目次

  1. 1. 亡くなった人の確定申告「準確定申告」とは
    1. 1-1. 相続人全員で、亡くなった人の代わりに申告
    2. 1-2. 準確定申告の期限は4カ月以内
    3. 1-3. 申告先は、亡くなった人の住所の管轄税務署
    4. 1-4. 納付義務は相続人に発生
  2. 2. 準確定申告が必要な人、不要な人
    1. 2-1. 準確定申告をしなければならないケース
    2. 2-2. 準確定申告をしたほうがいいケース
    3. 2-3. 準確定申告をする必要がないケース
  3. 3. 準確定申告のやり方の手順
    1. 3-1. 相続人の代表者を決める
    2. 3-2. 必要書類を入手する
    3. 3-3. 準確定申告の書類を作成する
    4. 3-4. 申告書等を提出する(持参・郵送・電子申告〈e-Tax〉)
  4. 4. 準確定申告の注意点
    1. 4-1. 還付金があった場合は相続人で分配する
    2. 4-2. 所得控除の取り扱いについて
    3. 4-3. 手続きを税理士に依頼するときは、税務代理権限証書が必要
  5. 5. 準確定申告でよくある質問
  6. 6. まとめ|期限内に申告できるよう、早めの準備を

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準確定申告とは、亡くなった人(被相続人)の生前の所得に対する確定申告のことを指します。準確定申告の特徴について、通常の確定申告と比べながら説明していきます。

通常の確定申告では、毎年1月1日から12月31日までの1年間分の税額を計算し、翌年の2月16日から3月15日までに本人が申告・納税します。しかし、確定申告をすべき人が、年の途中で死亡した場合や、年が明けて確定申告をする前に死亡した場合、確定申告が未了の状態になってしまいます。

そのため、亡くなった人に代わって、相続人全員で準確定申告を行う必要があるため、必要書類に連署し、押印しなくてはいけません。

通常の確定申告の場合、原則として2月16日から3月15日の間に申告・納税を行います。一方、準確定申告の場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に申告・納税を終えなくてはなりません。

申告期限に遅れたり、申告せずに放置をしていると、加算税や延滞税といった追徴税が課される可能性がありますので、注意してください。

確定申告の場合、申告者本人の住民票がある住所を管轄する税務署に必要書類を提出します。一方、準確定申告では、亡くなった人の住所を管轄する税務署に提出することになります。

準確定申告によって、亡くなった人の所得税を支払う必要が生じた場合、相続人に納付義務が生じます。このとき、納める税額は各人が遺産を相続した割合に応じて負担するのが原則です。

たとえばトータルの納付額が10万円で、2人の相続人が遺産を半分ずつ相続したのであれば、所得税をそれぞれ5万円ずつ納めることになります。

このように相続人が複数いる場合、相続人ごとに納付手続きが必要になります。納付書を使って現金で納付するのであれば、相続人の人数分の納付書を用意してください。

準確定申告と確定申告の比較表
準確定申告と確定申告の比較表。両者には共通点も多いですが、対象所得の範囲、申告期限、申告義務者、申告先、保険料、医療費など所得控除の対象に違いがあります。

準確定申告は4カ月以内という短い期間で手続きを行わなければなりません。わからないことがあれば、税務のプロである税理士に相談しましょう。

相続が発生したからといって絶対に準確定申告が必要になるわけではありません。そもそも亡くなった人に申告する所得がなかった場合など、確定申告そのものが必要ないのであれば、準確定申告の手続きは不要です。

したがって、準確定申告の手続きをする前に、「亡くなった人は確定申告する必要があったのか?」という点を確認しなくてはなりません。

亡くなった人が生前、確定申告の義務があったかどうか確かめるには、まず、亡くなった人が前年分の確定申告をしていたかを確認する必要があります。たとえ給与としての収入がなかったとしても、たとえば不動産の賃貸収入を得て毎年確定申告をしていたのであれば、準確定申告を行う必要があります。

具体的には、亡くなった人が以下にあてはまれば確定申告が必要になります。

  • 事業所得や不動産所得があった場合
  • 2000万以上の収入があった場合
  • 複数の会社からの収入があった場合(ただし「従たる給与」が年20万円以下の場合は申告不要)
  • 公的年金による収入が400万以上あった場合
  • 給与、退職金以外で20万円以上の収入があった場合
  • 生前に株式や不動産などを売却し、譲渡所得にかかる納税が発生していた場合

