目次

  1. 1. きょうだい間の相続争いなんて関係ないと思っていません?
  2. 2. きょうだい(被相続人の子)の相続分
  3. 3. 兄弟間で起きやすいトラブルと予防策
    1. 3-1. 相続財産が不明確
    2. 3-2. 同居の子と他のきょうだいの寄与度
    3. 3-3. 不動産しか財産がない
    4. 3-4. 生前贈与・遺言が不公平
    5. 3-5. 音信不通のきょうだいがいる、知らないきょうだいが現れる
    6. 3-6. 兄弟の配偶者が口を出す
  4. 4. トラブルが起きてしまったら
  5. 5. まとめ

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夏目漱石の小説「こころ」で、先生(登場人物)は、私(主人公)に具合の悪い父親から財産分与を受けておくべきと提案した後、「悪い人間という一種の人間……そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです」と語っています。
相続争いは、特別な人たちの間ではなく「普通の家族」の間で繰り返されているのです。

民法上、相続人になる人と、その相続分は法定されています。亡くなった方(被相続人)の配偶者は、常に相続人です。子どもがいれば、子どもも相続人になります。子どもが複数人いる場合、その法定相続分は均等です。たとえば、配偶者がなく、相続人が子ども3人であれば1/3ずつです。

もし、生前贈与(相続財産に組み入れるべき贈与に限る)や遺贈などにより、法定相続分の財産を相続できない場合でも、法律上、一定額(遺留分)は保障されており、遺留分に満たない分については、生前贈与や遺贈を受けた人から金銭の支払いを受けることができます。子どもの遺留分は、法定相続分の1/2で、上記の例では相続財産の1/6になります。

相続が起きた時、どのようなケースがトラブルになるのか、予防策ととともに六つにまとめました。

両親と同居する長男と、別居の長女がいる家族を具体例として想定してみましょう。両親の死後、長男は「長女が期待したほどの相続財産がない」と言います。一方、長女は、「長男が両親の財産を隠匿している」と思い込み、トラブルになることがあります。

こういったトラブルを予防するには、最低限、両親に財産目録を作成してもらうのがポイントです。もし、両親から財産管理を頼まれた場合には、預かった財産の目録を作り、収支の記録を残しておくことも必要です。財産目録を定期的に見直すとともに、関係者に見せて内容を把握しておいてもらうことも大切です。

上記の例で、長男は両親の日常の世話や財産管理を行い、長女は月に一度、両親を外食に連れ出し、年に一度は海外旅行に連れて行っていたとしましょう。もしかすると、長男と比べて長女のほうが、より多くのお金を両親のために使ったかもしれません。

一方、長男にとっては、毎日、同居する両親の面倒をみることはかなりの負担だったかもしれません。このような場合、長男も長女も「自分のほうがより多くを負担した」と考えていれば、法定どおり均等に財産を分けることに納得できないでしょう。

自分がどれだけ両親に尽くしているか、きょうだいは、意外と互いにわかっていないことが多いのです。両親の生前から、自分が両親に対してどのようなことをしているか、それがどの程度の負担になっているかをきょうだいに伝えるとともに、きょうだいがやっていることも把握して、お互いに相手のことを理解するよう心がけることが必要です。

また、生前の感謝の気持ちを親に遺してもらうことも一つの方法です。子どもに対しての感謝とともに、遺産分割にどのように反映させたいかを遺言に書いてもらうことです。遺言で故人の意思が確認できれば、一見不公平に思える分け方であっても、受け入れられることも多いのです。

相続財産が実家しかない際も、揉め事が起きることがあります。たとえば、長女は、実家は長男が相続することを了承するとしても、なにがしかの見返りが欲しいと思うと、トラブルになるケースもあります。

この場合も、両親に遺言を作成してもらっておくのが一つの予防策です。両親に生命保険を掛けて、受取人を長男にすることも有効です。生命保険金は、相続財産ではなく長男の個人財産になります。こうしておけば、長男は実家を相続する代わりに、保険金で長女に代償金を支払うことができるでしょう。

