目次

  1. 1. 兄弟姉妹だけが遺産相続する2つのケース
  2. 2. 兄弟姉妹間の遺産分割で起きやすいトラブルと解決方法
    1. 2-1. 遺産に占める不動産の割合が大きい
    2. 2-2. 親から生前贈与があった兄弟姉妹がいる
    3. 2-3. 生前の親の介護の貢献度に差がある
    4. 2-4. 遺言書の内容が不平等
  3. 3. 遺産分割の3つのポイント
    1. 3-1. 遺産分割のポイント①:誰が?(相続人の範囲)
    2. 3-2. 遺産分割のポイント②:何を?(遺産の範囲)
    3. 3-3. 遺産分割のポイント③:どのように分けるか?(遺産分割の方法)
  4. 4. 親が亡くなり、親の遺産を子ども(兄弟姉妹)だけで相続するケース
    1. 4-1. 法定相続分は平等
    2. 4-2. 遺留分に注意
  5. 5. 兄弟姉妹が亡くなり、兄弟姉妹の遺産を兄弟姉妹だけで相続するケース
    1. 5-1. 故人に配偶者がいれば兄弟姉妹が4分の1を相続
    2. 5-2. 遺留分はなし、相続税は2割増し
  6. 6. 実際の遺産の分け方について
  7. 7. 兄弟姉妹間の相続トラブル予防のためにも、遺言書作成を
  8. 8. まとめ 

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人が死亡したとき、その故人の財産は、相続する権利がある人(相続人)に対して自動的に引き継がれます。これを「相続」といいます。しかし、故人の財産(遺産)を、各相続人において、個別具体的にどう相続するかについては、法律で決まっているわけではありません。

そのため、人が死亡した場合、相続人全員で、遺産を具体的にどう分けるかを話し合いにより取り決めなければなりません。これが、いわゆる「遺産分割協議」です。一方で、故人の遺言書が存在する場合には、遺言書における遺産分割内容が優先され、原則として、遺産分割協議は不要となります。

兄弟姉妹だけが相続人となるケースは、次の2つが考えられます。

  • 親が亡くなり、親の遺産を子ども(兄弟姉妹)だけで相続するケース
  • 兄弟姉妹が亡くなり、兄弟姉妹の遺産を兄弟姉妹だけで相続するケース

兄弟姉妹であっても、それぞれが独立して仕事に就いたり家庭を築いたりすると、どうしても疎遠となり、互いの生活状況等が分からなくなってしまいがちです。いざ相続が始まって話し合いが必要になっても、お互いの生活状況等が分からず、自身のプライドや思い込みが先行してしまい、「よしなに」対応することができず、遺産分割協議がなかなか進まないということも考えられます。

兄弟姉妹間の遺産分割で起きやすいトラブルの例や、その解決方法を紹介します。

遺産に占める不動産の割合が大きいと、預貯金など他の遺産との兼ね合いで、どう分け合うかでトラブルになる可能性が高いといえます。換価分割(不動産を売却して換金して分け合う方法)や代償分割(特定の相続人が現物を相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法)などを考慮に入れて、相続人全員が納得できる分け方を考えましょう。

親から子ども(兄弟姉妹)に生前贈与があった場合、贈与の金額がわかりにくい、兄弟姉妹の間で不平等感があるなどの理由により、遺産分割協議がまとまらないということがあります。

どうしても感情論が先に来てしまう場面ですが、他の相続人の生前贈与を指摘する場合には、できる限り故人の預貯金の取引明細等を調査し、客観的な証拠を揃えておくとよいでしょう。水掛け論とならないよう注意が必要です。

なお、もちろんケースバイケースではありますが、他の相続人から生前贈与の有無を争われた場合、最終的に裁判所において特別受益が認められないリスクもあります。そのため、できる限り相続人間の協議で解決することができるとよいでしょう。兄弟姉妹間となると、どうしても「遠慮」を欠いた物言いになりがちですが、礼節をもって「敵対」することなく解決できるよう工夫するとよいでしょう。

兄弟姉妹のうち、1人だけが親の生前に献身的に介護していたとすれば、その特別な貢献を「寄与分」として考慮して、その分多くの遺産を分けてほしいと主張するかもしれません。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の手続において寄与分を求めることができますが、思い通りに認められるケースは多くありません。

