1.換価分割の場合の遺産分割協議書の書き方

1-1.換価分割とは

換価分割とは不動産などの遺産を売却し、得られた売却金を法定相続人間で分配する遺産分割方法です。
たとえば子どもたち3人が相続人となり、3000万円の不動産があったとしましょう。
このとき不動産を売却して1000万円ずつ受け取るのが換価分割です。
換価分割には、要らない遺産を処分できて公平に遺産分割できるメリットがあります。

1-2.換価分割の遺産分割協議書の書き方は2つ

実は換価分割の場合「遺産分割協議書」の書き方が2種類あります。

そもそも換価分割の際には、被相続人名義のまま不動産を売却することができません。いったん相続人名義に書き換えて、その後買主へ登記を移転する必要があるからです。

このとき、どの相続人の名義にするのかが問題となります。以下の2つの方法があり、それぞれ遺産分割協議書の書き方が異なります。

●共同相続人全員の名義に書き換えて売却する
いったん共同相続人全員の共有状態に名義変更し、そこから買主へと所有名義を移転する方法です。

●代表者名義に変えて売却する
相続人の代表者を定めて1人の名義に変更し、その相続人から買主へと所有名義を移転する方法です。

以下でそれぞれにおける遺産分割協議書の書き方やメリット・デメリットをみていきましょう。

2.相続人全員の名義に変える方法

まずはいったん相続人全員の名義に換えてから、買主へと所有名義を移転する場合についてご説明します。

2-1.メリット

相続人全員の共有名義にする場合、相続人間で話し合って代表者を決める必要がありません。誰を代表者にするかで意見が合わずにトラブルになるリスクが低下します。
また登記が実態に即したものとなるため税金関係などの問題が起こりにくいメリットもあります。

2-2.デメリット、注意点

共同相続人全員の名義にすると、全員が不動産売買の当事者となって関わらねばなりません。
不動産会社との媒介契約や売買契約書、重要事項説明書などのあらゆる場面において相続人全員が署名押印しなければならず、手間がかかるデメリットがあります。

2-3.遺産分割協議書の書き方

子どもたち3人(甲・乙・丙)が法定相続人となり、それぞれの法定相続分が3分の1ずつのケースを考えてみましょう。

3.代表者名義に変える場合

次に相続人の代表者名義に変えた後、売却を進める場合をみてみましょう。

3-1.メリット

代表者が1人で売却手続きを進められるので、手続きが簡単です。媒介契約書や売買契約書も1人が署名押印すれば足りますし、重要事項説明も1人が受ければ十分です。
スムーズに売却活動を進めやすいメリットがあるといえるでしょう。

3-2.デメリット、注意点

誰か1人を代表者にする必要があるため、相続人間で意見が合わないとトラブルになりやすい問題があります。代表者が受け取った売却金を使い込んでトラブルになるリスクも発生します。
また所有名義人となった代表者のもとに固定資産税の納税通知が届くので、誰が支払うべきかでトラブルになる可能性が考えられるでしょう。長期に渡って売らずに放置した後で売却すると「贈与税」がかかるリスクも発生します。

3-3.遺産分割協議書の書き方

子どもたち3人が共同相続人となってそれぞれの法定相続分が3分の1ずつ、いったん「甲」の名義に変えて換価分割するケースを例に、みてみましょう。

4.遺産分割協議書作成後、売却するまでの期間と注意点

換価分割するとき、遺産分割協議書の作成後、いつまでに不動産を売却すればよいのでしょうか?

実は法律上、換価分割の売却期間に関する定めはありません。遺産分割協議後1年後、3年後、10年後に売却してもペナルティは適用されないのです。

しかし特に「代表者名義に変えて売却する方法」を選択した場合、速やかに売却しないと税金上の問題が発生するので注意しましょう。あまりに期間が空くと「代表者」から他の相続人へ「売却金を贈与した」とみなされる可能性があります。

換価分割の際、遺産分割協議書にきちんと「換価分割のために便宜上名義変更する」と明記されていれば、基本的には贈与税は課税されません。しかし遺産分割協議書の作成後も売却活動を行わず、数年後に売却すると、実態としては「贈与」とみなされる可能性が高くなってしまいます。早めに売却しないと贈与税がかかる可能性があるのです。

また不動産を所有していると固定資産税も発生します。固定資産税の納税通知は代表者の元に届くので、いったん代表者が払って他の相続人に清算を求めなければなりません。
共同名義にする場合にも、誰が代表で固定資産税の納税通知を受け取るか決めて役所へ申請する必要があります。
その際、相続人同士でうまくやりとりができずもめてしまうケースが少なくありません。

このように、不動産を売らずに長めに所有していると税金上の問題でリスクやトラブルに発展する可能性が高まります。できるだけ早めに売却するのが得策といえるでしょう。

まとめ

不動産を換価分割するときには、「共同相続人全員の名義にする方法」と「代表者名義にする方法」の2つのうち、適切な方法を選択する必要があります。それぞれ「遺産分割協議書」の書き方も異なるので、正しい知識を持って対応しましょう。

スムーズに手続きをしないと贈与税などの課税関係も心配です。自分たちだけでは不安を感じる場合には、早めに弁護士に相談してみてください。

(記事は2021年5月1日現在の情報に基づいています)