目次

  1. 1. 遺産相続に必要な手続きの期限
    1. 1-1. 期限のある相続手続き
    2. 1-2. いつを起点に期限を計算するのか?
  2. 2. 【7日】死亡届、火葬許可申請書
    1. 2-1. 死亡届の提出
    2. 2-2. 火葬許可申請書の提出
  3. 3. 【14日】年金受給停止、健康保険資格喪失や世帯主の名義変更の期限
    1. 3-1. 年金の受給停止
    2. 3-2. 健康保険の資格喪失
    3. 3-3. 世帯主の変更
    4. 3-4. 公共料金の名義変更
  4. 4. 【3カ月】相続放棄、限定承認の期限
    1. 4-1. 相続放棄、限定承認とは
    2. 4-2. 相続放棄や限定承認を検討すべきケース
    3. 4-3. 熟慮期間について
  5. 5. 【4カ月】準確定申告の期限
  6. 6. 【10カ月】相続税の申告・納付の期限
    1. 6-1. 相続税の申告期限に間に合わないときの対処法|延納と物納
  7. 7. 【1年】遺留分侵害額請求の期限
    1. 7-1. 遺留分侵害額請求とは
    2. 7-2. 遺留分侵害額請求の手続き
  8. 8. 【2年】死亡一時金の受取請求の期限
  9. 9.【3年】相続した不動産の名義変更(相続登記)
  10. 10. 【3年】生命保険金の請求期限
    1. 10-1. 遺産分割、相続税制上の取り扱い
  11. 11. 【5年10カ月】相続税の還付
  12. 12. 特に期限のない相続手続き
    1. 12-1. 遺言書の検認
    2. 12-2. 遺産分割協議・調停・審判
    3. 12-3. 銀行口座などの名義変更
  13. 13. 相続手続きの期限一覧表
  14. 14. まとめ 相続手続きは専門家に相談を

「相続会議」の弁護士検索サービス

身近な方が亡くなってから、様々な相続手続きが発生します。期限がある手続きと期限のない手続きがあるので分けて解説します。

相続手続きの中で期限のあるものは、主に以下のとおりです。

  • 死亡届、火葬許可申請書(7日以内)
  • 年金受給停止、健康保険資格や世帯主の名義変更(14日以内)
  • 相続放棄、限定承認(3カ月以内)
  • 亡くなった方の準確定申告(4カ月以内)
  • 相続税の申告、納付(10カ月以内)
  • 遺留分侵害額請求(1年以内)
  • 死亡一時金の受取請求(2年以内)
  • 生命保険の受け取り(3年以内)
  • 相続した不動産の名義変更(3年以内、2024年4月義務化)
  • 相続税の還付請求(5年10カ月)

遺産相続の手続きの期限はいつから計算するのでしょうか?「自分のために相続があったと知ってから日」です。民法でも、「相続は死亡によって開始する」という内容があり、基本的には血族の方が亡くなった日から起算することになります。

 以下でそれぞれの手続きの期限や対処方法を個別に説明します。

遺産相続の手続きで不安があれば、弁護士や税理士、司法書士などに早めに相談しましょう。無理に自分でやろうとすると期限に間に合わず、取り返しのつかないことになる可能性があります。

人が亡くなったら、まずは「死亡届」を提出しなければなりません。死亡届の提出期限は「死亡後7日間」とされています。遅れると「過料」というお金を払わねばならないペナルティーがかかる可能性もあるので、急ぎましょう。

死亡すると、親族は医師から「死亡診断書」または「死体検案書」を渡してもらえます。死亡届と死亡診断書はセットになっているので、死亡届の部分に必要事項を記入して市町村役場へ持参しましょう。役所の担当課で死亡届を提出すると、戸籍を書き換えてもらえます。必ず死亡後7日以内に済ませて下さい。

死亡届を提出する際、同時に火葬許可申請書を提出すると、役所から死体埋葬火葬許可証をもらえます。これがあれば火葬できるので、葬儀会社などと相談してお通夜や葬儀、火葬を済ませましょう。

