妻の家を相続するには 妻の両親と養子縁組することが必要
結婚して配偶者の家の事業を継ぐために妻の家に養子に入った場合、実家の相続はできるのでしょうか。妻の実家を相続する権利も含めてソーゾク博士に聞きました。記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、鳥飼総合法律事務所弁護士・横地未央さんです。
結婚して配偶者の家の事業を継ぐために妻の家に養子に入った場合、実家の相続はできるのでしょうか。妻の実家を相続する権利も含めてソーゾク博士に聞きました。記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、鳥飼総合法律事務所弁護士・横地未央さんです。
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会社の同期が結婚して、妻の実家の旅館を継ぐために退職することになったんだ。名前も妻の姓を名乗るんだって。
お婿さんになって旅館を切り盛りすることになったのね。
婿とか婿養子とかって、何か家同士の結婚みたいで嫌だなぁ。本人は事業を引き継ぐからには規模を大きくしたいと張り切っているよ。
太郎さん、婿と婿養子とでは意味が違います。婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」という欄で「妻の氏」を選び、妻の氏を名乗ることを選んだ男性を婿と言います。一方、婿養子は、妻の両親と養子縁組をして妻の氏となった男性のことを言います。
どうして妻の両親と養子縁組をする必要があるんですか。
妻の両親と養子縁組をして婿養子になった場合、相続する際に相続人になることができます。太郎さんの同僚の方のように妻の家の事業を引き継ぐ場合、妻はもちろん、婿養子となった夫も相続できるので、事業の継承がスムーズにできる可能性があります。妻の氏を選んだだけの婿は、妻の両親の相続をする権利はありません。
妻の両親にとってみれば、我が子と、子どもの夫も相続人にして相続させることができるんですね。
その通りです。ただ、妻の両親の相続人になるには、妻の父母の両方と養子縁組する必要があります。
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遺産分割に強い弁護士を探す財産が多くて相続税が多くかかる家の場合、養子縁組をして相続人を増やせば、その分相続税を節税できるってことですか。
太郎さんが言いたいのは、養子縁組をして相続人を増やせば、相続税の基礎控除額の計算(3000万円+600万円×法定相続人の数)で控除額を多くすることができるということですよね。ただ、相続税法上、基礎控除額を計算するために法定相続人に含めることができる養子の数は、実子がいる場合には1人まで、実子がいない場合には2人までと制限があります。
養子縁組をすると、実の親との親子関係はなくなるんですか?
いえ、婿養子になった男性の場合、養子縁組をした妻の両親の相続をすることもできますし、実の親の財産を相続する権利もあります。
縁起でもない話だけれど、仮に妻と離婚した場合、妻の両親との婿養子の関係もなくなるんですか?
離婚しただけなら、妻の両親との関係は残り、相続する権利も残ります。養子縁組を解消する場合、離縁手続きをしなければなりません。
妻の実家の相続もできて、自分の家の相続権も残るのか。うらやましいなぁ。
注意点もあります。妻にきょうだいがいる場合、両親が婿養子を迎えると、自分たちの相続分が減ることになります。相続する際、もめる原因になりかねませんので、相続人になる人たちにも十分な理解を得ておくことが重要です。
・配偶者の両親と養子縁組をする
・配偶者のきょうだいの理解を得る
(今回のソーゾク博士=鳥飼総合法律事務所弁護士・横地未央さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年9月1日時点での情報に基づきます)
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