相続に関するさまざまな決まり事は「民法」という法律で定められています。民法の相続に関する条文は、1970年以来大きな見直しが行われておらず、その間の社会の変化、特に高齢化に対応できない部分が生じてきました。そこで、2018年に約40年ぶりに改正されました。今回の民法改正では、自筆証書遺言に関して2つの大きな変更点があります。

変更点の1つは“手書き”に関する要件が緩和されたこと、もう1つは法務局による自筆証書遺言の保管制度が創設されたことです。この点について解説します。

財産目録は自筆でなくてもOKに

自筆証書遺言はすべて手書きでないと法的に有効となりません。でも高齢になってくると、たくさんの文字を書くのが大変になってきます。また、遺言書には保有している財産すべてについて、それが特定できるように書き出す必要があります。例えば、預金口座のある銀行の支店名や不動産の所在地などです。特に不動産は、一般的な住居表示ではなく、不動産登記簿に記載されている地番などを書かなければなりません。

このような財産のリストは書き間違いが起こりがちで、間違っているために遺産分割ができなかったり、相続トラブルにつながったりすることもあります。

そこで、2019年1月13日以降に作成する自筆証書遺言については、財産目録の部分のみ、自筆でなくてもよいことになりました。
例えば、パソコンで入力してプリントアウトしたものでもかまいません。また、不動産については、法務局で発行された「登記事項証明書」の写しでもよく、預金等については、通帳の表紙のコピーでも可とされました。

遺言書の本文に、「長男 太郎には別紙1の不動産を相続させる」「次男 二郎には別紙2の預金を相続させる」と書き、別紙1として不動産登記事項証明書の写し、別紙2として預金通帳の表紙のコピーを添付するといった形です。

このとき、「別紙」のそれぞれに、遺言者の自筆の署名と捺印が必要な点には注意が必要です。

法務局が自筆証書遺言を保管

自筆証書遺言は比較的手軽に書くことができますが、書いた遺言書をどこかにしまい込むと、亡くなったとき誰にも見つけてもらえない可能性があります。遺言書を見つけた人が中身を書き換えたり、隠したり捨てたりしてしまうこともあるかもしれません。

また、自筆証書遺言は、遺言者が亡くなったとき、家庭裁判所で「検認」という手続きを行う必要があり、検認の申立から手続き終了まで1カ月程度の日数がかかります。

そこで、法務局が自筆証書遺言を保管する制度が設けられることになりました。保管するのは、遺言者の住所地または本籍地、遺言者が保有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。

保管の申請は、遺言者自身が行います。その際、本人確認が行われ、署名、捺印、日付の記載があるかどうかもチェックされるので、これらの不備で遺言書が無効になることが避けられます。

遺言者本人は保管された遺言書を閲覧したり撤回したりできますが、それ以外の人が遺言書を閲覧することはできません。遺言者が亡くなったとき、保管されている遺言書があるかどうかは、全国どこの法務局からでも調べることができ、相続人は遺言書の写し(遺言書情報証明書)を受け取ったり、遺言書が保管されている法務局で遺言書を閲覧したりできます。相続人のうちの誰かが遺言情報証明書の交付申込みや遺言書の閲覧申請をすると、それが他の相続人にも通知されます。

法務局による保管制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を受ける必要がないので、遺言者が亡くなったあと、すみやかに遺産分割の手続きができるのもメリットです。

自筆証書遺言を法務局で保管する制度は、2020年7月10日からスタートする予定です。具体的な手続き方法や手数料については、今後決まることになっています。

(記事は2019年11月1日時点の情報に基づいています)