まず大切なのは、人生を振り返ることです。

自分はどんな人たちにお世話になってきたのか。
何を大切な価値として生きてきたのか。

それが、遺贈先を選ぶ基本になります。遺族が相続財産から寄付する場合も同じです。故人がどんな人生を歩み、何を大切にしてきたのかを考えるのです。

最初は思いつくままに箇条書きしてみましょう。

ボランティア活動を続けてきた。
子どもの笑顔を見るのが何よりも嬉しかった。
地域の人や介護者のおかげで充実した暮らしができた。
母校での学びや交友が生涯の支えだった。
動物が大好きで、生きがいでもあった−−。

相談窓口で考えを整理

何を願い、遺産を使って何をかなえてほしいと望んでいるのか。だんだん、はっきりしてくると思います。1人では難しいと感じたら、相談窓口を訪ね、話をしながら考えを整理する方法もあります。

代表的な相談窓口は「全国レガシーギフト協会」です。遺贈寄付に関する相談や信頼できる団体に関する情報提供ができるようにしたいと、弁護士や税理士、NPO法人などが集まって2016年に設立しました。レガシー(legacy)とは「遺産、遺贈財産」の意味です。現在、日本財団の「遺贈寄付サポートセンター」など全国に16カ所の相談窓口を有します。

全国レガシーギフト協会のホームページ
全国レガシーギフト協会のホームページ

また、「寄付と遺贈の相談窓口」を19年12月に開設した横浜市社会福祉協議会のように、遺贈寄付に力を入れる社会福祉協議会もあります。
子どもの健全育成やまちづくり、国際協力、文化・芸術、災害支援、環境保全など、寄付したい分野がおおよそ固まったら、寄付を生かしてほしい対象地域を考えます。海外、日本全国、都道府県、市町村などです。

次に、支援したい団体の規模を選びます。自治体など公共団体がいいのか、有名な団体がいいのか、小さいところを応援したいのか。寄付金控除の適用が受けられる公益法人や認定NPO法人がいいのか、こだわりはないのか。

信頼できる団体か確認

具体的な団体が絞れてきたら、資料請求や疑問点について問い合わせます。遺贈寄付をしたいと明かす必要はありません。まず、信頼できる団体かどうかを見極めます。

お勧めの方法は、1000円単位でいいので試しに寄付してみることです。どんな対応をするかを確認します。お礼状が素早く届くでしょうか。寄付金の使い道はきちんと説明されているでしょうか。そのうえで、気になった団体には、できれば直接訪ねてください。応対はどうか、事務所の雰囲気はどうかを五感で確かめるのです。

大切な相続財産だからこそ

私がこれまでに取材した人の中には、月に1度、ボランティアとして団体に通い様子をみて、「信頼できる」と判断したうえで、相続財産から寄付した人もいらっしゃいました。大切な思いを込めたお金ですから、それぐらい慎重な姿勢でもよいと思います。

自身での絞り込みが難しければ、寄付先の選定から使い道まで任せる方法もあります。NPOを支援する中間支援組織やコミュニティ財団などに託すのです。全国レガシーギフト協会に参加しているような団体です。
ある程度まとまった財産もあるし、いっそ自分で思うような支援の仕組みをつくりたい。そんな場合には、財団法人設立や公益信託の活用などもあります。

遺贈寄付で「物語を紡ぐ」

いずれにせよ、大切にしてきた価値観や思いこそが基本です。その価値観と遺贈寄付によって引き継がれる思いを、私は「物語を紡ぐ」と表現しています。私たちは誰もが無意識のうちに、自身の価値観で、日々、物事を判断し、行動しています。価値観をことさらに意識するのは、人生で大きな選択をする時でしょう。価値観を言葉にし、行動に意味づけをする。それが物語です。

人生最後の社会貢献である遺贈寄付の寄付先を選ぶ。それは大きな選択です。だから、物語を紡ぐのです。美しく、納得できる物語を一緒に紡いでくれる、信頼できる団体を選ぶことはとても大切です。

次回は、包括遺贈と特定遺贈についてです。

(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)