親族で誰かが亡くなったとき、まず気になるのは「誰が遺産(相続財産)を引き継ぐのか」という点ではないでしょうか。今回は「相続人」「被相続人」などの用語解説を含め、誰が遺産を引き継ぐのかについて税理士が解説します。

「誰が遺産を受け取れるか」は民法で決まる

「人が亡くなると、親族内の誰かが遺産を受け取れる」ことは、よく知られていますが、「『誰が』遺産を受け取れるのか」について正確に理解している人は少ないようです。

「亡くなった人の遺産をめぐって親族同士が争う」というストーリーのテレビドラマを時々目にしますが、実際は民法で遺産を引き継ぐ人の範囲や順番、引き継ぐ割合(相続分)などのルールは決まっています。遺産の分け方について話し合う遺産分割協議も、民法のルールを意識して進みます。つまり、民法のルールを理解すれば、どのような場合に誰が遺産の引き継ぐのかを知ることができるのです。

「財産を遺す人」「財産を引き継ぐ人」に関する民法のルールについて解説します。

被相続人とは誰のことを言うのか

まず押さえておきたいのが「被相続人」です。被相続人とは、相続される人、つまり死亡により財産を相続される人を指します。ただ、ここで言う「死亡」とは、自然死のみを指すのではありません。次のような場合、法律上では死亡したものとみなすため、相続が始まります。

  • 失踪宣告がされた場合
  • 認定死亡

失踪宣告とは、ある人が行方不明になって、生死が分からないまま7年が過ぎたときに、利害関係者による請求に応じて家庭裁判所が出すものです。失踪宣告がされると、民法上では死亡と同様の扱いとなります。認定死亡とは、災害や事故により死亡した可能性が極めて高い場合に、取り調べを担当した官公署により死亡と認定されることをいいます。公的機関により死亡が認定されると、戸籍に「死亡」の記載がされます。認定死亡は民法上ではなく戸籍法上の死亡ですが、失踪宣告と同様、相続が始まります。

相続人とは財産を引き継ぐ人

次に「相続人」です。相続人とは、被相続人の財産を承継(相続)する人を言います。相続では、原則として遺言書の内容が優先されます。つまり遺言書で「誰に○○という財産(あるいは△%という割合)を渡す」という指示があれば、その指示が優先されます。しかし、遺言書がない場合、あるいは遺言書に指定のない遺産の相続を考える場合には、法律で定めた相続人が遺産を相続することになります。民法では「誰が相続人になれるのか」を定めているため、相続人を「法定相続人」とも呼びます。

相続人には被相続人の配偶者および被相続人と血のつながりのあった人(血族)がなりますが、血族については相続人になる順番や受け取れる遺産の割合(相続分)に一定のルールがあります。

●配偶者の取り扱い

配偶者は相続開始時に存在していれば常に相続人になります。なお、ここでいう配偶者は「法律婚をしている配偶者」に限られるので注意が必要です。

●相続の順位と法定相続分

被相続人の血族は相続人になります。ただし「被相続人に近しい人」が先の順位となります。具体的な順位は次のようになります。

【血族における相続順位】
第1順位:直系卑属(子や孫、ひ孫など)
第2順位:直系尊属(父母や祖父母、曾祖父母など)
第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥姪)

なお、配偶者と血族が相続人となる場合には、相続人の順位に応じて、相続分が変わります。具体的には以下のようになります。

【相続人となる血族が第1順位の場合】
配偶者が2分の1、直系卑属(子や孫)が2分の1

相続人の順位に応じて、相続分が変わります

【相続人となる血族が第2順位の場合】
配偶者が3分の2、直系尊属(父母や祖父母)が3分の1

相続人の順位に応じて、相続分が変わります。子2人だけで、そのうち1人が亡くなっている場合

【相続人となる血族が第3順位の場合】
配偶者が4分の3、直系卑属(兄弟姉妹)が4分の1

相続人の順位に応じて、相続分が変わります

たとえば、被相続人死亡時に生きている親族が配偶者と子と孫、そして父母であれば、配偶者と子が相続人になり、それぞれの相続分が2分の1ずつとなります。このとき、孫と父母は相続人になれません。また、血族側の相続人が複数いる場合には、その人数で相続分を分けます。子が1人ではなく2人の場合、2分の1の相続分を2人で分けるため、子1人当たりの相続分は4分の1となります。

