目次

  1. 1. 相続税申告を依頼する税理士を選ぶ際に押さえておきたい5つのポイント
    1. 1-1. 「相続専門」を打ち出しているか
    2. 1-2. 相続税の申告件数が多いか
    3. 1-3. 相続の中で特化している分野があるか
    4. 1-4. 税理士報酬は適正か
    5. 1-5. 相続人の不安に寄り添えるか
  2. 2. 相続に強い税理士の探し方
    1. 2-1. インターネットで調べる
    2. 2-2. 口コミや紹介を受ける
    3. 2-3. 複数の税理士と面談する
  3. 3. 相続で税理士選びが必要な場面
    1. 3-1. 争いがなく、話し合いのついている相続
    2. 3-2. 「正味の遺産総額>基礎控除額」のとき
    3. 3-3. 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用するとき
    4. 3-4. 評価の難しい財産が多いとき
  4. 4. 相続で税理士に依頼したときのメリット
    1. 4-1. 申告作業で時間や手間をかけずに済む
    2. 4-2. 適切に節税してもらえる
    3. 4-3. 申告ミスを防げる
    4. 4-4. 税務調査にも立ち会ってもらえる
    5. 4-5. 二次相続などの相談にも乗ってもらえる
  5. 5. 相続税申告を依頼する税理士を選ぶときの注意点
    1. 5-1. 有料・無料問わず探す
    2. 5-2. 支払額の確認
  6. 6. 相続税申告を依頼する税理士の選び方に関して、よくある質問
  7. 7. まとめ

安心して相続税申告を依頼できる、相続に強い税理士を探すときは、次の5つの点を押さえるとよいでしょう。

  • 「相続専門」を打ち出しているか
  • 相続税の申告件数が多いか
  • 相続の中で特化している分野があるか
  • 税理士報酬が適正か
  • 相続人の不安に寄り添えるかどうか

以下で詳しく説明します。

相続税申告を扱う税理士事務所の中でも、相続専門を打ち出しているところは多くありません。企業の法人税申告など決算業務を中心業務にしている事務所がほとんどで、相続税申告は扱っても年に数件というのが実情です。当然、相続専門の事務所のほうが相続税申告件数は多く、経験豊富と考えられます。

一般的な税理士が1年間に行う相続税の申告の回数は1~2回程度です。一方、相続を専門とする税理士は、年に10件以上、相続税の申告書を作成します。規模が大きいところは年間数十件以上です。そしてそれだけノウハウを蓄積しています。

申告件数が多く経験豊富な税理士は、適切な申告や節税だけでなく、二次相続などのアドバイスも期待できます。

相続の内容は、地域や家、遺産によって変わります。都市部と地方では相続人や遺産の構成が異なります。中小企業の経営者の相続は、サラリーマン世帯と違い、自社株の評価が中心です。相続財産に賃貸アパートや海外資産があると、より深い専門性が求められます。「相続」と一口に言っても、実は多様なのです。

相続に強い税理士を探すにしても、それぞれの事情に合わせて探すとよいでしょう。沖縄の相続なら、現地の事情に詳しい税理士にお願いした方が安心です。中小企業オーナーの相続なら、事業承継や株式評価に強い税理士に頼めば、色々な助言が得られます。国際相続に強い税理士なら、資産所在地国での申告もケアしてくれるかもしれません。

税理士の報酬は事務所ごとに自由に決められるので、相続税申告を依頼した際の報酬額を一概にいうことは難しいのですが、「遺産総額×0.5%~1%」が目安になります。例えば、遺産総額が1億円であれば、50万円から100万円が相場といえるでしょう。

ただし、「相続人の数が多い」「複雑な地形の土地や非上場株式など評価が難しい財産がある」「相続税の納税額を抑えられる特例を適用する」「相続税の申告期限間際に依頼」のようなケースでは、追加報酬が発生することがあります。

税理士報酬が安いところに目が行きがちですが、あとから「成功報酬」として追加で請求するところもあり、結果的に高くついたという結果になることもあるので注意が必要です。「安いのがベスト」ではありません。適正な報酬で、誠実に相続人に向き合ってくれる事務所を選ぶのが得策といえるでしょう。

相続人は「正しく申告できるだろうか」「税金はどれくらいかかるのか」といった不安を抱えています。相続は何度も経験しないからです。このような場面で機械的に対応されると、依頼者は相談したいことも相談できず、不安を強めるかもしれません。

依頼するなら、相続に強いだけでなく、依頼者の不安に寄り添ってくれる税理士にした方がいいでしょう。些細な質問にも丁寧に答えてくれるので安心です。

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相続に強い税理士を探す方法は主に3つあります。

一つはウェブサイトです。検索した事務所の代表者の経歴やコラム、過去の依頼者の感想は、信頼できるかどうかの判断材料になります。また、地域名や財産の特色を加えて検索すると、自分に合った税理士を見つけやすくなります。相続会議のサイトでも相続に詳しい税理士が検索できます。

知人・友人に相談すると、相続に強い税理士を紹介してくれるかもしれません。この場合、人柄や印象的だった出来事を聞くとよいでしょう。ただし、相性は人それぞれです。紹介者が高く評価していても、自分と合うとは限りません。

上記2つの方法で探したら、必ず面談しましょう。このとき大事なのは、複数の税理士に会うということです。何人かに会う内に「ぜひこの人にお願いしたい」と思える税理士が出てきます。初回相談無料の税理士も多いので、比較検討した上で選ぶことをおすすめします。

ここまで、相続税申告を依頼する税理士の選び方をみてきましたが、相続で税理士選びが必要となるのはそもそもどのような場面か確認しましょう。

主に次のような場面です。

  • 争いがなく、話し合いのついている相続
  • 「正味の遺産総額>基礎控除額」のとき
  • 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用するとき
  • 評価の難しい財産が多いとき