上記の例で、実家の他にも多額の財産があるとします。生前贈与や遺言により、長男に実家を含め、全財産を引き継がせても違法ではありません。しかし長女は、法定相続分はもらえると期待を持っていた場合には、トラブルの原因になりうるでしょう。

ほかにも、たとえば、「長男は両親から留学費用を出してもらった」とか、「長女の子どもの教育費は両親が負担していた」などの事情がからむと、ますます複雑になっていきます。

トラブルを避けるためには、長男に全財産を渡す理由まで記載した生前贈与契約書や遺言書を作成しておくのが良いでしょう。また、可能であれば、事前に生前贈与や遺言することについて、長女も入れて話し合って理解しておいてもらうことも一案です。

このような対策をしても、全財産を長男に引き継がせると、相続開始後に長女から遺留分侵害額請求がなされる恐れがあります。こういったケースには、長女にも遺留分相当の財産を残すということがトラブル回避策となります。前述と同様、遺留分の支払いに備え、長男を受取人として生命保険を掛けておくのも一つの方法です。

遺留分侵害額請求を防止できるよう、あらかじめ裁判所の許可を得て、長女に遺留分を放棄してもらうこともできます。裁判所は、(1)遺留分の放棄は自由意思によるものか、(2)遺留分放棄に合理的な理由と必要性があるか、(3)遺留分に相当する代償財産の取得など、遺留分放棄の見返りがあるかをみて許可決定をします。

上記の家族に、20代で実家を飛び出したきり、音信不通になった次男がおり、両親の死亡後に現れて、遺産をよこせと言ってきたとしましょう。長男も長女も、「次男は、親孝行を何もしなかったのだから、遺産を相続する権利はない」と考え、意見の対立が生じる可能性があります。また、長男も長女も兄弟は自分たちだけだと思っていたのに、弟であるという人が突然現れて、遺産が欲しいという場合も、同様の対立が起こり得ます。逆に、そのような兄弟に連絡が取れない場合には、遺産分割協議ができず、遺産が凍結されてしまう場合もあります。

自分たちに知らないきょうだいがいるか否かを確認するには、両親の出生までさかのぼって戸籍(改製原戸籍)を調べることができます。他にきょうだいがいないことが不明確であれば、あらかじめ調べておくことをおすすめします。他にも、きょうだいがいることが判明したり、音信不通のきょうだいがいたりする場合には、財産の分け方について、両親に遺言書を作成してもらっておくのが良いでしょう。

遺言があれば、遺産分割協議の必要がないので、連絡の取れないきょうだいがいても、遺言でもらった財産は自由に使うことができます。ただし、連絡の取れないきょうだいの遺留分が侵害されている場合には、相続開始から10年間は遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

上記の例で、両親と同居していた長男が実家を相続し、長女自身は何ももらえなくてもいいと思っていたとします。しかし、長女の配偶者が「もらえるものはもらうべきだ」と言って、口を出してくることもあるでしょう。長男としては部外者であるはずの配偶者からとやかく言われることは面白くなく、感情の対立を招くことがあります。

こういった場合、配偶者に口を出すなと言っても、なかなか聞いてもらえるものではありません。両親の生前から配偶者も交え、将来の遺産分割について、一定の方針を協議しておくということも考えましょう。

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トラブルが起きたら、まずは、正しい情報を開示して、真摯に話し合いをすることが重要です。当事者だけで解決できない場合には、弁護士を入れて協議することもできます。また、裁判所の家事調停や審判を利用すれば、中立的な第三者を入れて協議し、判断を仰ぐことができるでしょう。

兄弟間の仲が良くても安心せず、生前から配偶者も入れて兄弟間の意思疎通を円滑にし、必要に応じて両親に遺言を書いてもらったりして準備しておくことが肝要です。そして、協議が難航しそうだと思った場合には、こじれてしまわないうちに、弁護士など早めに第三者の介入をおすすめします。

(記事は2022年2月1日時点の情報に基づいています)

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