配偶者居住権を上手に活用する 残された配偶者が自宅に住み続けながら安心して生活するために
近年、相続を巡る法改正が、さまざまに行われています。背景にあるのは家族や暮らしの多様化です。どのような変化があったのか、ソーゾク博士が解説してくれました。今回記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、弁護士法人アクロピースの弁護士・佐々木一夫さんです。
近年、相続を巡る法改正が、さまざまに行われています。背景にあるのは家族や暮らしの多様化です。どのような変化があったのか、ソーゾク博士が解説してくれました。今回記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、弁護士法人アクロピースの弁護士・佐々木一夫さんです。
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この前、会社の同僚から相続に関する制度が、いろいろと変わっていると聞いたよ。
高齢化が進んでいるからかしら。うちも調べないといけないかも。
一郎さんの言う通り、さまざまな変化があります。その一つが配偶者居住権という制度の新設です。
聞いただけで難しそう。どんな制度なんですか。
この制度は、確かに複雑です。たとえを使って説明しましょう。一戸建てに夫婦が住んでいるケースをイメージしてください。一人息子は、すでに家を出て別の場所で暮らしています。夫が遺言を書かずに亡くなると、母子で遺産分割をします。遺産は、自宅の価値が2千万円、預貯金が2千万円あるとしましょう。どのように分割するのが良いと思いますか。
住む家がなくなるので、母が自宅を相続するのかなぁ。
母が2千万円の値打ちのする自宅を相続すると、同じ価値の預貯金は、すべて息子のものになって、母は生活費がなくなるかもしれない。
そうですね。母の生活が立ちゆかなくなる可能性があります。そういった場合に活用できるのが配偶者居住権です。この制度を使えば、母は自宅に住み続ける居住権を取得し、息子は居住権のついた自宅の所有権を手にします。配偶者居住権には財産的価値があり、このケースで1千万円だとすると、母と息子は預貯金を1千万円ずつに分割します。
母は生活費を得ることができますね。でも、母が亡くなったら、どうなるんでしょう。
母が亡くなると、配偶者居住権そのものがなくなるので、息子は自由に自宅を処分できます。
制度を活用するには、どうすればいいのでしょう。
主な方法は二つ。(1)被相続人が、配偶者居住権を設定する旨を遺言書に書いておく(2)遺産分割協議を経て取得する――です。ただ、細かい利用条件もありますし、所有権が子どもにあるので、母は勝手に家を処分できないなど、注意も必要です。
複雑だから、活用したほうがいいのかどうかの判断が難しい。
その通りだと思います。相続で活用できる制度はたくさんあります。しかし、何が最適なのかは人によって異なります。迷ったら、まずは、弁護士など専門家への相談をお勧めします。
・配偶者は居住権を取得して自宅に住み続けられ、生活資金の預金なども確保可能
・必要性は専門家に相談を
(今回のソーゾク博士=弁護士法人アクロピース弁護士・佐々木一夫さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年2月1日時点での情報に基づきます)
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