目次

  1. 1. 息子の妻は法定相続人にならない
  2. 2. 息子の妻に財産を引き継がせる方法
    1. 2-1. 遺言書を作成する
    2. 2-2. 生命保険金の受取人とする
    3. 2-3. 生前贈与する
    4. 2-4. 養子縁組する
    5. 2-5. 献身的に介護した場合には特別寄与料を請求できる
  3. 3. まとめ

【事例】
Aさん(70代男性)は、長男の家族(長男、妻、子供2人)と2世帯住宅を建てて暮らしています。Aさんは自宅不動産のほか、4000万円程度の株式と8000万円ほどの預貯金を保有しています。また、Aさんが亡くなった場合は、相続人にはAさんの長男と長女が相続人となる予定です。

Aさんは10年ほど前、長男家族と一緒に暮らすために玄関やキッチン、バス、トイレもすべて別の2世帯住宅を建てました。その2年後にAさんの妻が他界。以降、長男の妻は、Aさんの食事も作ったり、車で病院などへの送迎もしてくれたりするようになりとても助かっています。

Aさんは長男だけでなく、長男の妻にもいくらか財産を遺してやりたいと思うようになりましたが、Aさんの長女が反対し、もめる可能性もありそうです。

息子の妻にそもそも財産を相続させることはできるのでしょうか、また、できない場合でも、財産を渡すための手段としてどのような方法があるのでしょうか。

この【事例】でAさんの法定相続人となれるのは、Aさんの長男と長女です。息子の妻は法定相続人になることはできません。

なお、Aさんが亡くなるより先に長男や長女が亡くなった場合は、長男や長女の子どもたち(つまり、Aさんの孫たち)が法定相続人となります。

では、息子の妻に財産を引き継がせる方法として、どのような方法があるのでしょうか。
相続人以外の人が財産を受け取るためによく使われる方法は、主に以下の5つがあります。
また、これらの方法は複数組み合わせることも可能です。遺言書と養子縁組と生命保険、生前贈与と生命保険、生前贈与と遺言など、状況に応じて組み合わせて使うと効果的です。

遺言書の種類
相続人以外に財産を引き継がせるために、遺言書を書くという方法がよく使われます。遺言書は様々な種類がありますが、自筆証書遺言は費用も手間もそれほどかからず手軽に作成できます。

ただし、財産目録以外は、全文自筆としなければならないなど方式が厳格に定められています。方式不備で無効とならないよう十分に注意しましょう。

他には、公証役場で作成する公正証書遺言という遺言書の種類もあります。公正証書遺言は自筆証書遺言に比べて作成費用がかかりますが、無効になりにくく、検認が不要などのメリットがあります。どの種類の遺言書が良いか迷った場合は、弁護士にご相談ください。

自筆証書遺言書保管制度
自筆証書遺言の場合は、遺言書が自宅に保存される場合が多く、遺言書が発見されなかったり、紛失や改ざんされたりしてしまうおそれもあるため、法務局に遺言書を保管する自筆証書遺言書保管制度を活用するとよいでしょう。なお、自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、法務局が遺言書の形式的な確認も実施してくれます。

もっとも、仮にAさんが遺言書を用いて、長男の妻に全ての財産を相続させたいという場合であっても、Aさんの長男や長女など相続人には遺留分(相続人に法律上保障された最低限の相続財産を取得する権利)があるので、ご注意ください。

Aさんが亡くなった後にAさんの長女が遺留分を巡って長男の妻とトラブルにならないために遺言書の内容については事前に弁護士に相談しておくと安心です。

相続対策としてよく使われる方法として、生命保険を活用するという方法があります。生命保険金は、法律上は遺産とはならず、生命保険の受取人固有の財産となります。

また、生命保険金は遺産ではなく遺産分割の対象にならないので遺産の分け方でもめるという相続トラブルを防ぐことができます。

Aさんが息子の妻に財産を生前贈与するという方法もあります。ただし、相続人ではない人に対しての生前贈与は、原則として相続開始前の1年間に限り、遺留分侵害額請求の対象となります。そのため、Aさんが死亡する前の1年間に息子の妻に対し、多額の財産を生前贈与した場合は、相続人であるAさんの長女が、息子の妻に遺留分を請求する可能性があることにご注意ください。

Aさんが長男の妻と養子縁組をすることで、法律上の親子関係ができますので、長男の妻を相続人の1人とすることができます。1人に全ての財産を相続させる内容の遺言書を残しつつ、養子縁組で相続人の数を増やして、各相続人の遺留分を減らすという方法もよく用いられます。ただし、養子縁組をした相続人以外の相続人が反発して相続トラブルになるリスクがあります。

改正民法により、被相続人の親族が献身的に介護をしたなどの労務の提供をしていた場合は、特別寄与料を請求できるようになりました。

相続開始後に長男の妻が相続人へ特別寄与料を請求することができます。

もっとも、特別寄与料の額については、長男の妻は、相続人とまず協議をし、協議がまとまらない場合には、裁判所に協議に代わる処分を求める審判の申立てができます。しかし、この家庭裁判所の手続きは、相続の開始及び相続人を知った日から6カ月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、請求できなくなるのでご注意ください。

もし特別寄与料を請求したいと考える場合は、早期に弁護士に相談するのが安心でしょう。

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以上のように息子の妻に財産を相続させる方法はあります。もっとも、そのことを巡って相続人とトラブルになる可能性もあります。

弁護士などの専門家は「相続でもめてから依頼する」というイメージがありますが、生前から遺産の分け方や遺言書の書き方などを弁護士に相談することで、相続でもめやすい点などもアドバイスを受けることができます。また、事前に親族に説明しておき理解を求めることや親族が納得のいく方法・範囲で長男の嫁に財産を引き継がせるということも重要でしょう。

(記事は2021年12月1日現在の情報に基づきます)