目次

  1. 1. 前妻の子に一切相続さないことはできない
  2. 2. 遺留分に相当する額を生命保険などでカバーする
  3. 3. まとめ 法律は杓子定規 遺言書や生命保険の活用を

「相続会議」の弁護士検索サービス

「前妻との間に子どもがいるが、もう何十年も会っていない。今の財産は現在の妻と力を合わせて築きあげてきたものだ。前妻と離婚した当時の財産ではないし、子どもには養育費をずっと払ってきたんだから、それで十分なはずである」

このように、再婚した男性から、前妻との間の子に財産を遺さずにすむ方法を聞かれることがあります。実の子といっても何十年も会っていないと財産を分けるのは惜しい相手となってしまうのでしょうか……。

私個人としては、別れた相手との子どもとはいえ、実の子に財産をあげたくないというのは、ちょっと不思議な気がします。そして実際、法律上でも実の子に財産を遺さないというのは、そう簡単にできることではありません。妻とは婚姻関係を解消(離婚)すれば赤の他人となりますが、子どもとの縁は切っても切れないのです。

仮に「今の妻にすべて相続させる」という遺言書を残しても、実の子には遺留分があります。子どもが遺留分を主張すれば、それには応じざるをえません。遺留分が問題になるのは、遺言書を遺したご本人が亡くなった後です。自分の亡きあと愛する今の家族が、前妻の子と財産を巡って争うなんてちょっとかわいそうではありませんか。

こうした死後の争いを避けるためにも、私は、遺留分相当を前妻のお子さんに相続させるという内容の遺言書を書いておくことをおススメしています。

「いや、多少争うことになっても、全部今の妻とその子に相続させるんだ!」ということであ
れば、遺留分を主張されることを覚悟して、「すべてを今の家族に」という内容の遺言書にした上で、念のため遺留分相当額を生命保険などで用意しておいていただくことなどをアドバイスすることもあります。

似たようなケースで「妻が離婚に応じてくれないので、今のパートナーと法律上の婚姻ができない」というご相談もあります。

法律は杓子定規です。どんなに愛し合っていても、入籍していないパートナーに相続権はありません。一方、どんなに憎み合っていたとしても、入籍している配偶者には相続権が認められています。

弁護士さんの力を借りるなど、何らかの法的手段をとれば、妻との婚姻関係を解消することができるかもしれませんが、それができない場合も、やはり遺言書や生命保険などで今のパートナーに少しでも多くの財産を残す対策をしておきましょう。

(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています)

「相続会議」の弁護士検索サービス