目次

  1. 1. 相続トラブル・もめごとはどの家族にも起こりうる
    1. 1-1. 遺産1000万円以下で裁判になった割合は3割超
    2. 1-2. 原因は金額の多寡だけでなく、遺産への思い入れや立場の違いも
  2. 2. 相続でもめる家族の特徴10選
    1. 2-1. 兄弟仲が悪い、疎遠
    2. 2-2. 遺産がほとんど実家しかない
    3. 2-3. 遺産に不動産が含まれている
    4. 2-4. 介護の負担が偏っている
    5. 2-5. 高額な生前贈与が行われた
    6. 2-6. 特定の相続人が財産管理している
    7. 2-7. 不公平な遺言書が遺された
    8. 2-8. 前婚の子ども、認知された子どもが相続人になっている
    9. 2-9. 親が事業をしていた
    10. 2-10. 被相続人に内縁の配偶者がいる
  3. 3. 相続争いを予防する方法
    1. 3-1. しっかり話し合う
    2. 3-2. 遺言書を作成する
    3. 3-3. 家族信託を利用する
    4. 3-4. 後見制度を利用する
    5. 3-5. 弁護士に相談する
  4. 4. 相続争いが発生したときの対処方法と弁護士に相談するメリット
    1. 4-1. 法律の正しい考え方を教えてもらえる
    2. 4-2. 代理交渉を依頼できる
    3. 4-3. 調停、審判、訴訟も依頼できる
    4. 4-4. 有利に解決できる可能性が高くなる
  5. 5. まとめ

「相続でもめるのはお金持ちの家の話。うちは関係ない」などと思われがちかもしれませんが、相続トラブルは相続財産の多い場合ばかりとは限りません。

令和3(2021)年の司法統計年報によると、裁判所に遺産分割の事案で持ち込まれた件数の総数は6934件で、遺産の総額が1000万円以下のケースが2279件(約33%)、1000万円超5000万円以下は3037件(約44%)となっており、合計すると遺産が5000万円以下のケースが全体の8割近くにのぼります。遺産が少なくてもトラブルは頻繁に起こっているのです。

つまり、相続でもめる原因は相続分の金額の多さばかりではないということです。少ない遺産だからこそ、だれがどれくらい相続するかということに敏感になるという側面もあるでしょう。

また、遺産への思い入れの差が原因になることもあります。たとえば遺産となった自宅をめぐって、換金しようという相続人と、思い出のつまった自宅を売りたくない主張する相続人が対立するといったケースです。

相続人の立場の違いが起因することもあります。故人の生前に介護につくした相続人と介護にかかわらなかった相続人が争ったり、自宅購入の頭金を支援してもらった相続人と、支援を受けていない相続人がトラブルになったりするケースがあります。

以下では、相続でもめる家族の特徴を具体的に説明します。

相続でもめる家族には特徴があります。以下の10つに当てはまる場合、要注意です。

具体的な事例やケースとともに紹介します。

親が亡くなった後、遺された子どもたちがもめるパターンです。もともと兄弟仲が悪かった場合や疎遠だった場合、特にお互いの意見が合わずにトラブルになってしまいやすい傾向があります。

【よくある相続トラブルの事例哉ケース】

  • 遺産の分け方について意見が合わずにもめてしまう
  • 相手に連絡しても無視されて話し合いを進められない
  • お互いが感情的になって話ができない

遺された遺産が実家の不動産しかない場合にももめごとになりやすい傾向があります。遺産が実家しかないのに相続人が複数いると、誰が相続するかでもめてしまうためです。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 長男が「自分が家を継ぐべき」と主張して他の兄弟と対立する
  • 特定の相続人が家を取得して代償金を支払って解決するのか、家を売却して現金で清算するのかで意見が合わず対立する
  • 代償金を支払うとしてもいくらにするのが妥当かで意見が分かれ、もめてしまう
  • 実家で親と同居していた相続人が家を追い出されて住むところがなくなる

