1. 特別縁故者とは

特別縁故者とは、亡くなった被相続人と特別親しい関係にあった人です。
原則として、被相続人に法定相続人がいなければ誰も遺産を受け取れません。最終的には国のものになってしまいます。ただ、法定相続人でなくても「被相続人と特別親しい人」がいるなら、その人に遺産を与えるべきといえるでしょう。
そこで法律は、特別縁故者への財産分与を認めています。

例えば内縁の配偶者は法定相続人ではないので、遺言がない限り遺産を受け取れないのが原則です。ただし「特別縁故者」として認められると遺産の全部や一部を受け取れる可能性があります。

1-1. 特別縁故者として認められる人

特別縁故者として認められる可能性があるのは、以下のような人です。

◎被相続人と生計を同じくしていた人
被相続人と同居して生活していた内縁の配偶者、事実上の養子や養親など。亡くなった子どもの配偶者が、父(配偶者にとっては義父)の特別縁故者と認められたケースもあります。

◎被相続人の療養看護につとめた人
被相続人の生前、献身的に介護を行った人です。自宅だけではなく老人ホームや介護施設に通って看護した人も特別縁故者となる可能性があります。親族でなくてもかまいません。
ただし介護士や看護師などが仕事として看護した場合、基本的には特別縁故者になりません。

◎その他特別密接な関係にあった人
上記以外でも、特別密接な関係にあったと認められれば特別縁故者になる可能性があります。
例えば、生前に被相続人と特に親しく交流していた友人知人、生前に被相続人が「財産を譲りたい」と言っていた相手、被相続人から生前に金銭援助を受けていた人などが考えられるでしょう。

1-2. 相続人がいたら特別縁故者は遺産をもらえない

特別縁故者が遺産を受け取れるのは、あくまで「相続人がいない場合」に限られます。子どもや兄弟姉妹などの相続人がいる場合、特別縁故者は財産をもらえません。
たとえ行方不明や音信不通、被相続人と不仲だったなどの事情があっても、相続人は相続人。権利者が現れたら内縁の配偶者などは遺産を受け取れないと考えましょう。

1-3. 相続人も特別縁故者もいない場合、遺産はどうなる?

被相続人に子どもなどの法定相続人も特別縁故者もいない場合、遺産はどうなるのでしょうか?
遺産が土地や建物などで他の人と共有していた「共有物件」の場合、相続人や特別縁故者がいなければ「他の共有者」のものとなります。そういった事情もなければ、財産は最終的に国のものになります。

2. 特別縁故者が遺産を受け取るまでの流れ

以下では特別縁故者として遺産を受け取るまでの流れや具体的な手続きの方法をみていきましょう。

2-1. 相続財産管理人選任の申立

まずは家庭裁判所で「相続財産管理人」の選任を申し立てなければなりません。
相続財産管理人は、遺産を管理して債権者への配当や特別縁故者への分与などの処分を行う人です。

【申し立て先の裁判所】
「被相続人の最終住所地」を管轄する家庭裁判所

【必要書類】

  • 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本類
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 財産関係資料(預貯金通帳、不動産全部事項証明書、証券会社へ預けている有価証券に関する資料など)
  • 被相続人との利害関係を示す資料(被相続人と同居していたことがわかる住民票、健康保険証、看護記録や親族関係を示す戸籍謄本類、被相続人が書き残したメモなど)
  • 申立書

【費用】

  • 800円分の収入印紙
  • 4230円の官報公告費用
  • 郵便にかかる費用

上記の他、数十万円程度の予納金が必要となるケースもあります。

2-2. 相続人調査、官報公告

相続財産管理人が選任されると、相続人調査が行われます。具体的には「官報公告」によって遺産相続が発生している事実を世の中全体に知らせ、相続人に申出を促します。
ここで相続人が発見されると、遺産は相続人が受け取ることになり特別縁故者への分与は行われません。

2-3. 債務の支払や受遺者への遺贈

被相続人に債権者がいる場合、相続財産管理人が遺産から債務の支払いを行います。
遺言によって遺贈が行われた場合にも相続財産管理人が対応します。

2-4. 相続人の不存在が確定

公告をしても相続人が現れなかった場合には相続人の不存在が確定します。

2-5. 3カ月以内に特別縁故者への相続財産分与を申し立てる

相続人の不存在が確定すると、特別縁故者に「相続財産分与の申立」をする権利が認められます。申立が認められれば「特別縁故者」として残った遺産を分与してもらえます。

ただし特別縁故者への財産分与の申立は「相続人不存在の確定後3カ月以内」に行わねばなりません。期限を過ぎると遺産を受け取れなくなるので注意しましょう。

申立の必要書類は「特別縁故者の住民票または戸籍附票」、費用は「800円分の収入印紙」です。

3. 特別縁故者と相続税

特別縁故者として遺産を受け取ると「相続税」がかかる可能性があります。
ただし相続税には基礎控除があるので、税金が発生するのは基礎控除を超える場合のみです。

相続税の基礎控除=3000万円+法定相続人の数

特別縁故者が遺産を受け取るときには法定相続人がいないはずなので、受け取った金額が3000万円を超えると相続税がかかると考えましょう。

また、特別縁故者が遺産を受け取る場合、通常時の「2割加算」となるので税額が上がります。
相続税は「相続開始を知ってから10カ月以内」に申告して納税する必要があるので、期限にも注意しましょう。

まとめ

内縁の妻や亡くなった方を献身的に介護していた方、生前に深い付き合いのあった方などが遺産を受け取りたいなら、早めに家庭裁判所で「相続財産管理人の選任」と「特別縁故者への財産分与申立」の手続きを進めましょう。
死後にこういった手続きを行うのは特別縁故者にとって大きな負担になるもの。できれば生前に遺言書を書いて財産を遺贈する方が得策です。

特別縁故者として遺産を受け取る手続きや遺言書作成など、自分1人で対応するのはハードルが高いので、困ったときには相続関係に詳しい弁護士へ相談してみてください。

(記事は2021年4月1日時点の情報に基づいています)