遺贈寄付に使える四つの信託 活用法は人さまざま
遺贈寄付を実現させる方法は、さまざまです。今回の記事では、検討している人に向け、信託を活用した四つの形をお伝えします。中には、遺言代用信託など、使い勝手がよいものもあります。
遺贈寄付を実現させる方法は、さまざまです。今回の記事では、検討している人に向け、信託を活用した四つの形をお伝えします。中には、遺言代用信託など、使い勝手がよいものもあります。
前回は、信託の基本的な仕組みと「遺言信託」について説明しました。今回は、遺贈寄付に関係する主な4つの信託の商品についてです。
まずは、前回、名称だけ紹介した「遺言代用信託」からです。
仕組みはこうです。まず、委託者が生きている間は自分を受益者とし、受託者(今回は、信託銀行としておきましょう)から定額を支払ってもらいます。子どもや配偶者らを「第2受益者」に指定しておけば、死亡後に信託銀行がまとめてお金を渡したり、一定額のお金を定期的に支払ったりする形にできます。
一般社団法人信託協会のまとめでは、2019年9月末までの遺言代用信託の新規受託件数は累計で約17万5千件。同協会が集計を始めた09年度は、わずか13件でしたから、急速に取り扱いが増えていることがわかります。その理由は、使い勝手がよいからです。
遺贈寄付の観点でいえば、第2受益者としてNPO法人などを指定すれば、遺言書を作成しなくてもお金を贈ることができます。ただ、第2受益者を法定相続人などに限定している場合もあり、すべての信託銀行が対応しているわけではありません。
しかし、次回に紹介する、自治体への遺贈寄付に遺言代用信託を活用した仕組みがつくられるなど、今後の活用が期待されています。
いま注目されているのが、生命保険を活用した「生命保険信託」です。
死亡時の生命保険金の受取人を誰にしていますか?
結婚していれば配偶者や子どもという方が多いでしょう。ですが、結婚しない人が増え、少子化も進んでいます。今後は、受取人の配偶者や親が先に亡くなり、ほかに受取人にする家族がいないケースが増えていくと考えられます。
そんな時、解約するのではなく、公益法人などを受取人にできれば、遺贈寄付という選択肢が生まれます。しかし、受取人を3親等以内の親族に限るなど、法人を受取人にできない生命保険会社がほとんどです。
それでも、生命保険信託の提携先の信託銀行なら受取人に指定できるという生命保険会社も出てきました。そこで、保険契約者は信託銀行と信託契約を結び、受取人を信託銀行にすることで、保険金を公益法人などに贈ってもらう仕組みが可能になっているのです。
さらに19年9月には、三井住友海上プライマリー生命保険が「社会貢献特約」という仕組みを導入し、注目されています。
同社が指定する公益団体を、直接、受取人にすることができるのです。いまは日本赤十字社と日本ユニセフ協会が対象団体です。こうした仕組みが広がれば、生命保険での遺贈寄付は格段にしやすくなると期待されます。
次に、「特定寄附信託」。まさに寄付のための信託です。
委託者は現金を信託銀行に信託します。同時に、委託者は信託銀行が契約した公益法人や認定NPO法人など(銀行によって対象は異なります)の中から、自分が気に入った団体を選びます。
信託した財産からその団体に毎年(5年から最長10年までの期間)、寄付されるのが特定寄附信託です。信託期間の途中で委託者が死亡した場合、残った財産は団体に寄付されます。
最後に紹介するのは「公益信託」です。
自分で公益財団などをつくり、社会活動をしている団体を応援するために助成金を贈りたい。でも、運営のためのノウハウや人手がない――。そんな場合に活用できるのが公益信託です。
特定の団体ではなく、福祉や環境、教育など貢献したい分野を決め、信託銀行に財産を託します。信託銀行は定められた目的に従って、その財産を管理・運用し、助成先を選定して、お金を渡してくれます。委託者は、自分の名前を基金の冠にして、名前を残すこともできます。
手間なくオーダーメイドの基金がつくれるわけですから、いいことずくめ。とはいえ、現状では事実上、億単位のお金が必要など、ハードルが高いのも事実です。将来、使い勝手がよくなれば、公益信託を設定する動きは広がるに違いありません。
次回は、信託を活用した新しい遺贈寄付の動きを紹介します。
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(記事は2020年6月1日現在の情報に基づきます)