目次

  1. 1. 不動産の贈与と譲渡の基本知識
    1. 1-1. 不動産の贈与とは:「無償であげる」こと
    2. 1-2. 不動産の譲渡とは:「有償で譲る」こと
  2. 2. 不動産の贈与と譲渡の違い
    1. 2-1. 対価|贈与はなし、譲渡はあり
    2. 2-2. 税金|贈与は贈与税、譲渡は譲渡所得税
    3. 2-3. 契約|贈与は贈与契約、譲渡は売買契約
    4. 2-4. 特別受益|贈与は特別受益になりうる、譲渡はならない
    5. 2-5. 遺留分|高額な贈与は遺留分侵害の可能性、譲渡はリスク低い
    6. 2-6. 登記|贈与は贈与契約書、譲渡は売買契約書
  3. 3. 不動産の相続と贈与、譲渡の違い
    1. 3-1. 相続の場合、契約は不要
    2. 3-2. 遺言書を書かないと「引き継ぐ人」を指定できない
    3. 3-3. 相続で発生する税金は「相続税」
  4. 4. 不動産を譲渡するときの注意点
    1. 4-1. 所有期間が5年を超えているか
    2. 4-2. 契約書を必ず作成する
    3. 4-3. 代金支払い方法
    4. 4-4. 登記
    5. 4-5. 確定申告
  5. 5. 不動産を贈与するときの注意点
    1. 5-1. 契約書を必ず作成する
    2. 5-2. 登記は早めにする
    3. 5-3. 贈与税の申告を行う
  6. 6. 不動産を相続で引き継ぐ時の注意点
    1. 6-1. 遺言書を作成し、「誰が引き継ぐのか」を指定する
    2. 6-2. 相続税対策も検討を
  7. 7. まとめ

「相続会議」の弁護士検索サービス

贈与も譲渡も、生前に他人に財産を受け渡す点では共通しています。不動産でいえば、所有する土地や建物の権利を他人に渡すことです。違いは以下の通りです。

贈与とは他人に財産を無償で「あげる」ことです。必ず無償であり、対価が払われることはありません。例えば親が子どもに不動産を「無償であげる」と贈与になります。

譲渡は他人に財産を「譲る」ことです。有償と無償の場合があります。なお無償譲渡は贈与と同じ意味です。例えば親が子どもに不動産を売ったら「有償譲渡」になります。

このように譲渡は「有償」「無償」を問わず権利を譲ることを指しますが、不動産の場合は通常、「譲渡」は「有償で譲る」ことを意味します。

従って、以下の説明からは「譲渡=有償譲渡」の意味で使っていきます。

贈与と譲渡の違いについて、一覧表を以下にまとめました。

【表】不動産の贈与と譲渡の一覧図
不動産の贈与と譲渡の違いの一覧表。対価のある・なしが大きな違いで、税金も違ってきます。

それぞれの項目について詳しく説明します。

贈与の場合、対価は受け取りません。譲渡の場合は「売却」と同じであり、対価を受け取ります。

贈与すると「贈与を受けた側(もらった側)」に「贈与税」がかかります。譲渡の場合「譲渡した側(譲った側)」が利益を得たら「譲渡所得税」(所得税と住民税)が発生します。

なお、不動産の譲渡による利益を譲渡所得と呼び、以下のように計算します。

譲渡所得=譲渡によって得た金額ー(取得費用+譲渡にかかった費用)ー特別控除額

不動産の取得費がわからない場合は、売却金額の5%を取得費とします。

贈与の場合「贈与契約」を締結します。譲渡の場合、「売買契約」となります。

特定の相続人に高額な財産を贈与すると「特別受益」になります。「特別受益」と評価されると、遺産分割の際に贈与を受けた相続人の相続分を減らす計算(特別受益の持戻計算)を適用して、相続分の調整を行うことができます。そうなると遺産分割協議が紛糾してしまうケースが少なくありません。

一方、相当な対価をもって譲渡された場合、特別受益になりません。特別受益の持戻計算は行う必要はなく、遺産分割協議が混乱するリスクは低くなります。

相続争いを招きやすい「特別受益」とは 計算方法も解説

遺留分とは、一定の相続人が最低限の遺産をもらえる権利です。相続人や第三者に高額な財産を贈与すると、相続人の「遺留分」を侵害してしまう可能性があります。

そうなると侵害された相続人が侵害者(贈与を受けた人)へ遺留分侵害額請求を行い、トラブルになるリスクが発生します。一方、相当な対価をもって譲渡された場合、遺留分を侵害しないのでトラブル発生のリスクは下がります。

遺留分とは 相続で最低もらえる遺産 請求できる相続人の範囲・割合・計算方法を解説

不動産を贈与すると「贈与」を原因として登記(名義変更)を行います。その際は「贈与契約書」が必要です。譲渡した場合には「売買」をもとに登記し、「売買契約書」が必要となります。

不動産を次世代に受け継がせる方法として、贈与や譲渡以外に「相続」があります。

相続させる場合、贈与や譲渡と違って、生前に子どもなどの相手と契約を締結する必要はありません。もともとの所有者が死亡すると自然に「相続人」へ引き継がれます。

相続で不動産の引き継ぎ人を指定したい場合には、「遺言書」を生前に作成しましょう。遺言書で特定の相続人や第三者に財産を引き継がせると書いておけば、死亡と同時にその人に財産を引き継がせられます。

