財産を直接ペットに引き継がせることはできない

  • きのう公園でフレンチブルドッグをつれたおばあさんに会ったよ。「一人暮らしで自分に何かあったら、犬が心配」って言ってた。

    長男、太郎
  • ペットは大切な家族だけど、犬に飼い主の財産を相続させることはできないのだろうか。

    父、一郎
  • 残念ながら日本の法律では、財産を相続させられるのは人または法人のみです。ペットは「物」とみなされていて、財産を直接引き継がせることはできないのです。

    ソーゾク博士
  • 何かペットのためにできることはありませんか。

    母・正子
  • 「負担付遺贈」や「負担付死因贈与」という方法があります。「財産を贈る代わりにペットの世話をしてください」というものです。

    博士
  • それぞれどんなものですか?

    一郎
  • 負担付遺贈は、生前に遺言書で新しい飼い主を指定しておくとともに、その飼い主に依頼したいことや渡す財産の内容を書いておくという方法です。ただ、注意点もあります。遺贈は一方的に遺言をするだけなので、遺贈される側が遺産の受け取りやペットの飼育を拒否する可能性もあります。

    博士

より確実な方法は「負担付死因贈与」

  • 困るな。負担付死因贈与は?

    一郎
  • 生前に、贈る側と受け取る側で交わす契約書の中に、依頼したいことや、渡す財産の内容を盛り込む方法です。生前に契約という形で受け取る側の了解を得ておけるので、一方的に行う負担付遺贈よりも確実性が高い方法といえます。ペットの世話を本当にしてもらえるか心配な場合はこちらをお勧めします。このほか、ペットの飼育費用分のお金を「信託」のしくみでまかなう選択肢もあります。

    博士
  • 自分が死んでしまったら、その後ペットがきちんとした環境で飼育されているか確認はできないよね。確実にペットの世話をしてもらうために心がけておくことはなんだろう。

    太郎
  • 負担付遺贈には遺言執行者を、負担付死因贈与には遺言執行者にあたる死因贈与執行者を指定しておくとよいでしょう。ペットの世話が放棄されているような場合には執行者から世話をするように請求でき、家庭裁判所に遺贈の取り消しも請求できます。
     また、自分に万が一のことがあっても、ペットの飼育の引き継ぎがすぐにできるような状態にしておく必要があります。ペットとは相性もあります。世話をお願いしたい人とペットとの時間を意識的に設けておきましょう。

    博士

ペットの世話を託すには

・ペットの世話の代わりに財産を遺贈する「負担付遺贈」
・世話を条件に財産の贈与契約をする「負担付死因贈与」
・民事信託制度も利用できる

(今回のソーゾク博士=川崎相続遺言法律事務所弁護士・勝本広太さん、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年1月1日時点での情報に基づきます)