被相続人が年金を受け取っていた場合、受給停止をしなければなりません。国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は死亡後10日以内に年金事務所へ報告しましょう。「受給権者死亡届」という書類を提出すれば年金を止めてもらえます。もしも死亡を報告せずに年金を受け取ってしまったら、後で返還しなければなりません。「不正受給」とされる可能性もあるので、早めに書類を提出しましょう。

健康保険や介護保険も資格喪失の手続きが必要です。国民健康保険は市町村役場、社会保険は加入している健康保険組合に連絡して書類を提出しましょう。また社会保険の被保険者が死亡すると、扶養されていた人は健康保険組合から「埋葬料」というお金をもらえます。忘れずに申請しましょう。

被相続人が住民票上の「世帯主」だった場合、役所で世帯主の変更届を出しましょう。

被相続人が公共料金の契約者だった場合、電力会社やガス会社へ連絡して名義変更しましょう。電話で対応してもらえるケースが多数です。期限は特にありません。相続手続きの流れについては、こちらの記事も参考にしてください。

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相続放棄と限定承認の期限は3カ月です。相続人の確定、財産の調査が終わると、相続人は下記の3つの相続方法を選びます。

  • 単純承認
  • 相続放棄
  • 限定承認

単純承認は、借金などのマイナスの財産も含めて被相続人の財産をそのまま相続することです。下記で説明する相続放棄や限定承認の手続きを3カ月なにもしなければ自動的に単純承認をしたことになります。

【関連】単純承認とは? 気づかないうちに借金を相続しないために知っておくべきこと

相続放棄とは、相続人の地位を捨てて資産も負債も一切承継しないことです。相続放棄した人は不動産や預貯金などの資産、借金や未払い税などの負債を一切相続しません。

限定承認は、相続財産の範囲で負債を相続することです。限定承認した場合、資産から負債を差し引いて残りがあれば相続しますが、マイナスになった場合には相続しません。

相続放棄をするためには家庭裁判所で「相続放棄の申述」、限定承認をするためには家庭裁判所で「限定承認の申述」を期限内に行う必要があります。

【関連】相続放棄は自分でできる? 手続きや注意点、専門家に依頼すべきケースを解説

相続放棄や限定承認を検討すべきケースについて一例を挙げます。

【相続放棄を検討すべきケース】

  • 明らかに債務超過の場合
  • 特定の相続人に遺産を集中したい場合

【限定承認を検討すべきケース】

  • 債務超過か資産超過か分からないが、資産超過なら相続したい場合

誰が相続人となるのか(相続人調査)、どのような遺産があるのか(相続財産調査)をしっかりと把握して相続方法を判断しましょう。思わぬ負債があったり、被相続人に離婚歴があると相続人が増えて相続分が減ったりすることも考えられます。生前から準備をしておき、相続方法は慎重に検討しましょう。

このように相続人がどのような相続方法を選ぶのかの期限は3カ月となっており、この期間を「熟慮期間」といいます(熟慮期間)。

熟慮期間の意味について、通常は「相続開始を知ってから3カ月以内」となります。ただし遺産がないと信じていてそのことに正当な理由があれば延長が認められるケースもあります。家庭裁判所で「熟慮期間延長の申立」という手続きをすることで、相続開始を知ってから3カ月経過後であっても相続放棄や限定承認が認められる可能性があります。

また相続手続きは相続順位によって期限が異なってきます。次順位以降の相続人の場合には「先順位の相続人が相続放棄したことを知ってから3カ月」が期限となります。詳しくは下記の記事をご参照ください。

【関連】相続放棄の熟慮期間とは? 3カ月過ぎたら「上申書」が有効 書き方を解説

準確定申告とは、被相続人の代わりに相続人が行う確定申告です。確定申告をするべき人が死亡した場合などには、相続人が準確定申告をしなければなりません。

相続人が相続開始を知った日の翌日から4カ月が期限となり、この期限を過ぎてしまうと延滞税が発生します。しかし、被相続人に申告する所得がない場合などは準確定申告の手続きは不要です。

