「世界の命を救うお金の使い方」

日本にも「国境なき医師団日本(MSF日本)」(東京都新宿区)があり、2019年の1年間にシリアなど34の国と地域に延べ124回の派遣をしました。その活動を支える年間の財源のうち、MSF日本に寄せられた約113億円の96%が民間からの寄付金です。遺産からの寄付については、2012年に約1億4千万円だったものが、いまは年に約10億円を超える規模にまで増えています。件数でみれば2019年は129件。件数では遺贈が3分の1、相続財産からの寄付が3分の2ですが、金額では8対2ほどになるといいます。

ファンドレイジング部シニア・オフィサーの荻野一信さんは2014年から遺贈寄付に携わってきました。「多くの方が遺贈寄付に興味をもたれるようになってきました。終活の一環としてご本人が問い合せされるケースが増え、遺産の行方の選択肢の一つになったと感じます」と荻野さん。

活動を紹介して遺贈寄付を案内するガイドブックの表紙には「世界の命を救うお金の使い方」とあります。活動の性質上、遺贈寄付でも特定の国や地域など使い道の指定はできませんが、逆に言えば、間違いなく最もニーズがあるところに使われて「命」を救うといえるでしょう。

毎月開かれる理事会では、遺贈寄付をした故人の名前を読み上げて冥福を祈り、感謝の意を表しているそうです。人が亡くなることが伴うお金だけに、荻野さんはその重さをきちんと受け止め、寄せられた信頼に応える必要を痛感するといいます。「民間企業で働いていたころは、売り上げが伸びれば嬉しいと感じました。でも、いまの仕事に就いてからは遺贈寄付額が増えたからといって単に嬉しいという感情ではなく、深い感謝の念を感じています」

遺贈の意思を示してくれた人には生前に直接、会うことも多いといいます。戦争体験を聞いたり、悩みに触れたり。様々な思い出があるそうです。ある60代の女性には病床で会い、活動などについてお話ししたところ、涙を流して喜んでくれました。そのわずか10日後に亡くなったそうです。そんな出会いと別れを受け止めています。

「認知度向上」のための意識調査

MSF日本では、日本の遺贈寄付全体の「認知度向上」をはかりたいと、意識調査をこれまでに4回実施して公表しています。参考までに2018年、20代から70代までの1200人を対象にした最新の調査結果を紹介します。

遺贈の認知度は40代から上昇をはじめ、70代では85.5%に達しました。遺贈の意向は年代によって大差はなく、約5割に遺贈の意向がありました。遺贈に前向きな人(616人)に、遺贈をする団体を選ぶ際にどのような条件を重視するかを聞いたところ、「営利目的でない(NPO法人など)」(47.4%)や「資金の使い道が明確(透明性がある)」(41.4%)が目立ち、「活動内容に共感できる」(39.8%)や「公益性が公に認められている」(32.6%)、「活動内容が目に見える(インターネット上などで公開されている)」(31.2%)が続きました。ご自身で団体を選ぶ際の条件として参考になさってはいかがでしょう。

また、遺贈に前向きな人に、遺贈について不安に感じることを聞くと、「遺贈の方法(どのような手続きが必要か不安、など)」が 50.2%で最も多く、次いで、「寄付する団体選び(詐欺にあわないか不安、など)」が 47.6%、「寄付した遺産の使い道(どのようなことに役立てるかわからず不安、など)」が 37.3%となりました。

こうした不安を払しょくしてくれる団体を選ぶことが、遺贈寄付をするさいには特に大切なのだと思います。

(記事は2021年1月1日時点の情報に基づいています)