目次

  1. 1. 遺産を分ける3つの方法
  2. 2. 換価分割のメリットやデメリット、適しているケース
    1. 2-1. メリット
    2. 2-2. デメリット
    3. 2-3. 換価分割が適しているケース
  3. 3. 換価分割の遺産分割協議書の書き方は2種類
    1. 3-1. 共同登記
    2. 3-2. 単独登記
  4. 4. 共同登記と遺産分割書の書き方
    1. 4-1. メリット
    2. 4-2. デメリット、注意点
    3. 4-3. 遺産分割協議書の書き方
  5. 5. 単独登記と遺産分割書の書き方
    1. 5-1. メリット
    2. 5-2. デメリット、注意点
    3. 5-3. 遺産分割協議書の書き方
  6. 6. 遺産分割協議書作成後、売却するまでの期間と注意点
  7. 7. 換価分割でかかる税金
    1. 7-1. 相続税は課税されない
    2. 7-2. 譲渡所得税は課税される
  8. 8. まとめ

「相続会議」の弁護士検索サービス

遺産を分割する方法には、換価分割を含め以下の3つがあります。
●現物分割
●換価分割
●代償分割

現物分割は最も一般的な方法で、土地や建物、株式や現金などの財産を、現物のまま相続人の間で分割します。

換価分割とは不動産などの遺産を売却し、得られた売却金を法定相続人の間で分配する方法です。たとえば子どもたち3人が相続人となり、3000万円の不動産があった場合、不動産を売却して1000万円ずつ受け取るのが換価分割です。

代償分割は、特定の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に「代償金」を支払う分割方法です。

換価分割の特徴などをおさえましょう。

公平に遺産分割できる
換価分割では、現物分割のように誰か1人だけが遺産を取得することはありません。代償分割でも不動産の評価方法の違いなどで不公平感が生まれるケースがありますが、換価分割の場合にはそういった問題もありません。

評価を巡る争いが発生しない
代償分割では不動産の評価方法の違いから、評価額を巡って相続人の間で争いになりやすいですが、換価分割なら、シンプルに不動産を売ってお金を分けるだけです。

代償金の用意も不要
代償金を払えない場合には代償分割できません。換価分割なら、相続人の誰にも資力がないケースでも問題なく進められます。

安くしか売れない可能性がある
換価分割をするとき、売り急ぐと不動産は安値でしか売れない可能性が高まるので、相続人全員が損をすることも少なくありません。

諸経費が引かれる
換価分割するとき、不動産の売却代金から不動産仲介手数料等の諸経費も引かれるので、入ってくる金額が期待していたより少なくなるケースが多々あります。

資産が失われる
不動産を所有していると将来的に価値が上がったり、賃貸活用して利益を得られたりする可能性がありますが、売却するとそういった可能性が失われます。

税金が発生するケースがある
換価分割を選択すると、相続税以外に「譲渡所得税」が発生する可能性があります。ただし相続税を支払った場合、確定申告することによって所得税が軽減されます。

以下のようなケースは換価分割が向いています。
●誰も対象遺産の相続を望まない
●公平に相続したい
●代償金を支払えない
●相続税の納税資金にしたい

相続で、後悔したくない方は必読!
相続はまず弁護士に無料相談 相談すべき状況・アドバイスの内容・弁護士の選び方を解説
相続はまず弁護士に無料相談 相談すべき状況・アドバイスの内容・弁護士の選び方を解説

遺産分割協議で遺産の不動産を換価分割することになった場合、遺産分割協議書の書き方が2種類あります。

そもそも換価分割の際には、被相続人名義のまま不動産を売却することができません。いったん相続人名義に書き換えて相続登記をし、その後買主へ登記を移転する必要があるからです。このとき、どの相続人の名義にするのかが問題となります。以下の2つの方法があり、それぞれ遺産分割協議書の書き方が異なります。

共同登記とは、共同相続人全員の名義に書き換えて売却する方法です。いったん相続人全員の共有状態に名義変更し、そこから買主へと所有名義を移転します。

単独登記とは、、代表者名義に変えて売却する方法です。相続人の代表者を定めて1人の名義に変更し、その相続人から買主へと所有名義を移転します。

以下でそれぞれにおける遺産分割協議書の書き方やメリット・デメリットをみていきましょう。

弁護士への相続相談お考え方へ

  • 初回
    無料相談
  • 相続が
    得意な弁護士
  • エリアで
    探せる

全国47都道府県対応

相続の相談が出来る弁護士を探す

まずはいったん相続人全員の名義で相続登記してから、買主へと所有名義を移転する場合についてご説明します。

相続人全員の共有名義にする場合、相続人間で話し合って代表者を決める必要がありません。誰を代表者にするかで意見が合わずにトラブルになるリスクが低下します。また登記が実態に即したものとなるため税金関係などの問題が起こりにくいメリットもあります。

