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自筆証書遺言の書き方・要件を解説。「令和元年9月吉日」が無効の理由は
遺言書は主に2つあります。1つは「自筆証書遺言」、もう1つが「公正証書遺言」です。公正証書遺言は通常、遺言する人と証人2人が公証役場というところへ出向いて作成します。作成に当たっては、遺言する財産額に応じた手数料がかかります。一方、自筆証書遺言は、その名のとおり自分で書く遺言書です。いつでもどこでも書くことができて、書き直しも簡単にできます。公証役場へ行く手間がかからず、手数料も不要です。今回は自分で書く自筆証書遺言の書き方について専門家が解説します。
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1. 財産目録以外は「自筆」
自筆証書遺言は、縦書きでも横書きでもかまいません。表題に決まりはなく、紙や筆記具に関する指定もありません。ただし、形式上の要件を満たしていないと法的に有効なものとみなされません。要件の1つは、財産目録以外の部分をすべて本人が手書きすること。
パソコンで入力してプリントアウトしたものなどは無効です。書いた人自身の署名と捺印も必要です。捺印は認印でも拇印でもいいとされていますが、実印が望ましいといえます。
日付があるかどうかも大事です。日付の記載がないものや、日付の特定できないもの、例えば「令和元年9月吉日」などと書かれているものも無効です。遺言書が複数見つかった場合、最後に書かれたものが有効となるので、日付の記載が重要なのです。
書いた遺言書を修正することはできますが、別の人が偽造したり変造したりしたのではないことを明らかにするために、修正箇所に線を引いて押印し、その近くに正しい文言を書き、さらに、欄外に「○字削除△字加入 朝日太郎」のように、修正した文字数を記載します。このようにされていない修正は修正と認められません。重大な修正があるときや、修正箇所が多いときは、全部を書き直したほうがよいでしょう。
2. 裁判所で「検認」が必要
自筆証書遺言を封筒に入れる場合、封はしてもしなくてもかまいません。遺言した人が亡くなったとき、封がされていない遺言書は相続人などが開封することができますが、封がされている遺言書は勝手に開封することはできず、家庭裁判所で相続人立ち会いのうえで開封しなければなりません。
また、封のある・なしにかかわらず、自筆証書遺言は家庭裁判所に提出して「検認」を受ける必要があります。これは、遺言書が法律上の要件を満たしているかどうかを確認し、遺言書が偽造・変造されたものでないことを明らかにするためのものです。
検認を受けるには、遺言書を保管していた人あるいは遺言書を見つけた人が、遺言者が住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に検認の申立書と、遺言者の出生から亡くなるまでのすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本を提出します。その際、800円の収入印紙が必要です。
申立を受けた家庭裁判所は、申立人と相続人に検認する日(検認期日)を通知します。申立人はその日に裁判所へ行かなければなりませんが、それ以外の相続人の出席は義務ではありません。相続人全員が出席しなくても、検認手続きは行われます。
検認期日には、出席した相続人立ち会いのもとで遺言書が開封され検認を受けます。手続きが終了したら、申立人が検認済証明書を申請します。亡くなった人の預金の引き出しや不動産の名義の書き換えなどには、検認済証明書のついた遺言書が必要です。検認の申立から検認が行われるまで、通常は1カ月ほどかかります。したがって、その間は亡くなった人の財産の処分ができないことになります。
このように自筆証書遺言は、比較的手軽に書くことができますが、亡くなったあとに手続きが必要で、遺言に従って財産を分けることができるまで時間がかかるということは、知っておくとよいでしょう。
新しくできた法務局による自筆証書遺言保管制度を利用すれば、家庭裁判所による検認は必要ありません。自筆証書遺言を書く場合は、この制度を利用するとよいでしょう。
法務局の自筆証書遺言書保管制度については「自筆証書遺言書の法務局保管とは」を参照。
(記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています)
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