知らない間に相続人になっていたら? 相続放棄も検討して慎重に判断を
「高齢化」に加え、ライフスタイルの「多様化」も進む中、相続の形も変わってきています。長らく会っていない親戚の相続人になることもあるかもしれません。ソーゾク博士に対応策を聞きました。
「高齢化」に加え、ライフスタイルの「多様化」も進む中、相続の形も変わってきています。長らく会っていない親戚の相続人になることもあるかもしれません。ソーゾク博士に対応策を聞きました。
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友達のおじさんが亡くなったんだけど、なぜか、その友達が相続人だったんだって。そのおじさんが入所していた高齢者施設の代理人弁護士から手紙がきて分かったらしい。
それは驚くわ。でも遺産がもらえるのかしら。
それが、「入居保証金から原状回復費用を差し引くから同意してくれ」って。その後、「葬儀や埋葬は済んでいるけど、住民税や公共料金の未払い分を支払ってほしい」と言われたらしいよ。
いきなりの連絡ね。誰も面倒を見てくれなかったのかしら。
友達も、ほとんど会ってなくて親戚づきあいも皆無だったらしい。なんで相続人になっていたんだろう。
ご友人が相続人になった事情を説明します。親や子どもがいなければ、配偶者がいても相続人には兄弟姉妹が含まれます。もし、先に亡くなっている人がいれば、その子ども、おいやめいも法定相続人になるんです。
そんな仕組みなんだね。
遺言がない場合は、法定相続人全員で分割協議を行って財産をどう分けるのかを決めて、相続税がかかる時はそれぞれが納めないといけません。また、今回のように、未払いの税金や入院費などの費用、借入金などがあれば、遺言の有無にかかわらず、基本的に法定相続人が全員で負担することになるのです。今回、高齢者施設が友人を探して原状回復費用を差し引くことへの同意を求めてきたのも、そういう理由です。
どのくらい財産や負債があるか知らないし、相続する財産以上の借金を返済するのなら納得できない。でも、調べるのは大変そうだし、そもそも相続人が正確に何人いて、誰が音頭を取るのかも分からないだろうね。
きょうだいが多くて、子どもがいない人の相続ではよくある話です。相続人の中に、高齢で意思能力が低下した方や連絡がつかない人がいると遺産分割協議ができず、手続きを進められないことも問題になります。
そんなことになったら、どうすればいいのかしら。
親戚付き合いがなくて、相続できる財産よりも未払いの費用や債務が多いことを心配したり、法定相続人全員での話し合いが難しかったりする時は、相続放棄も選択肢の一つだと思います。期限は、死亡日または死亡の事実を知った日から3カ月以内です。この熟慮期間内に財産を調べても決めきれない場合は、家庭裁判所に伸長を申し立てることもできます。
別の家と養子縁組をするなど関係が疎遠になった相続人がいたら、どうなるんだろう。
普通養子縁組であれば、相続における実の父母やきょうだいとの関係は変わりません。今回のケースでは、亡くなった方が仮に幼い頃に養子になっていても、太郎さんの友人が法定相続人になります。いきなり相続人になっていることを知っても、どうすればいいのか悩んでしまう人が多いと思います。困ったら、弁護士などの専門家に相談してみてください。
今回のソーゾク博士=MUFG相続研究所所長・入江誠さん、構成=相続会議編集部
■今回の記事のまとめ
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年4月1日時点での情報に基づきます)
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