経営者は生前からの相続対策が大事 遺言作成と相続税評価の検討を
経営者の中には遺言などで自社株式の承継者を決めるなどの対策を取る人も多いです。不測の事態に備え、どんな準備をしておけばよいのか、ソーゾク博士が解説します。
経営者の中には遺言などで自社株式の承継者を決めるなどの対策を取る人も多いです。不測の事態に備え、どんな準備をしておけばよいのか、ソーゾク博士が解説します。
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町内会でたまに顔を合わせていたソフトウェア会社の田中社長が、海外出張中に事故で亡くなってしまったよ。奥さんは突然のことでふせってしまったらしい。
えっ! 何て声をかければいいんだろう。お子さんも小さいし、これから大変でしょうね。
残念ながら不測の事態はいつ起きるか分かりません。会社を経営している人は、備えとして家族や会社を受取人とする生命保険に入るケースが多いです。
経営者だから保険には入っていたと思います。でも、他に気をつけた方がいいことはあるんでしょうか。
一番心配なのは、会社が事業継続できるかどうかという点です。次の社長はスムーズに決まるのかどうか気になりますね。田中さんの自社株式は誰が相続するのでしょう。
全部これから決めるらしいです。会社の業績がよくて、自社株式の相続税評価額は結構高くなると聞いています。だから、自社株式は奥さんが相続して配偶者控除を使う形にしないと、相続税を支払えなくなるんじゃないかと心配していました。
急なことだから大変そう。
奥さんは、経営にタッチしていなかったんだ。これまで、山田専務と田中さんの弟の常務の2人が田中さんを支えていたからね。田中さんと弟はM&Aで会社の売却も検討していたらしい。山田さんは反対だったから、次の社長がすんなり決まるのかなぁ。
会社の経営者は、万一に備えて、日頃から対策を立てたほうがいいです。事業が停滞しないように自社株式だけでも誰に承継させるのか、遺言で指定しておくと安心ですね。
遺言がないと、どんなことに困るのでしょう。
遺言がない場合は、遺産分割協議を経ないといけません。しかし、協議がまとまらないと、最終的な相続財産の所有権が確定しないのです。保有株数にもよりますが、そのままの状態が長引くと、例えば事業譲渡の承認など株主総会の特別決議が必要な事項の意思決定が適切に行えないといった事態もあり得ます。今回のように、M&Aを検討していたら、相手方との交渉もあるのでなおさらです。
高額な相続税には、何か対策があるんでしょうか。
自社株式の相続税評価を定期的に行っておきましょう。承継した人にどの程度の相続税がかかるかを試算しておくことも重要です。相続税を多く負担するかもしれない人を保険金の受取人にしておくという対策をとっておくこともできます。
子どもが相続すると、相続税を払うのが難しいですもんね。
お子さんが未成年であれば、遺産分割協議のために特別代理人をたてる必要もあります。この場合、母親とは相続人同士となり、利益相反になるので母親は特別代理人にはなれません。このように、事業承継が関係する相続は、とても複雑です。お困りごとが生じた際には、早めに専門家へ相談してみてください。
(今回のソーゾク博士=MUFG相続研究所所長・入江誠さん、構成=相続会議編集部。記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年4月1日時点での情報に基づきます)
・遺産分割協議が長引くと、株主権の適切な行使に支障が
・遺言がない未成年の相続人は特別代理人選任を申し立てる
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