遺産分割協議書はトラブルの防止につながる

  • 前回は、遺産分割調停と審判がテーマでした。今回は、遺産分割協議がまとまった後に作成する「遺産分割協議書」を解説します。

    ソーゾク博士
  • 遺言書が残されていない場合に、誰が、どの財産を相続するのかを書くんですよね。

    長男・太郎
  • 必ず必要というわけではありませんが、相続人の合意内容が明確になるメリットがあります。基本的には、遺言書がなく、相続人が複数人いるといった場合に検討してください。相続人が1人の場合は作成不要です。

    博士
  • 遺産の分け方を合意しておけばトラブルは防げそう。

    長女・花子
  • 口頭で合意しても、「そんなことは合意していない」と後から言い出す人もいるかもしれません。そういった事態への備えにもなります。

    博士
  • 協議書が役立つのは、どんなタイミングなんでしょう。

    太郎
  • まず、相続人が複数人いて、不動産の名義を特定の1人に変更する時です。このほか預貯金の名義変更、解約払い戻しにも使えます。金融機関の書類を使う方法もありますが、協議書があれば手続きを簡略化できます。

    博士
  • 複数の銀行に口座がある時は役立ちそう。ちなみに、コピーして使ってもいいんですか?

    太郎
  • コピーは使えません。このため、原本を提出する際には「手続きが終わったら返してください」と伝えておいてください。

    博士

遺産分割協議書を作成する時の注意点

  • 公的機関への提出を考えると作るのが難しそう。

    花子
  • 決まりを守れば身構えなくても大丈夫。いくつかポイントを挙げましょう。まず、手書きとパソコンのどちらでも作れます。作成した日付のほか、亡くなった被相続人の氏名、生年月日、死亡日、本籍地、最後の住所地を書いてください。被相続人と相続人の関係性も「夫」「妻」「長男」「長女」といった形で記入してください。

    博士
  • 遺産の情報は、どれくらい具体的に記せばいいのですか。

    太郎
  • 預貯金は通帳などを参考に【金融機関名、支店名、種別、口座番号、名義人】を明記してください。土地は【所在、地番、地目、地積】、建物は【所在、家屋番号、種類、構造、床面積】を法務局で取得できる登記事項証明書に沿って、それぞれ記しましょう。

    博士
  • 前もって、遺産を把握しておかないといけないのね。

    花子
  • 誤った情報で協議書を作らないためにも、財産調査は抜け漏れがないようにしましょう。遺産の情報に加えて相続する人を全て記入したら、相続人全員が署名して実印で押印しましょう。人数分を作って、相続人がそれぞれ受け取れば、相続手続きで使えます。修正が容易になるので、文面はパソコンで作ったほうが便利ですよ。

    博士
  • 手続きの場所は、預貯金だったら金融機関、不動産は所在地を管轄する法務局でしたね。

    太郎
  • 今回は主なポイントだけを取り上げました。しかし家庭状況はそれぞれ異なり、注意点も違ってきます。失敗しないためにも、弁護士や司法書士への相談も考えてくださいね。

    博士

■遺産分割協議書のポイント

・トラブル防止につながる
・相続の手続きにも活用可能
・手書き、パソコンのいずれでも問題なし

(今回のソーゾク博士=川崎相続遺言法律事務所・弁護士勝本広太さん、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年1月1日時点での情報に基づきます)