相続でだまされたら遺産分割取り消しを 弁護士が方法を解説
相続の手続きを進める際、ほかの相続人に「だまされた」などと気づいた時はどのように対処したらいいでしょう。深刻な事態を避けるための準備をソーゾク博士が教えてくれます。
相続の手続きを進める際、ほかの相続人に「だまされた」などと気づいた時はどのように対処したらいいでしょう。深刻な事態を避けるための準備をソーゾク博士が教えてくれます。
「相続会議」の弁護士検索サービスで
友人が相続をめぐって弟ともめているらしいんだ。遺産分割が終わった後、弟が遺産を隠していることが分かったんだって。
兄弟のトラブルは大変そう。でも、そうなると遺産分割はどうなるのかしら。一度、合意したのだから有効になるのかしら。
遺産隠しをめぐってきょうだい同士でもめてしまうと、深刻なトラブルに発展することが多いです。遺産分割に合意していても、遺産隠しなどがあった場合には取り消せる可能性がありますよ。
どんな状況だったら遺産分割を取り消せるのでしょうか。
遺産分割協議を有利に進めるために、他の相続人がついたうそを信じて遺産分割に同意した場合は、「錯誤」と「詐欺」に基づく取り消しが認められます。
聞き慣れない言葉だわ。
錯誤とは、遺産分割の内容について重要な誤解があり、その誤解に基づいて同意してしまうことです。詐欺とは、誰かにだまされてしまい、うそを信じて、遺産分割に同意してしまうことです。
どんな事例なんでしょう。
たとえば、ご友人のように遺産を隠された場合です。遺産を管理している相続人が、自分の懐に入れるため、預金口座や金庫などの存在を隠したとしましょう。そうすると、他の相続人は遺産の全体像を把握できず、適正に遺産分割ができたとは言えません。不動産の売却価格を実際よりも低く伝えて差額を自分のものにするケースや、生前贈与を受けていたことを黙っているケースなども考えられます。これらはいずれも錯誤と詐欺の両方に該当する可能性があります。
実際に、遺産分割を取り消すにはどうすればいいのでしょう。
他の相続人全員に対して遺産分割を取り消す意思表示をしてください。内容証明郵便を使って通知し、取消(とりけし)権を行使したことを証拠に残しましょう。ただ、取り消しや遺産分割協議のやり直しに応じてくれない場合は、裁判所に「遺産分割協議無効確認訴訟」を提起することになります。もしも訴訟になった場合には、遺産分割協議の議事録やメールなどが証拠となるので、紛失しないように保管しておいてください。取消権を行使する際には、さまざまな観点から検討が必要なので弁護士への相談をお勧めします。
手続きと判断が難しそう。
取消権は錯誤・詐欺を知った時から5年で時効を迎えます。そうなると、錯誤・詐欺を理由とする取り消しはできなくなるので注意が必要です。また、「一度は納得したけど、やっぱり気が変わった」という理由だけでは取り消せません。取り消しが認められるのは、あくまで錯誤や詐欺などの事情がある場合に限られます。
遺産分割協議の時から、慎重に判断しないといけないんですね。
もしも、遺産分割を終えた後でも、だまされたことに気づいたら弁護士に相談してみてください。取り消すことができるかどうか、専門的な観点から検討してもらえるでしょう。
■今回の記事のまとめ
今回のソーゾク博士=ゆら総合法律事務所・弁護士阿部由羅さん、構成=相続会議編集部。記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年4月1日時点での情報に基づきます
「相続会議」の弁護士検索サービスで