準確定申告をする義務はないものの、還付金をもらえる場合は、申告したほうがお得です。

たとえば、医療費控除や配偶者控除、生命保険料控除といった「所得控除」により、準確定申告を行うことで還付金を得られる可能性があります。年金から源泉徴収税額が差し引かれている場合、所得控除とともに申告をすれば、源泉徴収されていた税額の一部が戻ってくることが一般的です。

このほか、特定口座で株式を運用をしていた場合は、損失の繰越控除や配当控除がありますので、準確定申告をしたほうがお得です。

【関連】準確定申告でも医療費控除は可能 対象範囲や計算方法、手続きや注意点

亡くなった人が「準確定申告をしなければならないケース」にあてはまらなかった場合、準確定申告は不要です。

亡くなった人が会社員や派遣社員などとして勤め先からの給与をもらっていたときに「準確定申告は必要?」と不安になる方もいるかもしれませんが、勤め先の給料しか収入がなく、かつ2000万円以下の給与の場合であれば、基本的に不要です。会社勤めをしているときに亡くなると、勤務先が年末調整を行ってくれるためです。

準確定申告の手続きを進める手順を解説していきます。

相続人が2人以上いる場合、準確定申告には2パターンの申告方法があります。ひとつは、各相続人が連署をして準確定申告を1つにまとめて提出する方法。もうひとつが、相続人がそれぞれで申告する方法です。

① 一つにまとめて申告する場合
準確定申告書を一つにまとめて提出する場合、相続人の中で代表者を決めなくてはいけません。相続人の代表者は、税務署から送られてくる書類の受領や、役所へ申請手続き、関係機関への問合せの対応などを行うことになります。

② 相続人がそれぞれ申告する場合
相続人の代表者を決めず、それぞれの相続人が個人で準確定申告をする場合、手続きの内容を他の相続人に通知する必要があります。相続人間で通知を確認し合うことで、申告内容が異なるといったことのないようにしましょう。

準確定申告には以下の書類が必要となります。

  • 確定申告書
  • 確定申告の付表
  • 亡くなった人の給料や年金の源泉徴収票
  • 生命保険などの控除証明書(任意)
  • 医療費の領収書(任意)
  • 委任状(特定の相続人に還付する場合)

準確定申告では通常の確定申告と同じように、亡くなった人の源泉徴収票などを提出する必要があります。また、個人事業主や不動産所得のある場合、収支内訳書(青色申告の場合は青色申告決算書)が必要になりますが、こちらも通常の確定申告で使うものと変わりません。

準確定申告のための申告書も、通常の確定申告書と同じ様式で作成します。なお2022年までは所得の種類によって「確定申告書A」と「確定申告書B」が使い分けられていましたが、2023年の確定申告から申告書の様式が統一されました。本記事ではこれらの申告書を「準確定申告書」といいます。

一方、準確定申告の場合にのみ必要となる書類があります。それが、「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表 」(準確定申告書の付表)です。

さらに、準確定申告で還付金が出る場合、還付金は原則として各人の相続分に応じて分配されますが、希望すれば還付金の受け取りを特定の1人に指定することができます。この場合、「委任状(準確定申告用)」を提出する必要があります。

これらの準確定申告に必要な書類は、税務署の窓口で入手するほか、国税庁ホームページからダウンロードすることもできます。申請書類は細かい変更点がよくあるため、ダウンロードする場合は、最新版の様式であることを確認してください。

【関連】準確定申告の必要書類は? 申告書の書き方や還付金受け取りの注意点も解説

準確定申告書を作成する際、まず気をつけたいのが、通常の確定申告書に死亡日などを付記するという点です。申告書の第1表は、以下の例のように、氏名欄に「被相続人 ○○○○」と記載するとともに、表題に「準確定」の文言を付記します。続く第2表も、表題の「確定申告書」を「準確定申告書」に修正してください。

準確定申告書の書き方(相続人等が1人の場合)
準確定申告書の書き方(相続人等が1人の場合)。相続人等が1人の場合は相続人の情報も記入します

「準確定申告書の付表」と「委任状」を提出する場合は、各相続人の氏名、住所、マイナンバーなどを記載するとともに、相続人等がそれぞれ押印する必要があります。他の相続人と連絡を取り合いながら作成することになるので、時間がかかる点に考慮して早めに作成しておくといいでしょう。

