遺贈寄付先として人気が高い団体の一つが大学です。青春を過ごし、その後の人生の基盤となった大学に、遺贈や相続財産を寄付して、まさに次世代育成に活かしてもらうのです。大学側も積極的に受け入れを始めています。

年々増える寄付件数

このうち、早稲田大学は、大学への遺贈寄付を勧める専用パンフレットを2015年に作成しました。「久遠の理想を未来に託す。」と表紙にうたい、遺贈事例の紹介のほか、遺贈と相続財産寄付との違い、手続きの流れや遺言作成に関する案内などを10ページにわたり解説しています。同時に、寄付専用のHPの中でも遺贈寄付に関して、意義や手続きを説明しています。早大卒業生の弁護士らによる遺言などに関する動画も公開しています。

早大募金・社会連携企画担当課長の平野真さんは、次のように説明します。「年々、相談件数も実際の寄付件数も増えています。はっきりわかっているだけでも、100件ほどの遺贈と相続財産寄付がこれまでにありました。特にコロナ禍になってから問い合わせが多くなっていると感じます。具体的に『今後』のことを考えて大学への寄付を検討される方が多くなったのでしょうか」

早大は遺贈寄付の相談を受ければ、提携している金融機関や法律事務所を紹介するほか、場合によっては家事援助や見守りなど生活支援活動をしているNPO法人も紹介するなど、手厚くフォローしているようです。寄付額に応じて名誉称号を贈呈したり、寄付者の名前を冠した奨学金を創設したり、顕彰にも力を入れています。昨年度は約1億円の遺贈・相続財産寄付があったといいます。

平野さんは「学生時代は人生の中で貴重な時間です。一生の友人ができたり、自身を形成したり。寄付される方は、恩返しとして、若い人のために使ってほしいという思いが強いと感じます。大学への寄付は、実際に研究や教育によって世界を変える可能性もある、まさに次世代につながるものだと考えています」と話しています。

地元地銀と連携する大学も

もちろん、早大以外の大学も遺贈寄付の受け入れには力を入れ始めています。広島や新潟、茨城、高知、沖縄など、地銀が地元の大学と遺贈に関して提携する動きはここ数年、各地で広がっています。多くの大学のHPには遺贈寄付の案内が掲載されています。明治大学のHPでは、やはり母校への遺贈寄付の実例を紹介しながら、選択肢の一つとしての検討を呼びかけています。試しに、ご自身の母校のHPをご覧になってみてはいかがでしょう?

わたしが所属する立教大学も同様です。昨年は年に1度の「同窓会(ホームカミングデー)」会場で遺贈寄付に関するセミナーを初開催し、卒業生の司法書士らによる相談コーナーを設けました。専用のHPの立ち上げやパンフレット作成も予定しています。

「自分の生きた証を残したいという方が増えているだけに、遺贈寄付の受け入れは寄付の中でも重点活動の柱の一つです」と立教学院常任理事・杉山順一さんは言います。そのうえで、相続財産寄付の象徴的な例としてキャンパス内にある「太刀川記念館」という建物を挙げます。ソニー創設のメンバーである太刀川正三郎氏の遺族からの寄付で1990年にできた施設です。「これほど多額の寄付をすることは誰にでもできることではありませんが、学生のためにという思いは額によらず、どの寄付にも共通しています。その思いにきちんと応えられる大学でありたいとあらためて思います」と杉山さんは語ります。

次世代を育てる一助に

大学への遺贈や相続財産寄付した財産は、いずれも原則として相続税は非課税です(相続財産寄付の場合、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内に税務署へ申告する必要があります)。大学では、使い道に関しての相談にも乗ってくれることが多いようです。研究や教育ばかりでなく、部活動やキャンパスの環境整備など、活かし方は多彩です。母校を通じて次世代を育てる一助になる。検討してみてはいかがでしょう。

次回は遺贈寄付をテーマにしたアンケートの結果を取り上げます。

(記事は2020年9月1日現在の情報に基づきます)