目次

  1. 1. 相続で注意すべきポイント6つ
    1. 1-1. ポイント1:遺言書の有無
    2. 1-2. ポイント2:相続順位と法定相続分
    3. 1-3. ポイント3:代襲相続
    4. 1-4. ポイント4:養子縁組の有無
    5. 1-5. ポイント5:きょうだいの相続人は「血のつながり」を重視
    6. 1-6. ポイント6:相続放棄・相続欠格・相続廃除
  2. 2. 家族構成別の相続パターン
    1. 2-1. パターン1:配偶者と2人の子と亡くなった子の子(孫)
    2. 2-2. パターン2:再婚相手(相続開始時の配偶者)の連れ子がいる場合
    3. 2-3. パターン3:被相続人と両親が同じ弟と異父母の兄がいる場合
    4. 2-4. パターン4:子供3人のうち1人が相続放棄。相続放棄した子に子(被相続人の孫)がいる場合
    5. 2-5. パターン5:内縁の妻とその子がいる場合
    6. 2-6. パターン6:相続人に行方不明者がいる場合
    7. 2-7. パターン7:相続人もおらず、遺言書もない場合
  3. 3. 「寄与分」「特別受益」「遺留分」に注意
    1. 3-1. 寄与分とは
    2. 3-2. 特別受益とは
    3. 3-3. 遺留分とは
  4. まとめ 弁護士や税理士らに相談を

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相続パターンは家族構成や状況によって大きく変わります。押さえておくべきポイントは次の6つです。

最初に確認すべきなのは遺言書の有無です。相続では原則、遺言書の内容が優先されます。遺言書が保管されている可能性のある場所として、亡くなった人(被相続人)の自宅や経営する会社・事務所の他、銀行の貸金庫や信託銀行、公証役場があります。また、2020年7月10日以降は、法務局でも自筆証書遺言が保管できるようになります。

遺言書がない場合、あるいは遺言書の指定が財産の一部のみである場合、遺言書による指定のない財産は民法に定める相続人(法定相続人)同士の協議により遺産分割することとなります。法定相続人になるのは、配偶者および被相続人の血族のうち民法で定められた次の順位で先順位となった人です。

第一順位:直系卑属(子や孫)およびその代襲相続人
第二順位:直系尊属(父母や祖父母)
第三順位:兄弟姉妹およびその代襲相続人

さらに、相続順位により、民法に定める相続分(法定相続分)は以下のように変わります。遺産分割協議で誰がどれくらい相続するかは自由に決められますが、協議が整わない場合は調停等で法定相続分に従って相続分が決定されます。相続分については相続税の計算でも用いるので知っておくとよいでしょう。

【配偶者と子が相続人の場合】
配偶者に2分の1、子に2分の1

【配偶者と父母(あるいは祖父母)が相続人の場合】
配偶者に3分の2、父母(あるいは祖父母)に3分の1

【配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合】
配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1

法定相続分に従って相続分が決定されます。

配偶者と子が相続人の場合は
配偶者に2分の1、子に2分の1

配偶者と父母(あるいは祖父母)が相続人の場合は
配偶者に3分の2、父母(あるいは祖父母)に3分の1

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は
配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1

相続順位に従い法定相続人が決定されますが、ここで注意すべきは代襲相続です。

「代襲相続」とは、生きていれば相続権がある人が既に亡くなっている場合に、その直系卑属である子などがその地位を引き継いで相続権を持つことをいいます。代襲相続人になるのは、被相続人の子や兄弟姉妹の直系卑属です。つまり、相続開始時に生存しているのが被相続人の孫と父母の場合、法定相続人になるのは父母ではなく孫(代襲相続人)なのです。

養子縁組の有無も確認する事項です。養子縁組とは、具体的な血縁関係とは無関係に法律上の親子関係を発生させることをいいます。相続においては養子も実子と同じ扱いとなります。

被相続人に再婚相手がいる場合、連れ子との間に養子縁組が成立しているか否かが重要になります。相続の開始時にすでに連れ子と被相続人が養子縁組していれば、配偶者だけでなく連れ子も相続人になります。しかし、被相続人と連れ子との間に養子縁組関係がなければ、相続人は配偶者のみになります。

