孫は相続人ではない 遺産の一部を遺贈させる旨を遺言に書く

  • この間、孫のランドセル選びを一緒にできて楽しかったよ。孫にはついつい財布のひもが緩むなぁ。

    父、一郎
  • 父さん、息子の僕なんかより、孫の方がよっぽどかわいいと見えるね。まぁ、ランドセルを買ってもらえるなら、僕もありがたいけど。

    長男・太郎
  • 博士、相続もいっそのこと息子を飛ばして孫にできませんかね。

    一郎
  • 孫は相続人ではないので、相続させることはできません。ただ、一郎さんが亡くなった時、すでに太郎さんが亡くなっていたら、孫が太郎さんに代わって相続する「代襲相続」の場合には相続人になります。

    ソーゾク博士
  • 何を言っているんですか。僕がちゃんと相続しますよ。

    太郎

孫と養子縁組をして相続人にする

  • ただ、シニア世代にとって孫はかわいいもの。私と同じように、孫に財産を残したいと思う人は多いはずですよ。何か方法はないですか。

    一郎
  • 一つは、遺言書に書く方法です。孫に遺産の一部を譲る旨を残します。例えば、預金の一部を孫に譲りたい場合「孫の○○にA銀行の預金を遺贈する」と書き残しておきます。あるいは、孫と養子縁組をすれば、孫を相続人にすることができます。

    博士
  • えっ、僕の子ではなく、父の子にするんですか。すると、僕と子どもは兄弟になるということですか。

    太郎
  • いえ、普通養子縁組ですから、太郎さんとの親子関係を維持したまま、祖父の一郎さんの相続人にもなれるのです。相続人が1人増えることになるので、相続税の基礎控除「3000万円+600万円×相続人の数」を計算する場合も相続人を増やせて節税効果も高いでしょう。

    博士
  • ただ、養子縁組で孫を相続人にしたら、ほかの相続人の相続分は減りますよね。太郎は自分の子どもがもらうから喜ぶだろうけれど、長女の花子は「私がもらえる分が減るだけじゃない」と怒るだろうな。

    一郎
  • その通りです。養子縁組はもちろん、遺言書で孫に財産の一部を譲る場合もほかの相続人が相続できる財産が減ることになります。生前に話しておかないと相続人同士でもめる恐れがあります。また、遺言や養子縁組で孫に財産を残した場合、孫が代襲相続人でなければ相続税は2割加算される点にも注意が必要です。

    博士
  • 遺言にしろ、養子縁組にしても手続きが大変そうですね。もう少し気軽にできるといいんだがなぁ。

    一郎
  • 孫を受取人として生命保険に加入すれば、保険金を孫に渡すことができます。この場合も、代襲相続人でなければ孫は相続人ではないので、生命保険に使える相続税の非課税枠は適用できません。 お孫さんに財産を渡したいのでしたら、生前贈与を活用してはどうでしょう。年110万円までなら贈与税がかからない暦年贈与や、1500万円まで非課税の教育資金贈与を検討するのもいいですね。

    博士
  • 亡くなった後に財産を残すことにこだわらなくてもいいですもんね。孫と一緒に過ごす時間も、もっと楽しむことにしますよ。

    一郎

■孫に財産を残すには

・遺言書に一部財産を譲る旨を書く
・養子縁組をする
・生前贈与を活用する

(今回のソーゾク博士=税理士相原仲一郎さん、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年8月1日時点での情報に基づきます)