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1. 誤った書き方によって「無効」になる可能性

「ソーゾク博士」のおかげで、相続について考えるようになった朝日青治さん(50代)はちょっと憂鬱(ゆううつ)になっています。

「自分の死後、金にめざとい子どもたちの間で相続争いが起きてしまうんじゃないか」

そうならないためにも遺言書の作成が大切になってきます。遺言書があれば、基本的にはその通りに遺産を分けることになるからです。

そんなソーゾク博士のアドバイスを思い出し、青治さんはPCを取り出し遺言書を作成に取りかかりました。

その内容はこうです。

「遣言書 私たち夫婦は、子どもたちが揉めることのないようここに遣言書を作成する。朝日青治の死後、自宅は母さんに任せる。現金と株は子どもたちで半分ずつ。秘蔵のコレクションは燃やしてください 2022年9月吉日 朝日青治 朱美」

自信満々の青治さんに対し、「ダメですね、これは。遺言書があれば相続はもめないと思っている人もいますが、ルールを守って書かないと無効になります。あいまいな内容では、逆にトラブルを生む恐れもあります」とソーゾク博士。

この遺言書の何がダメなのか、どうすればいいのか、みなさんも考えてみましょう。

2. あるあるNG 「PCで作成」「日付不明」「共同遺言」「あいまいな表現」

まず目に付くのが誤字です。遺言書の「遺」を「遣」と記しています。しかし、これは文脈から意味が通じるならセーフです。青治さん、よかったですね。

ただし、ほかにもダメなところがたくさんあります。遺言書の効力そのものを無効にしてしまうNGは次の通りです。

・パソコンで作成
遺言書の本文は手書きでなければ、効力が発生しません。「字が下手だから」「面倒だから」とパソコンを使いたい気持ちはわかりますが、ダメです。なお、預金口座や不動産といった遺産の情報を一覧にした「財産目録」の部分は、代筆やパソコンを使って作成しても問題ありません。

・押印がない
署名や押印は必須です。なお実印でなくて、拇印や指印でも有効です。ただし遺言書の効力が争われたときには実印の方が安心ですので、実印を選んだほうが無難でしょう。

・複数人の共同遺言
「私たち夫婦は」とういように、複数人の連名で遺言書を作成することはできません。遺言書はあくまで単独で作成するものです。

・日付が特定できない
「2022年9月吉日」では、日付が特定できないのでNGです。年度の書き忘れもダメです。なお遺言を作り直した場合、日付が新しい方が有効となります。

また、あいまいな表現は解釈を巡って争いが起きる可能性があるため、好ましくありません。青治さんの遺言書では次の例です。

・「自宅を母さんに任せる」
「母さん」が、文脈的に「青治の妻」を意味することは推測がつきますが、「青治の実母」との解釈も可能です。青治の実母が「遺言書の『母さん』は私のことよ」と訴え出ることができるようになってしまいます。ほかの解釈の余地を与えぬよう、「妻・朱美」とはっきりと記しましょう。「任せる」や「託す」といった表現も、「遺産を引き継がせる」以外にも、「管理を頼みたい」との解釈も可能になってしまいます。「相続させる」「遺贈する」と記しましょう。

・「現金と株は半分ずつ」
「半分ずつ」もわかりやすいようですが、明確ではありません。たとえば1千万円分の現金と、1千万円分の株があったとしましょう。「現金1千万円を長女に、株1千万円を長男に」でも、「現金500万円、株500万円をそれぞれ2人に」でも、「半分ずつ」になってしまいます。このように半分ずつに分ける方法が複数あると、その分け方を巡って争いが起きる恐れがあります。

・「秘蔵のコレクション」
青治さんが死後に燃やしてしまいたい「秘蔵のコレクション」が何なのか、家族の誰も知らないかもしれません。言葉で明示するには恥ずかしいコレクションの場合もあるかもしれませんが、自らの遺志を残したいのであれば、はっきりと書きましょう。

3. 用紙や筆記用具、ビデオレターは? 遺留分には注意を

ほかにも遺言書を作成する際にOKなのかNGなのか、迷いそうなものを紹介します。

・音声やビデオによる遺言
現在の法律において、遺言は必ず書面に残さなければなりません。従って、音声やビデオで遺言を残しても効力はありません。しかし、書面の遺言書を作成した上で、こうした方法も使って声や表情も残せば、より想いも家族に伝わり、相続争いを防ぐために有効でしょう。

・用紙の種類
紙であれば便箋のほか、レポート用紙や半紙、ルーズリーフなど何でもよいです。絵やデザインが描かれていても問題ないので、自分のお気に入りの用紙を使って下さい。サイズも特に決まりはありません。

・文字の色、筆記用具の種類
文字の色は黒に限定されていませんので、カラフルにしても大丈夫です。使用する筆記用具にも特段のルールはなく、ボールペンでも、筆でも問題ありません。鉛筆でもよいですが、改ざんや劣化の点からお勧めはできません。もちろん、時間が経つと文字が消えてしまうようなペンはダメです。

・縦書きか、横書きか
どちらでもよいです。極端に言えば、斜めに書いても、渦巻きに書いても、内容が判断さえできれば問題ありません。

・遺言する人の住所
住所は記載する必要は必ずしもありませんが、遺言した人を特定するためにも記載してもよいです。その他、年齢や生年月日、電話番号といった個人情報を記載する必要もありません。

・遺留分には注意を
また、遺言書を作成する上で、もう一つ知っておきたいことがあります。相続人には主張すれば最低限はもらえる「遺留分」と呼ばれる権利があることです。「すべての財産を長女へ」といった、他の相続人の遺留分を侵害する遺言書はトラブルにつながりますので、注意しましょう。

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遺言書があれば、基本的にその通りに遺産を分けることになり、相続争いを防ぐために有効です。ただし、遺言書にも厳密なルールがあります。青治さんのように自己判断で誤った書き方をしたために、遺言書が無効になったり、余計に争いを生んだりしたならば、元も子もありません。

死後、相続について自らの想いを確実に実現したいのであれば、遺言書の作成について弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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