共同相続人全員の名義にすると、全員が不動産売買の当事者となって関わらねばなりません。不動産会社との媒介契約や売買契約書、重要事項説明書などのあらゆる場面において相続人全員が署名押印しなければならず、手間がかかるデメリットがあります。

子どもたち3人(甲・乙・丙)が法定相続人となり、それぞれの法定相続分が3分の1ずつのケースを考えてみましょう。

次に相続人の代表者名義で相続登記した後、売却を進める場合をみてみましょう。

代表者が1人で売却手続きを進められるので、手続きが簡単です。媒介契約書や売買契約書も1人が署名押印すれば足りますし、重要事項説明も1人が受ければ十分です。
スムーズに売却活動を進めやすいメリットがあるといえるでしょう。

誰か1人を代表者にする必要があるため、相続人間で意見が合わないとトラブルになりやすい問題があります。代表者が受け取った売却金を使い込んでトラブルになるリスクも発生します。
また所有名義人となった代表者のもとに固定資産税の納税通知が届くので、誰が支払うべきかでトラブルになる可能性が考えられるでしょう。長期に渡って売らずに放置した後で売却すると「贈与税」がかかるリスクも発生します。

子どもたち3人が共同相続人となってそれぞれの法定相続分が3分の1ずつ、いったん「甲」の名義に変えて換価分割するケースを例に、みてみましょう。

換価分割するとき、遺産分割協議書の作成後、いつまでに不動産を売却すればよいのでしょうか?

実は法律上、換価分割の売却期間に関する定めはありません。遺産分割協議後1年後、3年後、10年後に売却してもペナルティは適用されないのです。

しかし特に単独登記の後に売却することを選択した場合、速やかに売却しないと税金上の問題が発生するので注意しましょう。あまりに期間が空くと「代表者」から他の相続人へ「売却金を贈与した」とみなされる可能性があります。

換価分割の際、遺産分割協議書にきちんと「換価分割のために便宜上名義変更する」と明記されていれば、基本的には贈与税は課税されません。しかし遺産分割協議書の作成後も売却活動を行わず、数年後に売却すると、実態としては「贈与」とみなされる可能性が高くなってしまいます。早めに売却しないと贈与税がかかる可能性があるのです。

また不動産を所有していると固定資産税も発生します。固定資産税の納税通知は代表者の元に届くので、いったん代表者が払って他の相続人に清算を求めなければなりません。
共同名義にする場合にも、誰が代表で固定資産税の納税通知を受け取るか決めて役所へ申請する必要があります。
その際、相続人同士でうまくやりとりができずもめてしまうケースが少なくありません。

このように、不動産を売らずに長めに所有していると税金上の問題でリスクやトラブルに発展する可能性が高まります。できるだけ早めに売却するのが得策といえるでしょう。

換価分割した場合、上記のように売却が遅い場合には贈与税がかかる可能性があり、また、不動産を所有している間は固定資産税が発生します。その他、相続税は課税されませんが、譲渡所得税は課税されるケースもあります。

相続税は、相続が開始された時点の相続財産の評価額に対して課税されます。例えば土地の場合は、路線価方式や倍率方式によって計算した評価額で計算することになります。

換価分割をした場合の売却価格は、相続財産の評価額とは関係がありません。したがって、売却価格に相続税が課税されることはありません。

換価分割をして譲渡所得を得た場合は、譲渡所得税が課せられる可能性があります。譲渡所得税がかかると住民税もかかります。譲渡所得とは、不動産の売却で得た利益のことで、不動産を購入するときにかかった費用(取得費)と売るときにかかった費用(譲渡費用)を足した金額を差し引いて求めます。

譲渡所得(売却益)=売却価格-(取得費+譲渡費用)

売却益が出れば譲渡所得税が課税されますが、居住用不動産を譲渡した場合や相続した空き家を譲渡した場合など、譲渡所得税の負担が軽くなる特例があります。

譲渡所得税の税率は、売却した不動産の所有年数によって変わります。基本的には以下の通りです。

●所有年数が5年以内(短期譲渡所得):所得税30%+住民税9%+復興特別所得税
●所有年数が5年超(長期譲渡所得):所得税15%、住民税5%+復興特別所得税

不動産を換価分割するときには、「共同相続人全員の名義にする方法(共同登記)」と「代表者名義にする方法(単独登記)」の2つのうち、適切な方法を選択する必要があります。それぞれ「遺産分割協議書」の書き方も異なるので、正しい知識を持って対応しましょう。

スムーズに手続きをしないと贈与税などの課税関係も心配です。自分たちだけでは不安を感じる場合には、早めに弁護士に相談してみてください。

(記事は2022年9月1日現在の情報に基づいています)

「相続会議」の弁護士検索サービス