【準確定申告をすべきケース】

  • 被相続人が事業を営んで確定申告していた場合
  • 被相続人に副収入があり確定申告義務があった場合
  • 被相続人の給与額が2000万円以上となっており、確定申告義務があった場合
  • 被相続人が確定申告によって還付金を受けられる場合

準確定申告の詳しい手続きや注意点は下記の記事をご参照ください。

関連記事:準確定申告の手続き、注意点をプロが解説 必要書類も

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相続税の申告や納付は、「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」に行う必要があります。申告だけではなく、納税までこの期限内にしなければなりません。期限以内に申告と納税をしないと、税金滞納状態になってしまいます。

まずは遅延日数に応じた延滞税(利子税)がかかり、税額が高額になります。税務署からも督促を受けるでしょう。放置していると、最終的に財産を差し押さえられる可能性もあります。

相続税をどうしても期限内に納められない方は「延納」や「物納」という方法を利用できる可能性があります。

延納とは、相続税を将来にわたって分割払いする方法です。延納を利用できるのは以下の4つの要件を満たす場合に限られます。

  1. 相続税額が10万円を超える
  2. 金銭で納付するのが困難
  3. 延納税額と利子税額に相当する担保を提供する(ただし延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合、担保は不要)
  4. 相続税の納付期限または延納申請期限までに、延納申請書に担保提供関係書類をつけて税務署長に提出する

物納は、延納でも税金の支払いが困難なケースにおいて、土地などの「物」で直接相続税を納付する方法です。

相続人は、相続できる最低限の財産が法律で保障されています。これを遺留分といいます。遺留分に関する手続きにも期限があるので、概要や期限について説明します。

相続が発生したとき、「遺留分侵害額請求」ができるケースがあります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。遺言や生前贈与などによって遺留分を侵害されると、侵害された相続人は侵害者へと「遺留分侵害額請求」ができます。

遺留分侵害額請求権にも期限があるので注意しましょう。「相続開始と遺留分侵害の事実」を知ってから1年以内に請求しなければ権利が消滅してしまいます。たとえば「父が死亡したこと」と「不公平な遺言書が遺されていたこと」の両方を知ったときから1年をカウントします。

また「相続開始から10年」が経過したときにも遺留分侵害額請求権が消滅します。この場合、相続人が「不公平な遺言や贈与」を知らないままでも遺留分侵害額請求ができなくなります。不公平な遺言や贈与に納得できないなら、早めに遺留分侵害額請求を行いましょう。

遺留分侵害額請求をするときには、内容証明郵便を使って侵害者へ「遺留分侵害額請求書」を送りましょう。これを1年の期限内に行えば、遺留分侵害額請求権が守られます。実際の金銭支払を1年以内に完了する必要はありません。

通知書を送っても無視される場合には、家庭裁判所で遺留分侵害額請求調停を申し立てましょう。それでも解決できなければ、最終的に地方裁判所で遺留分侵害額請求訴訟を提起して支払いを求めます。

死亡一時金とは、第1号被保険者が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給しないまま死亡した場合に被保険者と生計を同一にしていた遺族へ給付されるお金です。受け取るには年金を36か月以上納めていなければなりません。

死亡保険金として支払われる金額は保険料を納めた期間によって変わりますが、12万円~32万円となっています。国民年金法に定められる給付ですが、一時金なので給付は一度きりです。

死亡一時金は、被保険者の死亡後2年以内に請求しなければなりません。2年を過ぎると受け取れなくなってしまうので、該当する際には早めに年金機構へ連絡しましょう。

不動産の相続登記については、2022年時点では期限がありません。ただし2024年4月からは相続登記に期限が設けられます。基本的に「自分が相続や遺贈によって不動産を取得したことを知ってから3年以内」に相続登記をしなければなりません。正当な理由なく登記を怠ると10万円以下の過料が科せられることになります。