遺産に不動産が含まれていると、相続トラブルにつながるケースが多々あります。不動産は分けにくい財産だからです。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 誰がどの不動産を取得するのかでもめてしまう
  • 不動産の評価方法で合意ができずもめてしまう
  • 代償分割するのか換価分割するのか意見が合わない
  • 共有状態にしたため、活用も売却もできずに放置されてしまう
  • いつまでも遺産分割方法が決まらず、相続登記もできずに長年放置されてしまう

特定の相続人に介護の負担が偏ってしまった場合にもトラブルが生じやすくなっています。被相続人の生前に献身的に介護を行った相続人には「寄与分」が認められるからです。寄与分が認められると、本来の法定相続分よりも多めの遺産を相続できます。

ただ、相続人によって介護が行われたとしても、他の相続人は介護による寄与分を認めないケースが多く、トラブルに発展してしまいます。寄与分を認めるとしても、具体的にいくらの遺産相続分を上乗せすべきかで意見が対立する可能性があります。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 親が亡くなって長男、次男、長女が相続人となった。生前、長女は両親の介護を熱心に行ったために寄与分を要求したが、長男と次男が認めないために遺産分割協議が進まなくなってしまった。

関連記事 相続でもめやすい「寄与分」とは? 「長年の介護」が報われる要件や事例を解説

生前に高額な生前贈与が行われた場合にも相続トラブルにつながるケースが多々あります。相続人へ生前贈与が行われると、その相続人には「特別受益」が認められて遺産相続分を減らされる可能性があります。これを「特別受益の持ち戻し計算」といいます。

ただ、被相続人が特別受益の持戻計算を免除していたら、持ち戻し計算は行われません。また持ち戻し計算するとしても、具体的にいくらを遺産相続分から差し引くか決定しなければなりません。意見が割れてもめごとが発生します。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 遺産分割協議の際、生前贈与を受けた相続人が「贈与されていない、買い取ったものだ」「特別受益の持戻計算は免除されていた」と主張。他の相続人は持戻計算を行うべきと主張して、トラブルにつながる。

遺産を特定の相続人が管理している場合にも、相続トラブルが起こりやすいので要注意です。両親の生前から同居して財産管理をしていた相続人がいる場合、財産内容の開示を拒否したり「財産の使い込み」を疑われたりするケースが多いからです。

財産管理していた相続人は「使い込んでいない」と主張し、他の相続人は「使い込まれたから返還すべき」と主張してもめごとが激化します。話し合いで解決できない場合、裁判に発展する可能性もあります。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 両親と同居していた長男が、生前に親の預金通帳やその他の資産を管理していた。
    死後、他の兄弟が預金の開示を求めても長男が対応せず不信感が募り、他の兄弟が預金取引内容を調べてみると、使徒不明な出金や振り込みが発覚。長男家族による使い込みが疑われた。他の兄弟が長男へ説明や返還を要求しても長男が対応しなかったため、不当利得返還訴訟が提起されて大きなトラブルになった。

遺された遺言書の内容が不公平な場合も相続トラブルにつながりやすくなります。内容が不公平でも遺言書は有効になりますが、兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」が認められるからです。遺留分を侵害すると、死後に遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。

また遺言書に納得できない相続人が「遺言書は無効」と主張してトラブルになるケースも少なくありません。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 「遺言書は無効」と主張する相続人が現れて遺言無効確認調停や訴訟に発展する
  • 遺留分侵害額請求が起こってトラブルになる

関連記事 遺留分とは? 相続で最低限貰える遺産 請求可能相続人の範囲、割合

被相続人に、死亡時の家族以外の子どもがいるとトラブルに発展しやすいので要注意です。子どもには平等に相続権が認められるので、前婚の際の子どもや認知した子どもにも死亡時の家族と同等の相続権が認められます。お互いの立場や考え方が異なるので、遺産分割協議がまとまりにくくなります。

【よくある相続トラブルの例】

  • 前婚の際の子どもと死亡時の家族の配偶者や子どもが一緒に遺産分割協議を行うとき、遺産の分け方について意見が合わず対立してしまう
  • お互いが感情的になって話が進まない
  • 前婚の子どもや認知された子どもに連絡を取ろうとしても無視されて話し合いを進められない