●孫が代わりに相続する代襲相続

もし被相続人の死亡時に存在している親族が配偶者と孫、父母だったら誰が相続人になるのでしょうか。

配偶者と第2順位の父母が相続人になりそうにも感じますが、民法のルールによれば、相続人になるのは配偶者と孫です。孫は既に亡くなっている子に代わって相続人になるのです。これを「代襲相続」といいます。

代襲相続とは、本来生きていれば相続人になるはずの人(被代襲者)が相続開始以前に死亡している場合、その人の直系卑属(代襲者)が代わりに相続分を引き継ぐことをいいます。なお、代襲相続が発生するのは被代襲者の死亡だけではありません。後述する「相続欠格」「相続廃除」により相続権を失った場合も代襲相続の要因となります。

●養子がいる場合

養子も実子と同様の扱いとなり、相続人となります。注意したいのが「普通養子」と「特別養子」の違いです。普通養子の場合、養親との親族関係が新たに発生する一方、実親との親族関係も継続します。つまり、養親と実親両方の推定相続人になります。しかし特別養子の場合、養親との親族関係が発生したら実親との親族関係は途絶えるため、養親の推定相続人にはなりますが、実親の推定相続人にはなりません。

●相続人が未成年の場合

相続人が未成年者の場合には、代理人を立てなくてはなりません。未成年者は原則として、遺産分割や相続といった法律行為を単独で行うことが民法上認められていないからです(ただし、未成年で結婚している場合などは、成人とみなされることがあります)。

通常は親が子の法定代理人ですが、相続で「配偶者と未成年者の子が同時に相続人になる」場合、親(配偶者)は子の代理人になれません。相続において親と子が利益相反関係になるからです。この場合、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなくてはなりません。選任された特別代理人が子の代わりに遺産分割協議に参加することになります。

●胎児は相続人になれるか?

相続開始時に被相続人の子や孫、兄弟姉妹などにあたる胎児がいた場合、その胎児も相続人になります。民法上は胎児は「すでに生まれたもの」として取り扱われるからです。ただし、この取り扱いは後日無事に生まれた場合に限ります。流産・死産・中絶の場合には最初からいないものとされ、相続人にはなりません。

●行方不明者がいる場合

相続人に行方不明者がいる場合には、相続人の戸籍の附票から住所を探し、直接訪ねるかまたは手紙を出すなどして連絡する努力をすることが必要です。それでも連絡がつかない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行います。家庭裁判所の許可が下りれば、この不在者財産管理人が相続人である行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することになります。なお、行方不明者がどうしても見つからない場合、実際には弁護士などの専門家に相談し、対処を依頼することが一般的です。

●遺言書もなく、相続人もいない場合

遺言書もなく、相続人もいない場合には、家庭裁判所により相続財産管理人が選任されます。選任する旨が2か月間公告された後、相続財産管理人が相続人や相続債権者などを公告により探索します。2か月から6か月、この公告をしてもなお相続人が現れなければ、「相続人の不存在」が確定し、遺産は国庫に帰属することになります。

なお、相続人探索の公告期間に相続人としての権利を主張する人が現れない場合、被相続人の特別縁故者(内縁の妻など)が相続財産の分与を家庭裁判所に申し立てることができます。相続財産分与が認められれば、特別縁故者は清算後に残った相続財産の全部または一部を取得することができます。

遺産相続できそうでできない人とは

逆に、遺産相続できない人はどのような人でしょうか。ドラマでは「親族なら誰でも遺産もらえそう」に見えます。しかし、これまで見てきたとおり、配偶者と一定の血族以外は相続人になれません。つまり、以下に該当する人は「遺産がもらえそうでもらえない人」なのです。

●そもそも相続権がない人

被相続人の親族であっても、先にあげたの法定相続人に該当しない人は、原則として遺産は受け取れません。遺言書により遺産の受取人として指定されたのなら、後に説明する「受遺者」として遺産を受け取ることはできます。そうでなければ、生前どんなに被相続人と懇意にし、尽くしたとしても、遺産は1円も受け取れません。

「被相続人と縁があっても相続人になれない人」は次のような人です。

  • 内縁の妻
  • 離婚した元配偶者
  • 養子縁組していない配偶者の連れ子
  • 被相続人の姻族(長男の嫁や配偶者の親など)
  • 相続の順位により法定相続人から外れる人(子が生きている場合の父母や兄弟姉妹など)

ただし、先述のように遺言書も相続人もない場合、一定の手続きを経ればこれらの人でも特別縁故者として相続財産を引き継ぐことができる場合もあります。また、民法(相続法)の改正により、2019年7月1日以降、被相続人の生前に介護や看護に尽力した長男の嫁など一定の親族は、要件を満たせば特別寄与料を相続人に請求できるようになりました。