【関連記事】相続でもめやすい「寄与分」とは? 「長年の介護」が報われる要件や事例を解説

すでに述べたように、遺言書に遺産の分け方が書いてあれば、基本的には遺言書通りに遺産を分けることになります。しかし、遺留分(各相続人に民法で保障されている一定の価値的な割合)が侵害されている場合は、トラブルになりがちです。たとえば、両親が亡くなって子ども3人だけで相続するケースで、親の遺言書に「すべての財産を長男に」のような内容が書いてあった場合には、ほかの兄弟姉妹は長男に対して上記遺留分を侵害されたとして、その侵害された分に相当する金銭の支払いを求めることができます(遺留分については詳しく後述します)。

ここからは、遺産分割全般のポイントを説明したうえで、兄弟姉妹が相続人になる2つのケースについても考えていきます。

上述したとおり、遺言書があれば遺産分割協議は基本的に必要ありませんが、実際に、遺言書を書いて亡くなる人の割合は決して高くはないため、今回は、故人が遺言書を書いていない場合、すなわち遺族が遺産分割協議により遺産を分けなければならない場合を中心に解説したいと思います。

「遺産の分け方」については、以下の3つのポイントを押さえるとよいでしょう。

  1. 誰が?(相続人の範囲)
  2. 何を?(遺産の範囲)
  3. どのように(分けるか)?(遺産の分割方法)

遺産分割協議においては、相続人全員で協議しなければならないため、誰が「相続人」となるのか、その範囲が重要となります。故人の財産を相続する権利を持つ「相続人」の範囲については、民法上、以下のとおり定められています(これを法定相続人といいます)。

常に相続人となる遺族        配偶者
配偶者以外で相続人となる親族    第1順位 子
                  第2順位 直系尊属
                  第3順位 兄弟姉妹

配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります。また、配偶者以外で法定相続人となれる親族は順序が決まっています。

まず、第1順位についてです。故人に子がいる場合には、その子が相続人となります。相続人である子が既に他界している場合でも、既に亡くなった子に子がいる場合には、その子が相続人となります。これを「代襲相続」といいます。

次に、第2順位についてです。故人に子がいない場合(第1順位がいない場合)には、直系尊属(故人の親をイメージするとよいでしょう)が、相続人となります。父及び母の両方がご存命の場合には、両親ともに相続人となります。また、父又は母のどちらかがご存命の場合には、その存命中の親が相続人となります。

最後に、第3順位についてです。故人に子がおらず、また故人の両親等の直系尊属が全員他界されている場合には、故人の兄弟姉妹が相続人となります。

次に、遺産分割協議において「分ける」対象となる遺産の範囲です。残念ながら、人が亡くなったときに、その人の遺産が自動的にリストアップされるような仕組みは存在しません。
そのため、故人の財産については、相続人が地道に財産の調査をして、故人の遺産の全容を明らかにしなければなりません。

遺産分割協議においては、故人の遺産をどう分割するかについては、相続人全員で合意する必要があります。ポイントは、以下の2点です。

  1. 相続人全員が遺産分割協議に参加すること
  2. 相続人全員が遺産分割協議内容に合意すること

遺産の「分け方」については、民法は法定相続分(各法定相続人の取り分として定められた割合、下記に詳細)を定めていますが、相続人全員で合意すれば、どのように分けてもかまいません。

ただ、1人でも納得しない相続人がいる限りは、相続手続きが終了せず、最悪の場合、裁判手続等によって解決をしなければならないこととなり、法定相続分をベースとした分割方法により解決をせざるを得ないこととなります。

【法定相続分】
法定相続分については、民法では以下のとおり規定されています。なお、子、直系尊属、兄弟姉妹が2名以上の場合、各自の相続分は相等しいものとされているため、以下の相続分を頭数で等分することとなります。

子と配偶者が相続人の場合    :配偶者の相続分  1/2
                 子の相続分    1/2
配偶者と直系尊属が相続人の場合 :配偶者の相続分  2/3
                 直系尊属の相続分 1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 :配偶者の相続分  3/4
                 兄弟姉妹の相続分 1/4

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このケースにおいては、法定相続人は相続順位が第1順位の子ども(兄弟姉妹)だけとなります。

親が亡くなった場合、まずは遺言書の有無を確認しましょう。遺言書が存在していれば、遺産分割協議を回避することができるためです。

遺言書がない場合は、相続人である子ども(兄弟姉妹)全員で遺産分割協議で話し合いをする必要があります。遺産を法定相続分で分けるならば、子ども全員で等分するように分割します。子ども全員が合意すれば、法定相続分以外の割合で分割することができます。