遺産分割協議が穏やかにまとまったのなら、相続税申告を依頼する税理士選びに進むといいでしょう。逆に、遺産の分け方で揉めているときは、税理士ではなく弁護士に相談することになります。「争いの間に入れるのは弁護士だけ」と法律で決まっているからです。

争いがなくても、正味の遺産総額が「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」という基礎控除額を下回っているなら、相続税はゼロとなり、相続税の申告義務はありません。

正味の遺産総額が基礎控除額を超えると、相続税の申告と納税が必要です。このようなときは税理士に依頼するのが一般的です。

申告義務の例外もあります。納税額が0円になる場合でも「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」の制度を利用するのであれば、申告書の提出が必要です。

これらの制度を適用するときは、税理士の手を借りた方が無難です。また、「この2つの制度を使いたいけれど、申告期限内に遺産分割協議が完了しない」といったときも、税理士に相談した方がいいでしょう。

相続税の申告でもっとも難しいのが「財産評価」です。財産評価は、相続税法や財産評価基本通達に基づいて行います。

現金や預貯金はそのままの金額でいいのですが、他の財産はルールに則って評価計算をしなくてはなりません。特に複雑な地形の土地や非上場株式は評価方法が難しいので、税理士に依頼することになります。

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相続税の申告を税理士に依頼すると、次の5つのメリットを享受できます。

相続税の申告は大変です。評価計算には、綿密な調査と専門知識が必要です。一般の方は、相続税の申告書を見て戸惑うかもしれません。

また、たいていの人は、仕事や家事などで忙しくしています。寸暇を縫って申告書を作成しても、なかなか進みません。しかし、申告期限は、相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内です。1人で申告した結果、期限を過ぎ、延滞税などのペナルティでお金を使うおそれがあります。
税理士に依頼すれば、こういった煩わしさから解放されるのです。

「高くなりがちな相続税を少しでも安く」と誰もが節税を考えます。そして最近は、相続税の知識をインターネットや雑誌で簡単に入手できるので「節税は難しくない」と感じるかもしれません。

ただ、実際は大変です。細かい要件を確認しなくてはなりません。自宅の敷地の評価額を80%減額できる小規模宅地等の特例も慎重な判断を要します。つまり、一般の方が正しく節税するのは難しいのです。一方、税の専門家である税理士に依頼すれば、適用可能な特例や控除など適切な提案ができるため、過度な相続税負担を避けることができます。

相続税の計算は複雑です。慣れていないと、計算のどこかでミスをするかもしれません。手続きが複雑な事例ほど、税理士へ依頼することによって、申告手続きにおけるミスや漏れを防ぐことができます。

相続税申告を済ませた後に、申告漏れがないかどうかを税務署が調べる「税務調査」が入ることがあります。納税者である相続人みずからが税務調査官に対応することは心理的負担も大きいため、税理士に立ち会ってもらった方が安心です。すでに、申告手続きを依頼していた税理士であればスムーズな対応が可能です。

両親のどちらかが亡くなったときの相続を「一次相続」、その後にもう一方が亡くなったときの相続を「二次相続」といいます。目の前の一次相続の相続税を抑えることばかりに注力すると、二次相続の相続税が高額になってしまうケースがあります。税理士に相談することで、将来発生する二次相続も踏まえて、トータルで相続税を抑えられる提案をしてもらうことができるでしょう。

相続で税理士を選ぶときは、次の2つの点に注意しましょう。

税理士の初回相談は無料のところが多い一方で、有料のところもあります。有料相談は気が引けるかもしれません。しかし、有料相談の税理士は、それだけ腕に自信があり、過去の依頼者から信頼されていることが少なくないのです。

「無料相談で決めたら、あまり相談に乗ってもらえなかった」なんてこともあるかもしれません。気持ちよく依頼するなら、多少のコストを払ってでも、信頼のできる税理士を直に会って探しましょう。

納税額や支払報酬の見積もりを初回の面談で出してもらうこともあるかと思います。このとき、「この見積額で支払いは完結するか」と聞きましょう。後から申告漏れとなった資産が見つかったときに、追加で請求することがあるからです。中には節税の成功報酬を申告書の作成報酬と別に設け、後から請求する人もいるかもしれません。

次々と請求されると、経済面だけでなく精神面でも負担になります。最初に払うべき金額がどれくらいになりそうか、どの段階でどんな支払いが生じるのかを、できるだけ丁寧に確認しましょう。

Q. 相続税の申告をしないとどうなりますか?

相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内です。申告期限に遅れると「無申告加算税」、納付期限に遅れると「延滞税」の対象になります。申告ができていないと通常は納税もできないので、この2種類の追徴税が同時かかります。

Q. 相続税申告は自分でできますか?

相続人自身でやることは、もちろん可能です。ただし、家族が亡くなったあとにやるべきことが非常に多い中で、人生でそう多くない相続税申告のために専門知識を身につけて、10カ月以内で間違いなく申告するのは非常に大変です。状況によっては、お金はかかりますが、無理に自分で申告するより税理士に依頼したほうが、ストレスから解放されて時間を有効に使うことができるのではないでしょうか。

相続税申告を安心して任せられる税理士を選ぶには、相続税申告の実績などいくつかのポイントをおさえながら、インターネットでいくつかの税理士事務所の目星をつけるということが一般的だと思います。大事なことは、最終的に依頼する事務所を決める際には、ネット情報だけにたよらず、実際に税理士と直接会って話をして、信頼できそうな人か、相性の合いそうな人かを確認してからにするということです。初回無料相談などを利用して、あまりかまえずに気軽に税理士と話をしてみることをお勧めします。

(記事は2023年5月1日時点の情報に基づいています)