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16.信託の税務の理解

 信託における税務は複雑で不確定要素が多いので、リスクが高いとする専門家もいるようですが、考え方としては非常にシンプルです。

 原則として、従来の所有者(委託者)から財産権が実質的に他者へ移ったかどうかで、課税の有無を判断します。つまり、「信託設定時」「信託期間中」「信託終了時」に、誰が信託財産を実質的に保有しているかを掌握できていれば、言い替えると、受益者または残余財産の帰属先が誰になるかを見極めていれば、税務的なリスクはありません。

 具体的には、委託者と受益者が異なる信託(他益信託)の設定をする場合、信託が発動した時点で、信託財産(所有権から信託受益権に転換された財産権)は、委託者から受益者に移ったことになります。信託契約により、委託者の生きている間に信託が発動すれば、生前に無償で財産権が移ったとして「贈与税」の課税対象になります。正確には贈与契約に基づく財産権の移動ではないので、「みなし贈与」、つまり贈与に準じて課税されることになります。

 また、信託発動時には「委託者=受益者」だったとしても、途中で受益者が変更する場合があります。この場合も、委託者が生きている間に無償で変わるなら、前述の通り「みなし贈与」とされ贈与税の対象になります。

 受益権(受益者たる地位ともいえる)が対価を伴って移転すれば、信託財産が売買された場合と同様の取扱いになるので、「譲渡所得税」の課税対象とされます。受益者の死亡により受益者が交代する場合は、「死亡」を原因として財産権が移転するので、「相続税」の課税対象になります。

 この原則を理解しておけば、信託に関する税務は必要最低限理解できるでしょう。

次回の記事では、自分が亡くなったあとも我が子に毎月一定額ずつ振り込める「生命保険信託」について解説します。

この記事は、「相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本」(近代セールス社)から転載しました。