●相続人であっても相続権を剝奪される相続欠格

相続欠格とは、以下の欠格事由に該当する相続人の相続権を、手続きなしで剥奪する制度をいいます。相続欠格事由に該当する人は、配偶者や子などであっても相続人になりません。

【欠格事由】

  • わざと被相続人や他の相続人になりうる人を死亡させた、あるいは死亡させようとしたために刑罰を受けたこと
  • 被相続人が殺害されたことを知っていながら、告発・告訴しなかったこと
  • 詐欺や強迫によって、被相続人による遺言書の作成・撤回・取消・変更を操作したこと、あるいはわざと妨げたこと
  • 被相続人の遺言書に内容を偽造・変造したり、破棄したり、隠したりしたこと

民法は、相続において被相続人の意思を最大限尊重するようにしています。その被相続人の意思を無視あるいは民法が目指す相続のあり方をねじまげるべく法に触れるようなことをした人は相続権を失います。

●被相続人が相続権を剝奪する相続廃除

相続廃除された人も相続人になりません。相続廃除とは、被相続人の請求にもとづき、家庭裁判所が相続人の相続権を剥奪する制度をいいます。いずれ被相続人になる人は、次の廃除事由がある場合、廃除の請求を生きている間に(あるいは遺言により)家庭裁判所に行うことができます。

  • 推定相続人(将来の相続において相続人になりうる人)が被相続人に対して虐待をし、又は重大な侮辱を加えたこと
  • 推定相続人に著しい非行があったこと

なお、相続廃除の対象になる人は、配偶者と第一順位・第二順位の相続人に限られます。第三順位である兄弟姉妹は対象外です。

●相続放棄した人

相続権の放棄、つまり、被相続人の現預金や土地などのプラスの財産だけでなく借金や未納税金などのマイナスの財産も含めたすべての財産に関する相続を放棄した人も相続人になりません。相続放棄を行うならば、相続開始から3か月以内に家庭裁判所にその旨を申し立てなくてはなりません。

なお、相続放棄は先に説明した代襲相続の要因になりません。つまり、被相続人の子が相続放棄をした場合、被相続人の孫は相続放棄をした子に代わって相続人になることはできません。

相続人でなくても財産を受け取れる人

被相続人が作成した遺言書により遺産の受取人として指定された人(受遺者)は相続人でなくても、遺産を受け取れます。

ただし、2つ注意点があります。1つは、「遺言書の形式が民法に規定された方式に従っていること」です。規定された方式に則っていなければ、遺言書の内容は無効となります。もう1つは、法定相続人の遺留分(一定の法定相続人について民法により保障された相続分)を侵害できないことです。遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、受遺者は法定相続人からの請求に応じ、遺留分を彼らに支払わなくてはなりません。

相続人や受遺者を把握するための手続き

相続が発生したら誰が相続人や受遺者になるのかを把握しなくてはなりません。具体的な手続きは次のようになります。

●遺言書の調査・検認

まず行うのが遺言書の有無の確認です。自宅を探すのはもちろん、銀行や弁護士・司法書士・税理士に預けられている可能性も検討しましょう。なお、遺言書が公正証書遺言の場合、公証役場で存在の有無を照会することができます。さらに、民法(相続法)の改正により2018年以降、法務局で自筆証書遺言が保管できるようになりました。ありとあらゆる可能性を探り、徹底的に遺言書の有無を確認しましょう。

見つかった遺言書が公正証書遺言以外の場合には、開封など一切せずに速やかに家庭裁判所に提出し、検認の申し立てを行います。検認とは、遺言書の内容を確認し相続人に通知するとともに、内容の変造・偽造を防止するための手続きです。

●相続人の調査・確定

遺言書の調査・検認と同時進行で推定相続人(相続人になる可能性のある人)をくまなく調べる作業を行う必要があります。家族形態が複雑化している昨今、どこに相続権を有する人がいるか分からないからです。被相続人の前妻との間に子がいる、あるいは生前養子縁組をした子がいる可能性もあります。推定相続人は戸籍謄本を取得して確認します。取得する戸籍謄本は被相続人が生まれてから死ぬまでのすべての戸籍謄本です。相続人については全員分の戸籍謄本を取得します。被相続人の戸籍上で新たな相続人が見つかった場合あるいは相続人の中に行方不明者がいる場合、その戸籍謄本とともに戸籍の附票を取得して連絡先を突き止め、相手に連絡しなくてはなりません。

(記事は2019年9月1日時点の情報に基づいています)