遺産分割調停とは?

■相続の開始と遺言の有無
被相続人の死亡により相続が開始しますが、被相続人が遺言者を作成していた場合には、基本的に遺言書に基づいて具体的な相続分が確定され、遺産分割協議は不要です。

遺言書がない場合は民法の規定に従います。相続人が複数いるときは、相続財産全体について共有状態になりますから、個々の財産につき最終的な帰属を確定する必要があります(不動産は長男、預金は二男など)。これが遺産分割です。

■遺産分割協議と遺産分割調停
遺産分割協議は、相続人全員で、口頭や書面などで話し合い(協議)をすることで行います(民法907条1項)。

話し合いがうまくいかない等の場合、相続人は、相続開始地の家庭裁判所に遺産分割審判を申し立てることができ(民法907条2項、家事事件手続法191条1項)、裁判官が審判によって分割内容を決めることになります。

直ちに審判を申し立てることも可能ですが、実務上は、ほとんどが調停手続に付されます(同法274条1項)。それでは迂遠ですので、通常は、まず遺産分割調停を申し立てます。

弁護士への相続相談お考え方へ

  • 初回
    無料相談
  • 相続が
    得意な弁護士
  • エリアで
    探せる

全国47都道府県対応

遺産分割に強い弁護士を探す

遺産分割調停の流れ

■遺産分割調停の申し立て
他の相続人全員を相手方として、相手方の住所地(複数人いる場合は選べます)の家庭裁判所に申し立てます(被相続人・相続人の戸籍謄本・住民票や、不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書、預金通帳の写し等を添付します)。

■調停期日
調停期日は、調停委員会(裁判官1人と家事調停委員2人(原則。ほとんどが男女のペア))が中心となって進められます。調停室という小部屋で、調停委員が当事者から個別に意見や主張を聞きながら、対立点等を整理します。裁判官の人数は少ないため、普段の調停期日では裁判官は調停室に現れません。

第1回調停期日では、まずは簡単に調停手続に関する説明がなされた後、本題に入ります。遺産分割調停では、以下の順番で当事者の主張を整理しながら進められます(段階的進行モデル)。

  1. 相続人の範囲の確定
  2. 遺産の範囲の確定
  3. 遺産の評価
  4. 特別受益・寄与分の確定
  5. 遺産の分割方法の確定

遺産分割調停において、1回の期日で終わることはほとんどなく、その期日で話し合いが終わらなければ、次回期日が設定されます。次回期日は、基本的に約1カ月後になります。
当事者間で合意に至れば、調停成立となります。

■不成立・遺産分割審判
相手方の不出頭が続いたり、同じ主張を繰り返したりと、話し合いでの解決が困難である場合には調停不成立となり、自動的に審判手続に移行します。審判手続では、裁判官が客観的な資料等に照らし合わせ、妥当と考えられる分割方法を定める審判を下します。

遺産分割調停の有利な進め方

■調停委員とのやり取り
遺産分割調停では、調停委員は段階的進行モデルに沿って当事者から順次事情を聞いていくことになりますので、「自分からすべて説明しなければ」と焦る必要はありません。

たとえば、相続人の範囲については、「認知されていない実子など、戸籍上記載されていないほかの相続人がいらっしゃいますか?」というように質問されます。ただし、当事者に異論がない部分については、割愛されることもあります。

■客観的な資料の重要性
調停期日において、当事者の言い分が真っ向から対立することは珍しくありません。しかし、調停委員や裁判官は、何がウソであるかを見抜く特別なスキルを有しているわけではありません。相手方の言い分にウソや誇張が含まれる場合、単に「相手方の言い分はウソです」と言ったところで水掛け論になってしまいますので、客観的な資料に照らし合わせ、どの部分が矛盾するのか、指摘する必要があります。

そして、客観的な資料をもとに、相手方の言い分にウソや誇張があると調停委員に示すことができれば、相手方の印象は悪くなります。そうなると、相手方が新たな主張を展開しようとした場合でも、調停委員が「調停の場でウソばかり並べて、今さらこんな主張が通ると思いますか?」などと言って、主張がこちらの耳に入る前に、調停委員がはじいてくれることもあるでしょう。

さらに、矛盾する内容の主張ばかりを述べていると、最終的な審判の際に「相手方主張の事実は認められない」と裁判官に一蹴される可能性もあります。

また、真実であったとしても客観的な裏付けがない限り、意固地になって強く求め続けるのは、得策とはいえません。一方、客観的な裏付けがある場合には、相手方が納得しなくとも、粘り強く主張し続けることが重要です。

意味のある相手の主張への反論が大切

■法律的に意味のある主張と意味のない主張を区別する
当事者が合意に至れば調停は成立しますので、相手方がこちらの言い分をすべて認めたり、逆にこちらが相手方の言い分をすべて認めたり、あるいは、うまい落とし所が見つかったりすればそれで済みます。

その意味では、調停において明確な勝ち負けがあるわけではないといえるでしょう。しかし、そのように簡単に解決するのであれば、そもそも調停を申し立てるまでもなく解決していたはずです。

そうしますと、調停では折り合いがつかないことを前提に、つまり、審判手続に移行することを見据えて期日に臨むのが賢明です。もちろん、譲歩できる部分があれば検討してもよいですが、それは審判を見据えた主張の組み立てと相いれないものではありません。

たとえば、法定相続分が3分の1であるにもかかわらず、「私の相続分は2分の1である」などと主張したとしても、特に意味のある主張ではありません。一方、「私は被相続人を無償で療養看護してきたので、その分の考慮を求めます」などと主張すれば、それは寄与分(民法904条の2)に関する主張として、法的に意味のある主張といえます。審判を見据えて、日記や診療録等、裏付けとなる客観的な資料も提出しておくとよいでしょう。

■意味のある相手の主張に対する反論は必須
このほか、相手方が「申立人は遺産を独り占めしようとしている」とだけ主張してきた場合には、単なる感想を述べているに過ぎず、基本的に無視して問題ありません。

一方、「申立人は令和3年10月6日に被相続人から居住用の不動産購入のための資金1000万円を受け取った」と主張してきた場合には、特別受益(民法903条)に関する主張ですから、なんらかの反論をする必要があります。

なにも反論しなければ、異議のないものとして話し合いが進んでしまうこともあります。たとえば、その場では反論せず、調停成立間際になって「そんなことは認めていない」と主張したとしましょう。

この場合、調停成立となることはありませんが、調停委員からお叱りを受けて、やむなく撤回することになるか、そうでないとしても、審判の際に、主張・供述の不合理な変遷として不利な認定がなされる可能性があります。法律的に意味のある相手方の主張については、適時に反論することを意識しておきましょう。

遺産分割調停は弁護士に相談を

初めて遺産分割調停を経験される方にとって、法律的に意味のある主張と意味のない主張の区別は簡単ではないでしょう。また、相続問題という身内の問題だからこそ、感情的になり、客観的な視点を保てなくなっていることもあります。弁護士は、法律の専門家として、依頼者にとって有利な進め方を知識および経験に基づいて客観的に判断します。不安がある場合には1人で抱え込まず、弁護士に相談してみてください。

(記事は2022年4月1日現在の情報に基づいています)