目次

  1. 1. 姉妹で合意した遺産分割 姉の夫が出てきてぎくしゃく
  2. 2. 友人知人からの「そんな話納得できない!」にご注意
  3. 3. 遺産分割に、外野は口を挟むことなかれ

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ある仲良し姉妹のケースについて紹介します。お父様に続きお母様が亡くなって、相続財産をどう分けるかを決めることになりました。姉のほうは、遠方の資産家に嫁いでいて、嫁ぎ先への遠慮もあり、親の面倒をみることができませんでした。妹のほうは実家の近くに住んでいて、最後は彼女が母親の世話をしていました。

そんな妹に感謝していたお姉さんは「私は親の面倒を一切みることができなかったから、実家の財産は妹が全部相続すればいい。自分は生活に困っていないんだし」と考えていました。一方の妹さんは「自分が全部もらうなんてできない。やはり姉さんにももらってほしい」と考えていました。

そこで2人で話し合った結果、自宅は妹が相続する。その他の現預金は妹が3分の2
、姉が3分の1 の割合でもらうということで話が決まりました。

ところが、ある日妹さんのところに、お姉さんの夫から電話がかかってきて、「相続というのは、普通は法定相続分通り分けるものだろ。財産は2分の1ずつ分けるのが筋だ」とがなり立てられました。いわく「妻は、妹に遠慮して言いたいことが言えないから、自分が代わりに交渉するんだ」とのこと。

せっかく、仲の良い姉妹がお互いのことを思いやって決めた分け方だったのに。その後、姉妹が元のように仲良くすることはなかったようです……。

似たようなケースで、友人知人が相続人に入れ知恵をして、話を複雑にしてしまうことも多々あります。そんな時の 常套句(じょうとうく)が「そんな話、普通納得できないでしょ」です。

相続に「普通」があるのかどうかはわかりませんが、そういった場合、そうおっしゃる方が参考にするのは法定相続分です。しかし、遺産は法定相続分通りに財産を分ける必要はなく、あくまでも目安にすぎません。どう分けるかは、相続人同士で自由に決めればいいのです。

最近、相続についての知識を持つ人が増えたように思います。法定相続分や遺留分 という言葉も、ちょっと前までは知らない方も多かったのですが、新聞や雑誌、テレビで相続の特集がたくさん組まれるようになり、本当に皆さんくわしくなっています。
ですから、ついつい他人の相続にも口を挟みたくなるのではないでしょうか。

私個人の見解としては、相続というのは、亡くなった時点の「点」で考えるものではないと思っています。それまでの長〜い歴史を勘案すべきなのではないかと。

だからこそ、相続でどう財産を分けるのかを決めるのはむずかしいのだと思うのです。
赤の他人同士であれば、財産を等分に分ければいいだけ。法定相続分通りでなんの問題もありません。

でも家族には、ひとつ屋根の下で長い間暮らしてきたからこその問題や互いの関係があります。それをしっかり考慮に入れて、みんなが納得できるような分け方を決める。これが円満な相続につながるのだろうと思っています。

そんな家族の歴史を踏みにじるかのような外野の登場は、相続をもめごとにすることはあっても、円満解決に導くことはまずないと言えます。

家族とはいえ配偶者の実家、あるいは友人知人の遺産分割には口を挟むことなかれです。

(記事は2022年1月1日時点の情報に基づいています)

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