準確定申告書などを作成したら、「税務署に持参する」「税務署に郵送する」「電子申告をする」という3つの方法から選んで提出をします。

ただし、e-Taxで準確定申告を行う場合、書面提出と違い、相続人がそれぞれ手続きを行うことはできません。必ず相続人の代表者を定めて、その代表がまとめて手続きを行うことになります。

また、e-Taxで準確定申告を行う場合には、「準確定申告書」「準確定申告書の付表」のほかに、「準確定申告の確認書」という書類が追加で必要になります。これは、準確定申告の電子申告を相続人の代表者に委託する旨を記すもので、やはり相続人等がそれぞれ押印しなくてはなりません。押印したものをPDFにして、電子申告の際に添付します。

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準確定申告をする上での注意点についてご紹介します。

準確定申告で還付金が出る場合、遺言や遺産分割協議により相続分が決まっている場合はその相続分に従い、相続分が決まっていなければ「法定相続分」に従って、分配することになります。

また、ここで受け取った還付金に対して、所得税が課されることはありません。

ただし、準確定申告による還付金は故人のプラスの財産とみなされるので、相続税申告書に計上しなくてはいけません。準確定申告によって納税が生じた際も、マイナスの財産になるので、同じように相続税申告書の計上漏れに注意しましょう。

所得控除のなかには、配偶者控除や扶養控除のように特定の条件に該当すれば適用されるものと、医療費控除のように支払った金額に応じて適用されるものがあります。

① 特定の条件に該当すれば適用されるもの
特定の条件に該当すれば適用されるタイプの場合、扶養親族などの判定は、被相続人が死亡した日の状況で行います。そして、条件に合致していれば、控除額は満額適用され、月割計算などは必要ありません。

② 支払った金額に応じて適用されるもの
医療費控除や社会保険料、生命保険料、地震保険料などについては注意が必要です。被相続人が死亡する日までに支払った金額の合計額から控除額が算定されます。被相続人の死亡後に相続人が負担した医療費などは、準確定申告に含めることはできませんので、誤りのないようにしてください。

通常の確定申告と比べ、準確定申告では必要書類が増えます。また4カ月以内という短い期限で手続きを行う必要があるため、申告書の作成に不安があれば、税理士などの専門家に依頼することができます。

なお、税理士に準確定申告書の手続きを委任する場合には、税務代理権限証書を税務署に提出しなければなりません。税理士であっても税務代理権限証書がないと、代理人と扱われません。

準確定申告に関して、よくある質問にお答えします。

Q 準確定申告の期限が過ぎたらどうなりますか?

準確定申告の期限である「相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」に手続きをしなかった場合、加算税や延滞税といった追徴税が課される可能性があります。必ず期限内に申告をするようにしてください。

また、準確定申告をしないと、本来は得られるはずだった還付金がもらえないということもあります。準確定申告は、「納税額が生じる場合」はもちろん、「還付金が生じる場合」にも行っておいたほうがいいでしょう。

【関連】準確定申告をしないとどうなる? 申告が必要なケースとペナルティを解説

Q 亡くなった人が年金受給者の場合、準確定申告は必要ですか?

年金受給者の収入が公的年金だけで、年間の受給額が400万円以下であれば準確定申告は不要です。

【関連】故人が年金受給者、準確定申告は必要? 手続き方法、注意点を解説

Q 相続放棄をしたら、準確定申告はしなくていいですか?

相続放棄をした場合、初めから相続人ではなかったとみなされるため、準確定申告をする必要はありません。ただし、1人が相続放棄をしたとしても、ほかの相続人の申告義務までなくなるわけではありませんので、その点には注意が必要でしょう。

準確定申告書は4カ月以内に作成・提出する必要がありますが、申告手続きに不慣れな相続人等にとって、簡単な手続きではありません。まずは本記事でご紹介した手順などを理解していただき、不明点などがあれば、早めに税務署や税理士に相談することをおすすめします。相続税の申告と一緒に、準確定申告についても税理士に依頼するとよりスムーズに手続きをすることができるでしょう。

(記事は2023年11月1日時点の情報に基づいています)

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