目次

  1. 1. 特別縁故者とは? 相続人がいないときに、財産を取得できる人
  2. 2. 特別縁故者として認められる人の要件・範囲
    1. 2-1. 被相続人と生計を同じくしていた人
    2. 2-2. 被相続人の療養看護につとめた人
    3. 2-3. その他、被相続人と特別密接な関係にあった人
    4. 2-4. 被相続人が深く関わった法人も認められる可能性
    5. 2-5. 相続人がいたら特別縁故者は遺産をもらえない
    6. 2-6. 相続人も特別縁故者もいない場合は「国のもの」に
  3. 3. 特別縁故者が遺産を受け取るまでの流れ
    1. 3-1. 家庭裁判所への申立が必要
    2. 3-2. 相続財産管理人選任の申立
    3. 3-3. 相続人調査、官報公告
    4. 3-4. 債務の支払や受遺者への遺贈
    5. 3-5. 相続人の不存在が確定
    6. 3-6. 3カ月以内に特別縁故者への相続財産分与を申し立てる
  4. 4. 特別縁故者にかかる相続税
    1. 4-1. 3千万円を超えたら相続税がかかる
    2. 4-2. 適用されない控除や特例がある
    3. 4-3. 特別縁故者の相続税は2割加算
    4. 4-4. 相続税以外の税金もかかる
    5. 4-5. 申告期限は財産分与があった日から10カ月
  5. 5. 特別縁故者の手続きを、弁護士に依頼した時の費用
  6. 6. まとめ 特別縁故者の手続きは負担 弁護士に相談を

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縁故者にはそもそも「亡くなった人と縁やゆかりがある人」との意味があり、相続で使われる「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」とは、被相続人(亡くなった人)と特別親しい関係にあったことを理由に、法定相続人がいないときに遺産の全額または一部を取得できる人を指します。

相続では原則として、被相続人(亡くなった人)に法定相続人がいなければ誰も遺産を受け取れません。最終的には国のものになってしまいます。

ただ、法定相続人でなくても「被相続人と特別親しい人」がいるなら、その人に遺産を与えるべきといえるでしょう。そこで法律は、特別縁故者への財産分与を認めています。

例えば内縁の配偶者は法定相続人ではないので、遺言がない限り遺産を受け取れないのが原則です。ただし「特別縁故者」として認められると遺産の全部や一部を受け取れる可能性があります。

特別縁故者として認められる可能性があるのは、以下のような人です。

被相続人と同居して生活していた内縁の配偶者、事実上の養子や養親など生計を同じくしていた人たちです。亡くなった子どもの配偶者が、父(配偶者にとっては義父)の特別縁故者と認められたケースもあります。

被相続人の生前、献身的に介護を行った人です。自宅だけではなく老人ホームや介護施設に通って看護した人も特別縁故者となる可能性があります。親族でなくてもかまいません。
ただし介護士や看護師などが仕事として看護した場合、基本的には特別縁故者になりません。

上記以外でも、特別密接な関係にあったと認められれば特別縁故者になる可能性があります。

例えば、生前に被相続人と特に親しく交流していた友人知人、生前に被相続人が「財産を譲りたい」と言っていた相手、被相続人から生前に金銭援助を受けていた人などが考えられるでしょう。

なお、愛人は公序良俗に反するものという見方がされますが、もともとは愛人であっても法律婚を解消し、事実婚といえるような状態に発展していれば特別縁故者になれる可能性があります。

地方公共団体、学校法人、宗教法人、公益法人、福祉法人、法人格のない財団など、法人・団体が特別縁故者になれる可能性もあります。例えば、被相続人が私財を投じて経営してきた学校法人など被相続人が深く関わった法人が認められたケースがあります。

特別縁故者が遺産を受け取れるのは、あくまで「相続人がいない場合」に限られます。子どもや兄弟姉妹などの相続人がいる場合、特別縁故者は財産をもらえません。

たとえ行方不明や音信不通、被相続人と不仲だったなどの事情があっても、相続人は相続人。権利者が現れたら内縁の配偶者などは遺産を受け取れないと考えましょう。

被相続人に子どもなどの法定相続人も特別縁故者もいない場合、遺産はどうなるのでしょうか?

