遺言書の作成 トラブルの元になることも
自分の死後、残された家族のために遺言書を作っておこうと、重い腰をようやく上げた朝日さん一家の夫・一郎さん。でも、遺言書の作成が逆にトラブルになることもあります。ソーゾク博士に詳しく解説してもらいます。今回、記事を監修してくれるソーゾク博士は、弁護士法人アクロピース代表弁護士・佐々木一夫さんです。
自分の死後、残された家族のために遺言書を作っておこうと、重い腰をようやく上げた朝日さん一家の夫・一郎さん。でも、遺言書の作成が逆にトラブルになることもあります。ソーゾク博士に詳しく解説してもらいます。今回、記事を監修してくれるソーゾク博士は、弁護士法人アクロピース代表弁護士・佐々木一夫さんです。
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遺言書を書こうと思うんだ。母さんが残されても不自由なく暮らせるように。
「縁起でもない話だ」って後ろ向きだったのに、うれしいわね。でも、せっかく作成した遺言書が、逆にトラブルの元になることもあるですって。ね、博士。
はい。トラブルになりやすいパターンがあります。まずは、認知症になってから作成されたケース。遺言をする本人が遺言の内容を理解し、自分の死後にどのようなことが起きるかを理解することができる能力を「遺言能力」といいますが、認知症が進行している場合は、後に遺言能力が争われ、裁判所から遺言が無効と判断される可能性があります。
能力が衰える前、元気なうちに書いておくのが重要なんですね。
遺言内容があいまいでトラブルになることもあります。例えば「埼玉の倉庫は妻が相続」のような書き方だと、妻に相続させるのは倉庫の土地や建物なのか、倉庫の中身なのかはっきりしません。遺言の内容の効力が認められなかったり、登記申請が拒否されたりすることがあります。 また、遺言書を作成した日付がない、妻と連名で書いた、押印していなかったなど、法律で決まった通りの書き方をしていないと、無効と言われたり、偽造ではないかと相続人の間で争いが生じたりするリスクがあります。
遺言書は書式が厳格なのね。
遺言の内容が、相続人に保障された遺産の最低限度の取り分「遺留分」を侵害している場合も問題です。遺言によって自由に配分できる遺産は遺留分を除いた財産だけ。「財産はすべて長男の太郎に相続させる」では、ほかの相続人が遺留分侵害額請求の訴えを起こす可能性があります。遺留分に配慮することが大事です。
「すべて太郎に……」はないない。
遺言書が遺産分割後に発見されるというケースもあります。特に、遺言をする本人が直筆で作成する「自筆証書遺言」の場合には、紛失してしまったり、相続人に遺言書を見つけてもらえなかったりすることがよくあります。原則としては発見された遺言書が遺産分割協議に優先するので、既に終了した遺産分割協議は無効になり、遺産分割のやり直しが必要になります。ただ、相続人の全員が合意するなら、遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させることも可能です。
せっかく書いた遺言書はきちんと管理しないとね。
自筆証書遺言を法務局に預ける制度を使えば紛失の恐れはありませんし、公証役場で遺言書を作成・保管する「公正証書遺言」を利用すれば、書式が無効になることはまずありません。確実にトラブルを防いで有効な遺言書を作成するには、弁護士をはじめ専門家に相談するのがおすすめです。
・元気なうちに作成する
・厳格な書式に沿って作る
・遺留分に配慮する
・公の保管制度など利用する
(今回のソーゾク博士=弁護士法人アクロピース代表弁護士・佐々木一夫さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年7月1日時点での情報に基づきます)
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