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1. 遺言書の内容がすべて?

近所に暮らすソーゾク博士と友だちになり、相続の話に興味津々の桃さん(20代)。父親の青治(せいじ)さん(50代)が将来的に亡くなったら、その遺産は母親と兄、そして自分の計3人に相続されることがわかりましたが、自分の取り分が気になっています。

「多めにもらえないかなぁ」

そんな桃さんに、ソーゾク博士は「桃ちゃんの相続分を増やしてもらえるよう、遺言書に書いてもらえばいいんですよ」と耳打ちします

よいことを聞いたと、桃さん。「相続財産をすべて桃に!」と遺言書に書いてもらえば、遺産を独り占めできるんでは?ともくろみます。

2. 遺言書でも奪えない権利「遺留分」

桃さんの動きを察知した兄の葉介(ようすけ)さん(30代)は「父は桃に甘いから、いかにもありえる話だ……」と不安になります。

そんな兄妹の様子を見ていたソーゾク博士。「お二人とも冷静に! 誤解が多いのですが、遺言書にそう書いてあっても、葉介さんも遺産をもらえる権利はありますよ」と諭します。

どういうことでしょうか?

そもそも遺産の分け方は、遺言書がない場合は、相続人同士の話し合いで決めます。一方、遺言書があれば、基本的にはその通りに分けていくことになります。

ただし、相続人には主張すれば最低限はもらえる「遺留分」があります。

仮に、父親の青治さんが「桃にすべての財産を相続させる」と記した遺言書を残して亡くなったとしても、葉介さんの遺留分まで奪うことはできません。ですので、遺言書が遺留分を侵害する内容になっていれば、争いが生じる恐れがあります。

なお、遺留分はあくまで「権利」であることは、知っておきましょう。「遺産のすべてを桃に」との遺言書に対し、葉介さんが「お好きにどうぞ」と異議を唱えなければ、問題は生じません。しかし、「それはおかしい! 遺留分の侵害だ」と最低限もらえる金額を請求することもできます。その権利を行使するかどうかは、その人次第なのです。

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3. 遺留分の最低限もらえる金額とは?

権利を主張すれば最低限もらえる遺留分とは、いくらなのでしょうか?

これは、原則として「法定相続分」の半分となります。

法定相続分とは、遺産の分け方を相続人同士で話し合ってもまとまらなかった時に、目安となる遺産の分け方です。配偶者と子どもが相続人の場合、法定相続分は「配偶者2分の1、子ども2分の1」で、子どもが複数いる場合は、2分の1を人数分で割ります。

従って、2人兄妹の葉介さんの法定相続分は「4分の1」で、遺留分はその半分の「8分の1」です。仮に遺産が4000万円だった場合、500万円が葉介さんの遺留分です。

また、亡くなった人のきょうだいには遺留分はありません。桃さんや葉介さんから見て、叔父や叔母にあたる方々です。子どもがおらず、親も亡くなっている夫婦の場合、そのきょうだいが相続権を持ちます。しかし、「すべての財産は妻(もしくは夫)に」という遺言書があれば、そのきょうだいに遺産が相続されることはありません。

遺留分を考慮しない遺言書は、争いの種になります。一方で、どうしても相続させたくない相手がいることもあるでしょう。遺留分を減らす方法もありますので、遺留分について心配なことがあれば、ソーゾク博士のような専門家に相談することを検討して下さい。

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