自筆の遺言書は、裁判所で開封し検認手続きが必要に

  • 朝日さんご家族も相続について詳しくなってきましたね。

    ソーゾク博士
  • はい。僕なんか、今じゃ職場ではちょっとした「ソーゾク博士」になっていますよ。

    長男・太郎
  • 兄さんからの情報なんてちょっと不安ね。博士、一つひとつの手続きの必要性についてはわかってきましたが、それぞれどんなタイミングでするべきかがわかりづらいです。

    長女・花子
  • 今回からはしばらく、家族が亡くなってから遺産を分けるまでの流れを説明します。まず、家族が亡くなった際、遺産分割の手続きとしてするべきことは何でしょうか。

    博士
  • はいはい、遺産分割協議ね。

    太郎
  • 太郎さん、すぐに遺産分割協議ができる人は少ないです。まずは、故人が遺言書をのこしているかどうか確かめることです。遺言書をのこしているかどうかの確認は、遺産分割協議よりも優先するべきことです。

    博士
  • 遺言を探すといっても、亡くなった親にはもう聞けませんよね。でも、親が生前に「机の引き出しに入れておくから」って言ったら、兄さんがこっそり見て、自分に都合よく書き換えてすり替えるかもしれないわ。

    花子
  • 花子の方こそ、父さんと筆跡が似ているから、できるだろう。

    太郎
  • 自宅に保管されていた自筆証書遺言を家庭裁判所外で開封したら、5万円以下の過料に処せられるおそれがあります。見つけたら、必ず裁判所で検認手続きが必要です。検認は裁判所で相続人が立ち会う中、封がされた遺言書を裁判官が開封して行います。
    また、2020年7月から法務局で保管できるようになりましたね。相続することになった後、相続人は法務局へ行くと遺言の内容を確認できます。

    博士
  • 親の生前に「遺言を法務局に預けた」と言われた相続人が内容を先に見て不満だったら、ほかの相続人に伝えないかも。そうしたら、遺言がいかされないことになっちゃう。

    花子
  • 法務局に預けられた遺言書を相続人の誰かが閲覧したら、ほかの相続人全員に遺言書が保管されていることを知らせてくれます。

    博士
  • 法務局に保管されていた遺言は、検認がいらないんですよね。

    太郎

公証役場で公正証書遺言が作成されているかを検索

  • 兄さん、詳しくなったわね。遺言書はそのほかに公証役場で作成できるものもありますよね。

    花子
  • 公正証書遺言ですね。こちらも1989年以降に作成されたものについては、公証役場の検索システムで検索することができます。

    博士
  • ずいぶん前に作成した遺言でも保管してもらえるんですか。

    太郎
  • 自筆証書遺言は遺言をした人が亡くなってから50年、遺言書のデータは150年保管されます。公正証書遺言も、遺言した人の生後120年間保存したり、半永久的に保存したりしている公証役場があるようです。
    遺言書があれば、その内容に従って遺産を分けます。ただし、遺産分割の方法を指定する遺言書があったとしても、相続人全員が合意をすれば、遺言書に従わずに遺産分割協議をして遺産を分けることもできます。次回は、遺言書がない場合の手続きについて解説しましょう。

    博士

遺言書を探す

● 2020年7月から法務局での保管サービスも
● 公正証書遺言は公証役場で検索ができる

(今回のソーゾク博士=日暮里中央法律会計事務所・弁護士三上貴規さん、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年11月1日時点での情報に基づきます)