遺産が土地や建物などで他の人と共有していた「共有物件」の場合、相続人や特別縁故者がいなければ「他の共有者」のものとなります。そういった事情もなければ、財産は最終的に国のものになります。

相続人が誰もいなかったとしても、内縁の妻が自動的に特別縁故者になれるわけではありません。家庭裁判所に申立を行い、特別縁故者と認められる必要があります。

裁判所から特別縁故者として認められ、遺産を受け取るまでの流れを解説します。なお、一連の手続きは、自分1人で対応するのはハードルが高いので、相続関係に詳しい弁護士へ相談してみてください。

まずは家庭裁判所で「相続財産管理人」の選任を申し立てなければなりません。相続財産管理人は、遺産を管理して債権者への配当や特別縁故者への分与などの処分を行う人です。

【申し立て先の裁判所】
「被相続人の最終住所地」を管轄する家庭裁判所

【必要書類】

  • 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本類
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 財産関係資料(預貯金通帳、不動産全部事項証明書、証券会社へ預けている有価証券に関する資料など)
  • 被相続人との利害関係を示す資料(被相続人と同居していたことがわかる住民票、健康保険証、看護記録や親族関係を示す戸籍謄本類、被相続人が書き残したメモなど)
  • 申立書

【費用】

  • 800円分の収入印紙
  • 4230円の官報公告費用
  • 郵便にかかる費用

上記の他、数十万円程度の予納金が必要となるケースもあります。

相続財産管理人が選任されると、相続人調査が行われます。具体的には「官報公告」によって遺産相続が発生している事実を世の中全体に知らせ、相続人に申出を促します。ここで相続人が発見されると、遺産は相続人が受け取ることになり特別縁故者への分与は行われません。

被相続人に債権者がいる場合、相続財産管理人が遺産から債務の支払いを行います。遺言によって遺贈が行われた場合にも相続財産管理人が対応します。

公告をしても相続人が現れなかった場合には相続人の不存在が確定します。

相続人の不存在が確定すると、特別縁故者に「相続財産分与の申立」をする権利が認められます。申立が認められれば「特別縁故者」として残った遺産を分与してもらえます。

ただし特別縁故者への財産分与の申立は「相続人不存在の確定後3カ月以内」に行わねばなりません。期限を過ぎると遺産を受け取れなくなるので注意しましょう。

必要書類

  • 申立書(記入例:裁判所HP
  • 申立人の住民票または戸籍附票
  • 被相続人の戸籍(除籍)謄本

費用

  • 収入印紙800円

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特別縁故者として遺産を受け取ると「相続税」がかかる可能性があります。ただし相続税には基礎控除があるので、税金が発生するのは基礎控除を超える場合のみです。

相続税の基礎控除=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

特別縁故者が遺産を受け取るときには法定相続人がいないはずなので、受け取った金額が3000万円を超えると相続税がかかると考えましょう。

特別縁故者は法定相続人ではないので、上記の「相続税の基礎控除」の法定相続人一人あたり600万円の控除は適用されません。

また、以下の控除や特例も適用されません。

  • 配偶者の税額控除
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 小規模宅地等の特例
  • 相次相続控除

結果、通常の相続と比べ、特別縁故者の相続税は高額になりやすいといえます。

特別縁故者が受け取った遺産が3千万円を超えた場合、その相続税額は通常時の「2割加算」となり、税額が上がります。相続税法で、被相続人の一親等の血族や配偶者以外が遺産を受け取る場合、相続税額2割加算となることが定められているためです。

特別縁故者が不動産を受け取った場合、不動産取得税が課せられます。従って、相続税はゼロ円だったとしても、不動産をもらう場合は税金がかかる可能性があります。

相続税の申告には期限があり、特別縁故者の場合は「財産分与があったことを知った翌日から10カ月以内」です。この期限内に、申告して納税する必要があります。間に合わなければ、税務署から延滞税や加算税などのペナルティを科せられますので注意しましょう。

なお、法定相続人の申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」で、起算日が異なっています。

相続税についてわからないことがあれば、税理士に相談して下さい。

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弁護士費用は依頼する事務所によって異なりますが、相場がありますので知っておくとよいでしょう。弁護士費用には主に着手金と報酬金があります。着手金は依頼した当初にかかる費用、報酬金は事件が解決したときにかかる費用です。

特別縁故者の申立の場合、着手金は20万程度。報酬金は経済的利益に応じて4~16%程度になるケースが多いでしょう。「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」が1つの目安になります。

その他にかかりそうな費用としては、相続財産管理人を選任したり財産分与の申立をしたりするときの実費があります。

弁護士費用は依頼先の法律事務所によって異なるので、複数の事務所を比較して選びましょう。

【表」相続にかかわる弁護士の報酬金の相場・計算方法
相続にかかわる弁護士の報酬金の相場・計算方法。経済的利益に応じて、報酬金は変化します。

内縁の妻や亡くなった方を献身的に介護していた方、生前に深い付き合いのあった方などが遺産を受け取りたいなら、早めに家庭裁判所で「相続財産管理人の選任」と「特別縁故者への財産分与申立」の手続きを進めましょう。

一方、死後にこういった手続きを行うのは特別縁故者にとって大きな負担になるものです。できれば生前に遺言書を書いてもらって、財産を遺贈してもらう方が得策です。内縁の妻であれば相続を見据え、正式に婚姻届を提出するのも一つの手です。

特別縁故者として遺産を受け取る手続きや遺言書作成など、自分1人で対応するのはハードルが高いので、困ったときには相続関係に詳しい弁護士へ相談してみてください。

(記事は2022年12月1日時点の情報に基づいています)

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