「縁ある長野で遺産を活かしたい」という相談が増えている

いま、都市部への人口集中で子どもが東京などに出ているため、親の遺産もまた都市部で相続される「一極集中」状態が生じています。生まれ育った場所や親の出身地など、自身に関係する「地域」にお金を活かせるのも遺贈寄付の特徴の一つです。いわば遺産の「地産地消」ができるのです。

地域の人たちから寄付などで寄せられたお金を、地域で活動するさまざまな団体や個人に付与することで地域の課題を解決し、より良い地域をつくっていく。そんな、地域でのお金の循環を支える活動の一つにコミュニティ財団があります。北海道や京都、兵庫、佐賀など各地で活動が展開しています。長野県の公益財団法人「長野みらい基金」もその一つです。

「私たちは地域の目利きでありたいと思っています。地域でどんな活動をしている団体があって、どんなことに困っているのか。それを一番よく知る存在です」と話すのは、財団で活動資金を集めるファンドレイジングを担当する高橋潤さんです。遺贈などで寄付されるお金を寄付者の希望に一番沿う形で活かすためには、さまざまな地域活動の内容を知っているだけでなく、その活動を行っている団体が本当に信頼できるかなども見極める必要があります。さらに、前提として財団そのものが人々から信頼されて寄付を託される必要があるので、二重に責任を感じると言います。

長野県でも相続財産の約25%が、相続時に東京など県外に出ています。遺贈寄付という方法があることが徐々に知られるようになって、「縁ある長野で遺産を活かしたい」という相談が増えているそうです。

たとえば、東京都内の男性から相続時に相談がありました。亡くなった母親が長野県内の市の出身だったことから、母親が市内に持っていた土地を地域で活かしてもらえないかという内容でした。財団は市とも協議のうえ、市に土地を寄付してもらうことにしました。保育園に隣接する土地で、ちょうど園が駐車場スペースに困っていたこともあり、いまはその場所を有効活用しています。

希望に沿った活かし方を地域の中で探す

県内でフリースクールをしているNPO法人に土地と家屋の寄付を仲介したこともありました。所有者の高齢夫婦が遺贈の相談を財団にした際、みなし譲渡課税の問題があるため、一度財団に寄付してもらい、無償に近い形でNPOに貸し出す方法を考えました。結局は、みなし譲渡課税が発生しない状態であることがわかり、直接NPOに寄付してもらうことになったそうです。そうした臨機応変の対応と提案も財団ならではかもしれません。

助成金を活かして活動しているフリースクール(長野みらい基金提供)
助成金を活かして活動しているフリースクール(長野みらい基金提供)

また、長野市の一人暮らしの女性からは遺言書作成の相談がありました。女性は視覚障がいがあり、当初は全国的な活動をする視覚障がい関連団体への寄付を考えていたそうです。相談のなかで県内にもさまざまな活動があることを知り、最終的には財団に遺産を託す内容の公正証書遺言を作成しました。女性が亡くなった場合、財団が基金をつくって県内の団体向けに助成の公募をする予定です。

「団体の活動の先にいる対象者の姿や喜びの声を聞くことがやりがいです」と高橋さんは言います。遺贈寄付者にも同じように感じてほしいので、事前に相談を受ければ使い道を一緒に考え、一番喜びの声が想像できるような提案を心がけています。

いま財団が運用している寄付を呼びかけるサイト「長野県みらいベース」には約300団体が登録しています。福祉、まちづくり、中山間農漁業支援、文化・芸術、観光振興など活動分野は多岐にわたります。たとえ規模は小さくても、人々が日々を過ごす場所だからこそ地域を良くしたいという思いあふれる活動がたくさんあるのです。

2013年に財団が活動を始めて以来、20年度までに374件、総計で約6500万円の助成をしてきました。こうした情報も遺贈寄付先を選ぶ参考になるはずです。関心のある地域でコミュニティ財団があれば、一度、相談してみてはいかがでしょう。

(記事は2021年4月1日時点の情報に基づいています)