遺産分割協議がまとまらない場合の手続き 家庭裁判所への調停申し立てや審判について解説
朝日さん一家は、相続することになってから遺産を分けるまでの流れを学んでいます。今回は、相続人同士で遺産分割協議がまとまらなかった場合の対応をソーゾク博士に聞きました。今回記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、ゆら総合法律事務所の弁護士、阿部由羅さんです。
朝日さん一家は、相続することになってから遺産を分けるまでの流れを学んでいます。今回は、相続人同士で遺産分割協議がまとまらなかった場合の対応をソーゾク博士に聞きました。今回記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、ゆら総合法律事務所の弁護士、阿部由羅さんです。
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遺産の分け方を話し合う遺産分割協議で、相続人同士の意見がまとまらないことってよくあるのかな。
相続を「争続」なんて表現することもありますが、遺産の分け方でもめることが多いです。
遺産分割の時に、どんなことでもめるんでしょうか。
争いがおきやすいのは、財産の多くが自宅不動産の場合です。都市部では不動産の価値が高いので、遺産の分け方をめぐって争いになる傾向があります。1人が相続すると不公平になるからといって思い入れのある実家だと、売却してお金を分け合う換価分割もしづらいのでしょうね。
確かに、不動産は高いものね。ほかにもめるケースとは?
相続人同士が疎遠であったり、仲が悪かったりするケースです。感情的に互いの主張をぶつけてしまい、折り合えない可能性があります。また、亡くなった人に再婚した経験があると、それぞれの家族の間で、争いになる恐れがあります。
私と兄さんだって、もめるかもしれない……。博士、私たちがもめたら、どうしたらいいんでしょう。
弁護士に協議の仲介をお願いしましょう。第三者でもある専門家が争点を整理すると、協議がスムーズにまとまる可能性が高まります。
博士を前に言うのも失礼ですが、弁護士に依頼したら、それこそ「争続だ」という印象がある……。
弁護士は法律の専門家ですので、お互いの主張を法律にのっとって整理できます。もちろん、太郎さんの代理として、花子さんに権利を主張したい場合にも、アドバイスしますよ。
それでもまとまらなかったら、どうなりますか。
相続人同士での協議がまとまらない場合には、裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。調停は調停委員が仲介して、相続人同士が合意できるよう模索します。その過程ですべての相続人が遺産分割案に合意すれば調停は成立して、その通りに遺産を分けます。1人でも反対する人がいれば、調停は不成立です。
不成立になった後は、裁判になるんですか。
調停が不成立になったら、自動的に遺産分割審判になります。調停とは別に、改めて申し立てる必要はありません。審判では裁判所は相続人それぞれの意見を聞きます。また、調停の経過や、新たに出された資料をもとに、調査をします。最終的には裁判所が遺産の分け方の審判をします。
審判では相続人の合意は求められないんですね。
はい。審判の内容に不服がある場合は2週間以内に不服の申し立てが認められていますが、なかった場合には審判が確定します。
裁判所が「実家を売って、そのお金を分けなさい」と判断したら、その通りにするしかないんですか。
そうです。審判まで長引くと、時間もお金もかかります。遺産分割協議で相続人同士が折り合えなかったら、一度、弁護士を交えて話し合ってみるといいでしょう。
●調停は家庭裁判所へ申し立て
●家裁の調停案に相続人全員が合意すれば調停成立
●調停が不成立なら審判へ
(今回のソーゾク博士=ゆら総合法律事務所・弁護士阿部由羅さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年12月1日時点での情報に基づきます)
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