目次

  1. 1. 再婚した相手の連れ子に相続権はない
  2. 2. 事実婚や同姓婚のカップルが相続するために

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相談に訪れたのは、女子大学生のKさんです。Kさんは「父が亡くなったのですが、私には父の財産を相続する権利がないと言われました」というのです。

「そんなことがあるんだろうか」と戸籍を確認してみると、Kさんと亡くなったお父さんの間には血のつながりがありませんでした。

Kさんが1歳の頃、お母さんが子連れで再婚していたのです。つまり、Kさんはお父さんにとっては再婚した相手の「連れ子」であり、法律上の親子ではなかったのです。お母さんはすでに亡くなっています。

Kさんも自分が母の連れ子であるという事実は、両親から聞いて知っていましたが、父と20年以上親子として暮らしてきたので、血のつながりがないから相続する権利はないなどということは考えたことはなかったといいます。

確かに、法律上の親子関係がない連れ子に相続権はありません。連れ子を相続人にしたい場合は、養子縁組をする必要があるのです。

K さんのお父さんの財産は、法律上の相続人であるお父さんの姉(Kさんにとっての伯母)に相続されることになってしまいました。

ただ、お父さんのお姉さんは、Kさんを不憫に思い、相続した財産のほとんどを譲ってくれるといいます。

しかし、相続権のない人(Kさん)が、遺言書等のない状態で、相続する形で財産をもらうことはできません。ですから、この場合は、一度お父さんのお姉さんが相続で財産を取得し、その財産をKさんに贈与するという形になります。その結果、多額の贈与税の対象になってしまう可能性があります。

Kさんのお父さんが「連れ子には相続権がない」ということを知っていれば、打つ手はあったのです。養子縁組ももちろんですが、遺言書で「自分の財産はすべて Kに遺贈する」と残しておくことです。

そうすれば、兄弟姉妹には遺留分がありませんから、相続財産は最初から Kさんのものとなり、高額な贈与税を負担する必要もありませんでした。いや、せめて受取人をKさんにした生命保険にだけでも入っていてくれれば……。悔やまれる一件でした。

同じようなケースで、「事実婚」の相続があります。最近、結婚しても夫の姓にならずない「事実婚」のカップルが増えています。また、同性婚のカップルなどはそもそも法律上の「婚姻」をすることができず、「事実婚」とならざるをえません。この「事実婚」のカップルも杓子定規な相続の制度では、パートナーは相続人として認められません。

双方ともにそれなりの収入がある場合は、パートナーの財産をあてにする必要はないかもしれません。実際「相手の財産は、向こうの家族がもらえばいい」と割り切っている方もいるでしょう。

しかし、これが「自宅」の相続がからむとそうも言っていられません。お互いに資金を出し合って自宅を購入したような場合、どちらかが亡くなると、亡くなった方の持ち分が法律上の相続人(第二順位であれば両親、第三順位であれば兄弟姉妹)のものとなってしまうからです。

相手の方との関係が良好であれば問題にならないかもしれませんが、家族との関係が微妙な場合には、もめごとにつながりかねません。

このように、法律に守ってもらえない事実婚の方たちこそ、自分の身は自分で守らなくてはなりません。私の知り合いのカップルも、お互いに財産を遺贈させるという遺言書を書き合って対策をしています。

また、同性婚のカップルの間では、法律上の婚姻に代えて、パートナーをご自分の養子に迎えている方もいらっしゃいます。そうしておけば、法律上の第一順位の相続人となるわけですから、確実に財産を渡すことができるというわけです。

ただし、縁起でもないと言われそうですが、万が一、カップルが別れてしまった場合、法律上の夫婦であれば法律が関係を切り離してくれます。つまり、離婚した元の配偶者が亡くなっても相続権はありません。また、遺言書は、新しい遺言書を作ることで、対応ができるでしょう。しかし、養子縁組をした後に万が一別れた場合は、今度は養子縁組を解除する手続きをしなくてはなりませんが、これは結構やっかいです。なので、養子縁組をする場合には、細心の注意を払っていただいたほうがいいでしょう。

事実婚や同性婚のカップルが相続について相談する場合は、弁護士などを頼るということも検討していただければと思います。

(記事は2021年9月1日現在の情報に基づきます)

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