告は必要です。
贈与した翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書を提出し、必要に応じて納税まで済ませましょう。
不動産を次世代へ受け継がせる方法には贈与、譲渡、相続の3種類があります。対価の支払い、発生する税金の種類、財産移転のタイミングなど、それぞれ違いがあり「どの方法が最適か」は個別の状況によって異なります。
自己判断するとトラブルのもとになるので、迷ったら専門家へ相談しましょう。法律については弁護士に、税務については税理士に、不動産の登記については司法書士に相談すればうまく解決してもらえます。不動産などの資産をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。
(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)
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