事業家や経営者の方が亡くなった際にもトラブルが頻繁に発生します。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 財産内容が複雑で分けにくい
  • 後継者になる相続人とそれ以外の相続人とで意見が合わない
  • 遺産分割が紛糾し、後継者が必要な株式や資産を承継できず経営が頓挫してしまう、会社が廃業に追い込まれる

被相続人に内縁の配偶者がいて婚姻届を提出していない場合、内縁の配偶者には相続権が認められません。以下のようなトラブルが発生するケースが多々あります。

【よくある相続トラブルの事例やケース】

  • 法定相続人である子どもが内縁の配偶者へ居住している家からの退去を要求
  • 法定相続人である子どもが預貯金などの資産を相続して内縁の配偶者が生活に困る
  • 特別縁故者として遺産の分与を受けるため、内縁の配偶者が手続きをしなければならない負担がかかる

関連記事 内縁の妻や夫に相続権はない! 対策は贈与と遺贈の活用

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相続トラブルを予防するには、生前に以下のような準備をしておきましょう。

まずは家族でしっかり話し合うべきです。被相続人の希望や考え方、遺産内容や管理方法なども親族間で共有しておきましょう。年末年始など家族が集まる機会はチャンスです。

相続のことは子どもから親に切り出しにくいものですが、まずは親子間のコミュニケーションを続けることを大切にし、身近な話題から入りつつ、相続にまつわる話を少しずつ積み重ねていくといいでしょう。また、親子で一緒に終活や資産運用のセミナーなどのイベントに参加すると、問題意識を共有するきっかけにもなります。

相続トラブルの防止に遺言書作成は必須です。ただし、あまりに不公平な内容にすると、遺留分を侵害してトラブル要因になってしまう可能性があります。内容面にも配慮して遺言書を作成しましょう。

また要式不備で「無効」と主張されないように、公正証書遺言を利用するようお勧めします。

家族信託(民事信託)を利用して相続トラブルを避けられるケースもあります。たとえば生前から死後にかけての財産管理方法や死後の財産帰属先を取り決めることが可能です。

認知症などの不安があるなら、後見制度を利用して適切な方法で財産管理すべきです。元気なうちであれば任意後見制度を利用できますし、判断能力が衰えてしまったら裁判所へ申し立てて法定後見制度を適用しましょう。

上記で紹介した「相続で揉める家族の特徴」に該当しているなら、弁護士へ相談するようお勧めします。ご家族の状況に応じたベストな解決方法を提示してくれますし、遺言書作成や民事信託の設定、後見制度の利用などの具体的なサポートもしてもらえます。もめてしまってからでは遅いので、先手を打って対応しましょう。

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実際に相続争いが生じてしまった場合にも、早めに弁護士へ相談すべきです。弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。

法定相続分や寄与分、特別受益などの法律の正しい考え方を教えてもらえるので、遺産分割の方針を定めやすくなります。相手が間違ったことを言っていれば根拠をもって説得できます。

相手ともめてしまったときには代理交渉を依頼できます。当事者同士の感情的な対立を防げますし、自分で対応しなくてよいので労力がかかりません。ストレスも大きく軽減できます。

交渉が決裂して遺産分割調停や審判、その他の訴訟が生じた場合にも弁護士に任せていれば安心で、労力もかかりません。

知識やノウハウを蓄積している相続に詳しい弁護士が交渉や裁判手続きを行うと、有利に解決できる可能性が大きく高まります。

相続でもめる家族に特別な事情はありません。ごく一般的な普通の家庭でもトラブルは生じます。もめごとを避けるには「相続トラブルは決して他人事ではない」自覚をもって、生前から予防対策をしておく必要があります。自分たちでどのような対応をしてよいかわからない場合、相続に積極的に取り組んでいる弁護士へ相談してみましょう。

(記事は2022年12月1日時点の情報に基づいています)