遺言書があって、遺産の分割方法を指定している場合でも、相続人全員が合意をすれば、遺言書とは異なる分け方で遺産分割することが可能です。

また、遺言書が見つかったら、遺留分が侵害されていないかどうか確認しましょう。

両親が亡くなり子ども(兄弟姉妹)だけで相続するケースでは、2分の1を子どもの人数で割った割合が、1人あたりの遺留分の割合となります。たとえば子どもが3人の場合は、6分の1が遺留分の割合となります。6分の1より少ない財産しか分けてもらえなかった兄弟姉妹は、多くもらった他の兄弟姉妹に「遺留分侵害額請求」という形で不足分(侵害された分)を請求することができます。

自分自身の取り分に納得がいかない場合には、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

具体的には、相続順位が第3位の兄弟姉妹が相続人となるケースです。

亡くなった兄弟姉妹に子(第1順位)がおらず、両親や祖父母などの直系尊属(第2順位)も全員亡くなっている場合は、ほかの兄弟姉妹も相続人となります。配偶者は常に相続人になるので、配偶者がいる場合は配偶者と故人の兄弟姉妹が相続人となり、配偶者がいない場合は故人の兄弟姉妹だけが相続人となります。

もしも相続人である兄弟姉妹が既に他界している場合でも、既に亡くなった兄弟姉妹に子(甥または姪)がいる場合には、その子である甥や姪が代襲相続します。ただし、甥や姪もすでに亡くなっていれば、甥や姪の子に再び代襲相続することはありません。

法定相続分は、故人に配偶者がいる場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1となり、兄弟姉妹が複数いる場合には4分の1をさらに等分します。配偶者がいない場合には、兄弟姉妹がすべての遺産を等分することになります。

なお、亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分の権利がありません。したがって、故人の遺言書に「すべての財産を配偶者に相続させる」と書いていた場合でも、ほかの兄弟姉妹は遺留分を主張することはできません。 

また、相続税は配偶者と子、父母(1親等の血族)以外が相続税を支払う場合は、相続税が2割加算されます。したがって、兄弟姉妹が亡くなり、ほかの兄弟姉妹が相続するケースでは、相続税は2割加算となります。

理想的には、法定相続分をベースとしつつも、故人との生前の関係や各相続人の状況等に照らして現物をそのまま配分することで、よしなに遺産を分けたいところです(なお、このような分け方を「個別配分(「現物分割」と呼ぶこともあります)」といいます)。

しかし、残念ながら、遺産の財産構成や相続人間の関係次第では、このようによしなに遺産を分けることができず、遺産の分け方をめぐり相続人間で対立してしまうことも少なくありません。特に、不動産等については、価値が高額となりやすい一方で、現預金のように簡単に分割することができず、兄弟姉妹の間でも相続トラブルの原因となることが多いといえます。

このような場合には、以下のような手法を用いて対処することとなります。

  • 現物を分割して分け合う現物分割(具体例として、土地を法定相続分の割合をベースに分筆して分け合うケースや共有とするケースがあげられます)
  • 売却等により換金して分け合う換価分割
  • 特定の相続人が現物を相続する代わりに、他の相続人に対し、各自の相続分に見合う金銭を支払う代償分割
  • 特定の相続人が取得し、他の相続人に対し、利用権を設定

【関連記事】「換価分割」とは 遺産分割協議書の書き方や税金、売却までの期間について解説!

兄弟姉妹の間の相続トラブルを回避するため、生前から遺言書を作成し、遺産分割方法を指定しておくとよいでしょう。ただし、遺留分に配慮する必要があります。

遺言書なんて書けないという方は、最低限、自身の財産をリストアップしておくとともに、子との財産のやり取り(生前贈与の状況等)や遺産の用途に関する希望(揉めるくらいならば、自宅は売却してほしい等)等をエンディングノートに残しておく等の対策をしておくとよいでしょう。もちろん、このような手法について、法的な効力は認められませんが、相続人間の遺産分割協議において一定の心理的な効力を発揮することがあります。

以上、遺産の分け方のルールや注意点とともに、兄弟姉妹間の相続トラブルの原因や予防・解決方法について解説しました。もめてしまったとき、またはもめてしまいそうなときは、早めに弁護士に相談されるとよいでしょう。弁護士に事前相談をしておくことで、遺産分割協議での失敗を避けることが可能となります。

(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)

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