配偶者に手厚い相続割合 相続人ごとの相続分を図でわかりやすく解説
朝日さん夫婦には結婚して子どもがいる長男、独身で会社員の長女がいます。将来、夫の一郎さんが亡くなったら相続人になるのは妻の正子さんと子どもたちの計3人です。今回は、遺産を誰がどのくらいもらえるかという質問にソーゾク博士が答えます。今回の記事を監修してくれたソーゾク博士は、税理士法人山田&パートナーズ、パートナー税理士清三津裕三さんです。
朝日さん夫婦には結婚して子どもがいる長男、独身で会社員の長女がいます。将来、夫の一郎さんが亡くなったら相続人になるのは妻の正子さんと子どもたちの計3人です。今回は、遺産を誰がどのくらいもらえるかという質問にソーゾク博士が答えます。今回の記事を監修してくれたソーゾク博士は、税理士法人山田&パートナーズ、パートナー税理士清三津裕三さんです。
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お父さんが亡くなったら、うちの場合、私と2人の子どもたちが相続人になるのよね。でも、お父さんの財産っていっても、この家とわずかな預金だけでしょ。博士、これを3人で分けろと言われても、誰にどれだけ分けたらいいのかしら。
民法が定める法定相続人には相続する順位があるだけでなく、相続人ごとに遺産を相続する割合の基準も決まっています。これを「法定相続分」といいます。朝日さんのように、配偶者と子どもで相続する場合、配偶者が2分の1、子どもが2分の1になります。子どもが複数いる場合は、2分の1の遺産をさらに子どもの人数で割ります。
じゃあ、僕は妹と2人で分けるから、2分の1をさらに半分にして4分の1になるってことか。一人っ子だったら、財産の半分が僕のものだったのになぁ。僕は子どもだっているのに、独身でお金を自由に使える妹と同じだなんて。
なに言ってるのよ。親の遺産なんて期待せず自分でしっかり働いて子育てしなさいよ。そうそう、ご近所でお子さんがいないお宅は、亡くなった夫のお母さんが健在で、奥さんは義理のお母さんと遺産を分けなきゃいけないと言ってた。その場合も半分ずつ分けるのかしら。
お子さんがいない場合は、配偶者と第2順位の父母が相続人になります。相続分は、配偶者が3分の2、親が3分の1です。両親とも健在なら、3分の1をさらに2等分したものが父母それぞれの相続分になります。父母が亡くなっている場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1です。複数いる場合は、4分の1を人数分で分けます。
わが家の場合、大きな財産はこの家と土地でしょ。母さんと僕たちで分けるなら、この家を売ってお金に換えなきゃいけないよね。
ちょっと、父さんの相続でこの家を売っちゃったら、母さんはその後、どこに住むのよ。
相続人同士で話し合って納得すれば、遺産を法定相続分の通りに分ける必要はありません。一郎さんの遺産を正子さんがすべて相続することだってできます。残された配偶者が安心して老後の生活を送るためにも、自宅だけでなくすべての遺産を相続するご家族もありますよ。ただ、それでは他の相続人に納得してもらえない場合には、配偶者は「配偶者居住権」という自宅に住み続けられる権利だけを相続し、自宅の所有権は子どもなど他の相続人が相続することもできます。
母さんの老後のために、遺産の4分の1すらもらえないのか。
正子さんの相続では、2人の子どもが法定相続人となって遺産を分けることになるので、太郎さんが2分の1を相続することになりますよ。ただし、子どもたちだけで相続する場合には、もめることも少なくありません。一郎さんだけでなく、正子さんも亡くなった後のことまで見据えておくことが、相続でもめる「争族」の予防になります。
人生100年時代でしょ。私はまだまだ長生きしますから、夫や子どもたちとじっくり話し合って、私が死んだ時にももめない相続を目指すわ。
・民法では相続人ごとに遺産を相続する割合の基準も決まっている
・配偶者と子が相続人なら、法定相続分は2分の1ずつ
・配偶者と親が相続人なら、配偶者が3分の2、親が3分の1
・配偶者と兄弟姉妹なら、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
・相続人同士で話し合えば、遺産を法定相続分の通りに分ける必要はない
さて。今回の「わが家の相続会議」はいかがでしたでしょうか?
正子さんは「夫や子どもたちと揉めないように話し合う」と言っていますが、正子さんの老後のマネープランも勘案しつつ、正子さんが亡くなった際の相続(二次相続)や不動産の扱いなどを相続税や特例・優遇制度を正確に把握した上で、なおかつ相続人全員が納得するような分け方を家族の話し合いだけで実現するのは、なかなか難しいだろうと言わざるをえません。
良かれと思って父の遺産を母に多めに相続させた結果、二次相続時の相続税が高額になってしまった、ということも相続のシーンではよくあるケースです。
遺産の分け方は家族だけで決めることだと思いこまず、相続税が心配な場合は税理士に、トラブルがないよう分けたい場合は弁護士に相談するなどして慎重に進めるのがよいでしょう。
(今回のソーゾク博士=税理士法人山田&パートナーズ、パートナー税理士清三津裕三さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2021年7月1日時点での情報に基づきます)
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