被相続人のきょうだいが相続人になる場合、「被相続人との間にどれくらいの血のつながりがあるか」が問題となります。被相続人ときょうだいの父母が同じ場合は先述の相続分が適用されます。しかし、異父母きょうだいなどのように被相続人と兄弟姉妹が父または母のどちらかだけが同じ場合、相続分は父母がともに同じきょうだいの相続分の2分の1が法定相続分になります。

法定相続人だからといって必ず誰もが相続するとは限りません。相続放棄・相続欠格・相続廃除で相続しないこともあり得ます。相続人に相続権があるかどうかも確認しましょう。

相続放棄とは、相続すべき財産・債務のすべての相続を放棄することです。相続放棄は相続開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申立を行うことが必要ですが、この手続きが完了した場合、放棄した人は相続人から外れることとなります。

相続欠格とは、相続分を操作しようと犯罪を行った場合などで、民法上の欠格事由に相続人が該当する場合、特段の手続きなく相続権を失わせる制度です。相続廃除とは、被相続人に対する虐待や著しい侮辱などがあった場合、被相続人が家庭裁判所への申立や遺言書により相続人の相続権を奪う制度をいいます。

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以上を踏まえつつ、ここからパターン別の相続についてみていきます。なお、いずれのパターンにおいても、遺言書はなかったことを前提とします。

被相続人には3人の子がおり、うち1人はすでに亡くなっているものの孫がいるケースです。この場合、配偶者と2人の子と亡くなった子の子、つまり孫(代襲相続人)が相続人になります。この場合、被相続人の父母が顕在であっても、父母に相続権はありません。

被相続人が再婚相手との間に実子が1人おり、さらに再婚相手には連れ子がいて、被相続人が生前その子を扶養していた場合です。この場合、連れ子と同居していたかや、戸籍上の子にしていたかどうかではなく、養子縁組をしていたかどうかがカギになります。もし、連れ子と養子縁組していた場合、相続人は配偶者・実子・連れ子となります。しかし、連れ子と養子縁組をしていない場合には、相続人は配偶者と実子になります。

被相続人のきょうだいが相続人になる場合には、その兄弟姉妹と父母が同じかどうかで相続分が分かれます。例えば、被相続人に異母兄弟の兄と、両親とも同じ弟がいた場合、異母きょうだいの兄の相続分は、両親とも同じ弟の相続分の2分の1になります。

相続人である3人の子どものうち、1人が相続放棄した場合、残り2人が相続人となります。ただ、相続放棄については「最初から相続人として存在しなかった」と扱われるため、代襲相続も発生しません。したがって、相続放棄した子どもの子(孫)が代襲相続人になることもありません。

ただ、相続税法上は、基礎控除額・死亡保険金の非課税枠・死亡退職金の非課税枠の計算の際必要となる法定相続人の数には、相続放棄した人も含めます。つまり、相続放棄していても相続税の計算の上では法定相続人として数えます。

内縁の妻とその妻との間に子がいる場合、2人とも相続人になれそうな気がしますが、民法のルールにのっとり、次のような取り扱いになります。

・内縁の妻…法律婚による配偶者ではないため、相続人になれません。ただし、他に法律婚による配偶者や血族の推定相続人がいない場合、特別縁故者として被相続人の財産を取得する可能性はあります。

・内縁の妻との間にできた子…被相続人が生前に認知もしくは遺言認知を行った場合、または内縁の妻が死後認知請求の訴えを起こして認められた場合には、その子は実子として相続人になります。認知がなければ相続人にはなれませんが、内縁の妻と同じく特別縁故者として被相続人の財産を取得する可能性はあります。

相続人のうちに行方不明者がいる場合には、相続人の戸籍の附表から住所を探し、直接訪問や手紙などで連絡をとる努力をしなくてはなりません。どうしても連絡がつかない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てを行います。家庭裁判所の許可が下りたら、不在者財産管理人が行方不明者である相続人の代わりに遺産分割協議に参加することになります。

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おひとり様が増えている昨今、今後は「遺言書も相続人もない」というケースが増えてくるかと思います。この場合の相続はどうなるのでしょうか。

この場合は家庭裁判所により相続財産管理人が選任されます。選任する旨が2か月間公告された後、相続財産管理人が相続人や相続債権者などを公告で探します。この公告を2か月から半年行ってもなお相続人が現れなければ、相続人の不存在が確定し、遺産は国庫に帰属します。