2024年4月になると、それ以前に相続した人にも義務化の規定が適用されるので、今不動産を相続した場合でも早めに相続登記しましょう。

被相続人が生命保険に入っていたら、指定された受取人が死亡保険金を受け取れます。保険金請求権には「3年」の時効があります。死後、忙しいからといって請求せずに放置していると時効によって保険金を受け取れなくなる可能性があるので、注意しましょう。また3年以内なら請求できるので、死後しばらく経ってから保険に加入していたことを知った場合でも手続きすれば保険金を受け取れます。早めに保険会社へ連絡しましょう。

死亡保険金は遺産分割の対象になりません。指定された受取人が単独で受け取れて、他の相続人へ分配する必要はありません。ただし「みなし相続財産」として、相続税は課税されるので注意しましょう。死亡保険金を相続する場合「法定相続人数×500万円」の控除が適用されますが、引ききれなかった部分には相続税がかかります。

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相続税を払いすぎた場合には、税務署への申告により還付を受けられます。還付される可能性があるのは以下のようなケースです。

  • 不動産の評価を誤った
  • 特例や控除を適用せずに計算した
  • 自分で相続税を計算して間違えた
  • 相続税計算に詳しくない税理士に依頼してミスが発生した

相続税の還付請求の期限は、相続税の納付期限後5年間です。つまり「相続開始を知った日の翌日から5年10カ月間」が還付請求の期限となります。相続税を払いすぎた可能性がある場合、早めに相続税に詳しい税理士に相談をして還付請求の手続きを進めましょう。

これまでは期限がある相続手続きを解説してきましたが、期限のない相続手続きもあります。

  • 遺言書の検認
  • 遺産分割協議・調停・審判
  • 銀行の預金口座などの名義変更

ただ期限がないものも早めに行う方が安心です。

遺言書の検認そのものには期限がありませんが、検認をしないままだと不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなどができません。検認には1カ月程度かかります。

遺産分割協議や調停、審判に期限はありません。ただこれらが解決しないといつまでも相続手続きが始められず、不動産や預金などを活用できません。また相続税の各種控除も適用できないので相続税が上がってしまう可能性もあります。遺産分割は可能な限り早めに行うのが良いでしょう。

銀行などの預金口座の名義変更や預金の解約払い戻しにも法定の期限はありません。ただ5年以上放置すると時効にかかってしまう可能性があります。10年が経過すると「休眠預金」扱いとなって公益活動に預金が流用されてしまうケースもあります。

時効にかかったり休眠預金扱いとなったりしても引き出しはできる場合が多いのですが、混乱を避けるためにも早めに手続きするのが良いでしょう。

以下は、これまで説明してきた相続手続きの期限の一覧表です。参考にして下さい。

一般的な相続手続きの流れを期限とともに表した一覧です。

遺産相続の手続きで迷ったら、すぐに専門家に相談しましょう。自分でできると思ってぎりぎりまで頑張ってしまうと、相談したときには期限に間に合わないおそれがあるためです。

たとえば相続放棄、限定承認の期限を過ぎると単純承認が成立し、借金を含めて全部相続せざるを得なくなります。

遺留分侵害額請求、死亡保険金などの期限を過ぎると権利行使ができなくなります。準確定申告、相続税の申告を怠ったら延滞税がかかって滞納処分(強制執行)を受けるおそれがあります。

こうしたペナルティーが発動されてから専門家に相談しても、取り返しがつかないケースが多いので、なるべく早めに相談してみてください。

相続手続きには期限つきのものがたくさんあります。期限のない相続登記などの手続も、放っておくとトラブルのもとになってしまいます。すべての相続手続きをスムーズに終えるには、専門家によるサポートが必要となるでしょう。

相続放棄や遺留分侵害額請求は弁護士、相続登記は司法書士、税金関係は税理士に相談し、滞りなく相続手続きを終わらせましょう。

(記事は2023年9月1日時点の情報に基づいています)

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