遺贈寄付が大きな柱の一つ

目が見えない、見えにくい人にとって大切なパートナーとなる盲導犬。その育成を手がけているのが公益財団法人日本盲導犬協会(横浜市港北区)です。財源の約95%を寄付でまかなっています。遺贈寄付はその大きな柱の一つで、このところ毎年、年間予算の3割前後を占めるほどです。多い年には実に4割を超える年もありました。

遺贈寄付の性質上、毎年の額は変動が大きいため、日本盲導犬協会では5年ごとに区切ってトレンドを分析しています。それをみると、遺贈寄付への関心の高まり、実際の増え方は顕著です。協会によると、2001〜05年度の遺贈(相続財産からの寄付を除く)は年平均額1億1千万円、年平均5.6件の遺贈がありました。同様に06〜10年度は1億3400万円で6.4件、11〜15年度は3億9500万円で14.5件、16〜20年度は5億5700万円で24.4件でした。急拡大しているのがわかります。

東京事務所渉外部リーダーの横江湧真さんは、盲導犬を知ってもらうイベントや街頭募金といった年間1500回ほどの普及活動、店舗レジに置いた犬型募金箱など、地道な寄付の呼びかけで活動が知られるようになったことが大きいと言います。また、相続人がいないケースが増えているという社会的背景もあると指摘します。

「犬が好き」といった縁で寄付する人も

盲導犬を必要としている人は日本に約3000人いますが、協会の現状では年間30〜50頭の育成が限界です。盲導犬1頭を育てるには時間がかかります。誕生した子犬を育て上げる訓練士の養成も必要で、一人前になるには5年以上かかるそうです。

盲導犬の“現役期間”は約8年で、引退した盲導犬がいわば余生を送る施設も大切です。そんな長期的な事業展開が求められることから、遺贈寄付も個人名を冠にして何かを創るというのではなく、基金に入れて計画的に使う形をとっています。目が見えない、見えにくい人たちに無償で盲導犬を貸与できるのも、こうした基金があるからこそだといいます。

引退した盲導犬(日本盲導犬協会提供)
引退した盲導犬(日本盲導犬協会提供)

事前に相談があった場合、できるだけ訓練センターなどを実際に見てもらうようにしていると横江さんは言います。納得し、信頼してもらうことが大切だと考えるからです。ただ、最近は「遺言書に書かれていた」と、遺言執行者から突然連絡を受けるケースが多いそうで、「犬が好き」「視覚障がい者が身近にいる」といった縁で協会に寄付する人が多いようだと分析しています。

横江さんは、ある女性からの遺贈が印象深かったと言います。女性は自身も犬を飼い、つらい時期に犬によって心が癒され、助けられたそうです。お子さんもいましたが、人生最後に残ったお金の一部を社会に恩返しする形で使いたいと考えていました。実際に訓練センターなどを視察するなかで、女性は引退した盲導犬が暮らす施設に感動しました。「犬の一生に責任持つことは大切」と共感し、遺贈を決めたそうです。

遺贈寄付先を考える際、自分の生活に関係した対象を候補にすると、選びやすいのではないでしょうか。

(記事は2021年5月1日時点の情報に基づいています)