ただ、被相続人に推定相続人になるべき配偶者や血族として相続権を主張する人が公告期間中に現れなかった場合、内縁の妻や養子縁組していない連れ子など、被相続人と特別の関係にあった者が「特別縁故者」として相続財産の分与を家庭裁判所に申し立てることができます。申し立てが認められれば、特別縁故者は清算後に残った相続財産の全部または一部を取得することができます。

生前贈与が増加し、核家族化や進んでいる昨今の相続の現場では、意識しておきたいものが3つあります。それは「寄与分」「特別受益」「遺留分」です。

寄与分とは、被相続人の生前、相続人が被相続人の財産の維持や増加に対し特別の貢献をした程度をいいます。具体的には、以下のようなものが寄与分に当たります。

長男が父の事業を無償で手伝ってきた(家業従事
次男が母の事業に対し資金提供をした(金銭等出資
長女が父の介護に仕事を辞めて尽力した(療養看護

この他、「扶養」「財産管理」も寄与分に当たります。ただ、いずれも被相続人の財産の維持や増加と明確な因果関係がなくてはなりません。さらに、「無償性」「継続性」「専従性」「被相続人との身分関係(配偶者、子、兄弟姉妹など)」がないと認められません。

なお、寄与分は原則として相続人以外には認められません。また、相続放棄や相続欠格、相続廃除により相続権を失った人についての寄与分も認められません。

遺言書で寄与者に対する寄与分を定めることはできません。遺言書による遺贈があれば、その遺贈が寄与分より優先されます。遺贈分を差し引いた残りの財産から寄与分について考えることになります。寄与分の主張は相続人同士の遺産分割協議の中で行われ、認められない場合には審判で定めることとなります。

寄与分が発生している世帯の各相続人の相続分の計算は次のようになります。

寄与分がある相続人の相続分:〔(相続財産-寄与分)×法定相続分〕+寄与分
寄与分がない相続人の相続分:(相続財産-寄与分)×法定相続分

特別受益とは、相続人が被相続人から生前に贈与を受けていた、あるいは相続開始後遺贈を受けているなどにより特別の利益を受けていることをいいます。遺産分割は、相続人間で法定相続分に従って行うのが原則です。ただ、相続人の中に高額な利益を受けている人がいるにも関わらず単純に遺産分割を行ってしまうと相続人の間で不公平が生じます。この不公平をなくすため、民法では特別受益を受けている相続人の相続分を減らすように定めています。

ただ、特別受益はあくまでも相続人間の不公平をなくすための制度なので強制力はありません。特別受益があっても相続人同士が「ま、いっか」で済ませられるなら考慮しなくてもいいのです。さらに、被相続人が遺言で特別受益を相続財産に加えないように指示することもできます(特別受益の持ち戻しの免除)。

特別受益が発生している世帯の各相続人の相続分の計算は次のようになります。

特別受益がある相続人の相続分:〔(相続財産+特別受益)×法定相続分〕-特別受益
特別受益がない相続人の相続分:(相続財産+特別受益)×法定相続分

遺留分とは、一定の相続人が遺産について最低限の割合を請求できる権利を言います。これは民法によって保障された権利です。「財産を所有している者は、生前であれ死後であれ、自分の財産を自由に処分できる」というのが民法の大原則ですが、これだけだと被相続人の遺言書ひとつで被相続人と同居していた家族が住む家を失ったり生活に困窮したりする恐れが生じます。これを防ぐために、配偶者と第一順位の相続人(子や孫など)、第二順位の相続人(父母・祖父母など)には遺留分が認められています。第三順位の兄弟姉妹には遺留分はありません。なお、遺留分の割合も民法によって定められています。

遺言書で相続人の遺留分を侵害する遺贈が行われた場合、相続人は遺産を受け取った受遺者に対し、遺留分侵害額請求を行うことができます。ただし、この侵害額請求権が行使できる期間には期限があるので注意が必要です。

今回の記事では、家族構成別の相続パターンを紹介した上で、相続を考える上で押さえておきたい「寄与分」「特別受益」「遺留分」についても説明しました。相続手続きに不安があったり、知りたいことがあったりする時は、相続に詳しい弁護士や税理士らに相談すると早く解決につながることもあります。心配している方は、一度、相談してみるのはいかがでしょうか。

(記事は2019年10月1日時点の情報に基づいています)

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