一方、遺言書がない場合、民法が定める法定相続人が財産を相続するため、「誰に相続させるか」指定できません。相続人が複数いると「法定相続分」に応じた相続分のみが決まるので、誰が不動産を相続するかは相続人全員が話し合って決める必要があります。

相続時に発生する税金は「相続税」です。相続税には高い基礎控除が認められるので、他に高額な財産がなければ、譲渡や贈与に比べて節税できる可能性もあります。

なお、相続した不動産を相続税の申告期限から3年以内に売却すると、譲渡所得税が節税になる特例「相続税の取得費加算」が利用できます。

相続した不動産を3年以内に売却すれば節税になる「相続税の取得費加算」とは?

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子どもなどの次世代の人へ不動産などの財産を譲渡するときには、以下の点に注意してください。

不動産の所有期間が「譲渡する年の1月1日現在で5年を超えている」かどうかの確認が必要です。5年を超えていれば譲渡所得にかかる税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、5年以下だと税率は39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)と大きく違ってきます。

譲渡するなら必ず契約書を作成しましょう。親族間取引の場合、契約書を作成せずに済ませてしまうケースもありますが、そうすると後に証拠が残らずトラブル要因になるので注意しましょう。

譲渡するなら対価の支払いを受けなければなりません。できれば振り込み送金にしましょう。その方が形に残って、後に「有償譲渡(売買)した」と証明しやすくなりますし、代金額も明らかになります。もしも現金を手渡しするなら、必ず「領収証」を発行しましょう。

入金の記録を残しておかないと、後に「実際には代金を払っていないから贈与である」と主張されて「特別受益」や「遺留分」のトラブルになるリスクが高まります。

不動産の売買を行ったら、早めに名義変更の登記をしましょう。親族間取引の場合、登記をせずに放置してしまうケースも少なくありません。そうなると、後に「いざ登記」しようとしたとき必要書類を揃えにくくなってトラブルになる可能性があります。自分で登記するのが負担になる方は司法書士に依頼しましょう。

不動産の譲渡によって、譲渡人(不動産を譲り渡した側)に利益が出た場合は譲渡所得税が発生するので、必ず翌年度2月16日から3月15日までの間に「確定申告」しましょう。3月15日までに納税も済ませなければなりません。申告しないと税金の支払い遅延状態になってしまうので要注意です。

不動産を贈与するときには以下の点に注意しましょう。

贈与の場合にも必ず契約書を作成しなければなりません。親子間贈与の場合、どうしても契約書を作成せずにそのままにしてしまう傾向がありますが、そうなると、後に「贈与を証明」できなくなってしまうリスクが高まります。相続税の税務調査が入ったときに贈与が否認されて高額な相続税がかかる事例も多いので、契約書は必ず作成してください。

不動産を贈与したら、早めに贈与に基づく名義変更登記をしましょう。親族間贈与の場合、契約後も登記せずに放置してしまいがちですが、そうなると書類を揃えるのが大変になってしまうリスクが高まります。

贈与契約書を紛失して親が亡くなってしまったら、もはや贈与登記ができず不動産が遺産分割の対象になってしまう可能性もあります。面倒でも贈与契約を締結したらすぐに登記申請しましょう。

贈与を受けたら「贈与税」が発生します。相続時精算課税制度を適用して贈与税を納税しなくてよいケースも申告は必要です。

贈与した翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書を提出し、必要に応じて納税まで済ませましょう。

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不動産は所有者の死後、誰が相続するのかでトラブルになりがちです。また、「とりあえず相続人みんなで共有」すると、後々になって「売りたいときに売れない」などの問題につながる恐れがあります。

こうした事態を防ぐためにも、遺言書を作成し、不動産を引き継がせたい人を明記しましょう。なお遺言書は要式を守らないと無効になる恐れもありますので、その点は注意して下さい。

【関連】遺言書の書き方とひな形 守るべき要件から注意点までわかりやすく解説

不動産を相続させる上で、注意したいのは相続税の節税につながる制度の要件です。

例えば、「小規模宅地等の特例」を活用すれば、土地の相続税評価額を最大8割減らせます。ただし、「亡くなった人の配偶者や、同居していた子どもが相続した場合」などの条件があります。遺言書で不動産を引き継ぐ場合、指定した相続人がこうした制度を活用できるかどうか確認しましょう。

【関連】小規模宅地等の特例 評価額を引き下げ相続税節税 適用条件を解説

不動産を次世代に引き継がせるときには「贈与」「譲渡」「相続」のうち、もっとも有利かつトラブルにつながりにくい方法を選択しましょう。ただし、「どの方法が最適か」は個別の状況によって異なります。自己判断すると予想外のリスクが発生する可能性があるので、迷ったときには専門家に相談しましょう。

法律については弁護士に、税務については税理士に、不動産の登記については司法書士に相談すればうまく解決してもらえます。不動産などの資産をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。

(記事は2022年11月1日時点の情報に基づいています)

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